荒地に配属された食いしん坊聖女。いつの間にかラスボス認定されていたようです。

ゆずこしょう

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食いしん坊聖女は聖女達のために最高の武器を作る。

久しぶりのごはん♪

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「…ふぅ~ん、そんなに私、眠っていたんだ。」


ケルネリウスが何があったか説明すると、アンネリーゼはそこまで興味がないのか、適当に流した。


「お前…ずっと眠っていて危ない状態だったんだぞ!? わかっているのか!?」


「まぁまぁ! そんなに怒らないでよ。無事だったんだから、いいじゃない!!」


アンネリーゼがケルネリウスの肩を軽くぽんぽんと叩くと、彼はこれ以上伝えても無駄だと思ったのか、深くため息を吐いた。


「……はぁ。まったく、お前ってやつは……」


「あっ! それよりも、遅くなっちゃったけど、せっかくだし皆で作ったお弁当食べよ! 私、おなかすいちゃったぁ~!」


眠り続けて約二週間――


夢の中ではいろいろな魔物と出会い、おなかいっぱい食べていたが、所詮それは夢の中。


実際にお腹が満たされているわけではない。


「“業務用冷蔵庫”」


久しぶりのその言葉に、その場にいた皆が安堵の息を漏らした。


アンネリーゼが無事に帰ってきたということに――


業務用冷蔵庫を開けると、アンネリーゼは迷うことなくお弁当を取り出す。


その顔はまるで、お腹を空かせて待ちきれない犬のようで――


聖女たちは思わず笑ってしまった。


「アンナ、落ち着いて! まだ蓋も開けてないよ!」


「だって、夢の中じゃいっぱい食べたのに……現実は空っぽなんだもん!」


アンネリーゼが蓋を開けると、色とりどりのおかずがぎっしり詰まっていた。


卵焼き、ロックバードの唐揚げ、タコのから揚げ、カニクリームコロッケにミートボール。


ずっとずっと夢に見ていた、ローストビーフのサンドイッチ。


そして――栗の甘露煮。


無我夢中で作っていたから覚えていなかったけれど、たくさんの食材が入っている。


「……モンブラン・マウンテン……」


栗の甘露煮を見ながらアンネリーゼがぽつりと呟くと、聖女たちはまた笑った。


「ふふっ、モンブラン・マウンテンって何よ!?」


「「「ハハハハ!!」」」


満月の光が柔らかく差し込む中、敷かれた布の上には、色とりどりのお弁当が並べられていく。


まだルミナイト・オリハルコンを手に入れたわけではないが、それでも――


今日一日だけは、アンネリーゼの目が覚めた祝宴を上げてもいいだろう。


「よーし!! じゃんじゃん食べてぇぇぇぇ!! 明日のために、活力たっぷりつけるわよ~!」


それぞれ祈りを捧げると、目の前にあるお弁当に手を伸ばした。


「この卵焼き、美味しいわね~!」


「このロックバードの唐揚げも……前に食べた時も美味しかったけど、さらに味が染みていて最高!」


「こっちのカニクリームコロッケもよ! サクサクなのに、中は濃厚なクリームが入ってて、蟹の身もずっしり!」


皆が幸せそうな顔でご飯を食べる姿を見て、アンネリーゼも自然と笑顔になる。


「ふふ。やっぱり、皆で食べるごはんが一番ね……」


その声は誰かに聞こえることもなく、風にのって静かに消えていった。



***


「じゃ、満腹になったところで――明日からのことを話すわよ!」


アンネリーゼが聖女たちを集め、明日からの行動について語り始める。


「いい? 明日、もう一度ブレーティオ鉱山に向かうわ! もちろん、今回もあなたたちについてきてもらうわよ!」


「「「……えっ!?」」」


アンネリーゼの言葉に、聖女たちだけでなくケルネリウスも驚きの声を上げた。


「いや……この間のこと、覚えてるだろ? 聖女たちを連れて行くのは危ないんじゃ……」


ケルネリウスの言葉に、周囲の誰もが頷く。


するとアンネリーゼは腰に手を当て、「チッチッチ」と人差し指を立てて揺らした。


「あなたたち……本当に気づいていないのね」


「私たち……?」


アンネリーゼの言葉を聞いて、ミレイユがぽつりと呟く。


他の聖女たちも、同じように首を傾けた。


「えぇ、そうよ! 今回、あなたたちは“スキル”を得たの。ただ、一人で発動するのは無理ね。そもそも、あなたたちのスキルは“六人そろってこそ”力を発揮するものだから……」


「「「「えっ!?」」」」


一瞬、静寂が落ちた。


だが次の瞬間――


「えっ!? 私たちがスキルを……!? 今までそんな素振りなかったのに!」


「えぇぇぇ~うそ!? スキル? アンナみたいに戦えるの!? すごい楽しみなんだけど……ずっとアンナみたいに魔物を討伐したいと思ってたのよ!」


「私も私も~! あの爽快感、見てるとたまらないわよね! で……?」


「「「どんなスキルなの!?」」」


目を輝かせながら近づいてくる聖女たちに、思わずアンネリーゼもたじろいだ。


「えっ……とぉ……」


「うんうん!!」


「そんなに喜んでくれてるところ悪いけど……あなたたちのスキルは……戦闘系じゃないわよ?っていうか、私も戦闘系というわけではないし……」


そう、聖女たちがもらえるのは、あくまでも浄化や祈りのスキルの強化版だ。


そもそも、戦闘系のスキルをもらえること自体、ほとんどない。


アンネリーゼのスキルだって、「調理器具」「業務用冷蔵庫」という変わったものだが、元を正せば浄化のスキル。


……まあ、業務用冷蔵庫に至っては、何の意味があるのかは未だにわからないが。


その言葉を聞いた瞬間――


先ほどまでのキラキラした目は、あっという間に光を失った。


まるで絶望に落とされたような顔をする聖女たちをみてアンネリーゼは元気づけるように明るい声で言い放った。



「と、言っても……あなたたちのスキルはかなり強いと思うわ! バフをかけることができるんだもの!!」





……


………



「「「「バフ!?」」」」


「そうよ! 今回みたいに、魔物の精神攻撃から仲間を守ったり、防御力を上げたりすることができるわ。それに、少しだけだけど……癒しの力もついているんじゃないかしら」


アンネリーゼはそう言いながら、少しだけ肩をすくめた。


「……と、言っても、私も実際にあなたたちの力を見たことがないから、どのくらいのスキルがあるかはわからないけど……」


アンネリーゼの言葉に、また沈黙が訪れた。


しかし、先ほどとは違い、少しうれしそうな雰囲気が漂っている。


「……ってことは、私たち、アンナの助けになれるってこと!?」


「……もう、私たち、お荷物じゃない!?」


「「「やったぁぁぁ~!!」」」


それぞれが手を取り合って喜んでいると、ケルネリウスがゴホンとわざとらしく咳をした。


「あぁ~、喜んでるところ悪いが……どれだけ力が使えるか、まだわかっていないんだ。明日は慎重に行動しろよ? もちろん、アンナ……お前もだからな」


そう言いながら、ケルネリウスはアンネリーゼの頬を軽くつねった。


「いったぁ~! 何よもう、ちゃんとするってば!」


「お前が“ちゃんとする”って言った時ほど、信用できない言葉はないんだよ……」


「ひどっ!? でもまぁ、今回は本当に大丈夫よ。みんながいるし、スキルもあるし!」


ケルネリウスは深くため息を吐いたが、その目はどこか優しかった。


「……頼むぞ。お前たちが無事に帰ってくることが、何より大事なんだからな」


聖女たちはその言葉に、少しだけ表情を引き締めた。


「うん、わかってる。明日は、私たちの力を試す日だもんね!」


「“メメント・ムーン”の初陣、だね!」


満月の夜、笑いと決意が混ざり合いながら、彼女たちは明日へ向けて、静かに心を整えていった。
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