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食いしん坊聖女とアグニ・フォルジュ
丸焼きになるのはどっちが先か勝負しましょう!
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「おい、お前……本当に我と戦う気か?」
アンネリーゼは、マグマの泉の前まで来ると、背中からお鍋の蓋を下ろした。
そして、あることに気づく。
「……お鍋の蓋より、中華鍋の方が良かったかもしれないわね」
お鍋の蓋は軽いという理由で選んだものだったが、以前対峙したとき、一瞬で溶けてしまったことを思い出していた。
(いくら鍋の蓋を大きくしたところで……耐久度は変わらないわよね)
「スキル調理器具」
聞こえるか聞こえないかくらいの声でボソリと呟くと、先ほどまであった鍋の蓋は消え、代わりに鉄製の中華鍋が出現した。
「ふふふ……中華鍋に中華包丁。組み合わせもバッチリね!これなら今夜は……酢豚かしら?」
まだイグナ・ヴァルスの本体を倒したわけでもないのに、すでに“料理の完成”を想像しているアンネリーゼ。
それを見ていたイグナ・ヴァルスは、首を横に振りながら大きな溜め息を吐いた。
「お前が“大聖女”だということは……百歩譲って認めてやろう。だがな……我の本体を倒すのは、無理があるぞ!?」
短い腕を頑張って組みながら、偉そうに語るイグナ・ヴァルス。
だが、アンネリーゼはまるで眼中にないのか、話を聞く素振りすら見せない。
何を言っても返事が返ってこないことに痺れを切らしたイグナ・ヴァルスは――
アンネリーゼの耳に、がぶりと噛み付こうと大きく口を開けた。
その瞬間。
「ぐぇっ……!」
先ほどと同じように、アンネリーゼは迷いなく首をガシッと掴んだ。
「さっきからちょろちょろとうるさいわね……なんで付いてきたのよ」
まるで虫でも払うような手つきで、イグナ・ヴァルスを持ち上げるアンネリーゼ。
その表情は、戦闘前というよりも――
スーパーの割引シールを前に、
「あと10秒で半額になるのよ」と言わんばかりの集中力とさっきを放っている主婦によく似ていた。
「う、うるさいぞぉ!我は食べ物ではないといっておろうが…。」
ぶら下がったままジタバタと暴れるイグナ・ヴァルス。
だが、アンネリーゼはその声すら聞こえていないかのように、静かに中華鍋を構えた。
その瞬間――
マグマの泉が、轟音とともに爆ぜた。
マグマが壁にぶつかり、"ジューッ"と音を立てる。
"オ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ーーー!!!"
地鳴りとともに、赤黒い蒸気が吹き上がり、その中から、巨大な影がゆっくりと姿を現す。
「……来たわね、トカゲちゃん!!」
現れたのは――
鮮やかな赤に黒が混じった鱗を纏い、腹部にはルミナイト・オリハルコンの核を埋め込んだ、イグナ・ヴァルス本体だった。
"オ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ーーー!!!"
アンネリーゼの言葉に応えるように、咆哮を上げると、赤黒く染まった瞳でぎろりと睨みつける。
そして、巨大な羽根を大きく広げ――
マグマの奔流を、一直線にアンネリーゼへと放った。
「んふふっ、火加減は強めね!」
アンネリーゼは中華鍋をくるりと回し、鉄の底をマグマに向けて突き出す。
“ジュウウウウウウウッ!!”
鍋の底にマグマがぶつかった瞬間、爆音とともに蒸気が吹き上がった。
だが、アンネリーゼは一歩も引かない。
むしろ、蒸気の中で笑みを浮かべながら言い放つ。
「いいわね! ここからは、どちらが先に丸焼きになるか……勝負しましょう? トカゲちゃん!」
鍋を軽く横に避けると、今度は一本の中華包丁を取り出す。
"オ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ーーー!!!"
アンネリーゼの勝負という言葉の意味を理解しているのか、返事をするかのように咆哮を上げた。
二人の間に、張り詰めた空気が流れる。
どちらが先に動くか――
互いに見極めようとした、その刹那。
“コロン”
ルミナイト・オリハルコンの欠片が、床に転がり落ちた。
その音が、引き金だった。
イグナ・ヴァルスが大きく息を吸い込み――
吐き出すと同時に、炎の渦が地を這うように立ち上がる。
「んふふ…初めから本気じゃない!いいわねぇ~さすが今日のメインディッシュよぉぉぉ!」
そう言って、アンネリーゼは中華鍋をもう一度自分の前に構えた。
炎を真正面から受け止め――そして、すんでのところで身を翻し、その炎の奔流を華麗にかわす。
と、同時にイグナ・ヴァルスの吐いた炎に、わざと中華包丁を突き出した。
“ゴウッ!”
火に触れた中華包丁は、刃全体が炎を纏い、赤く、妖しく光を放っている。
「いい焼き色になってきたわね……!」
イグナ・ヴァルスの攻撃が収まるや否や、アンネリーゼは地を蹴って一気に間合いを詰めた。
その間も、イグナ・ヴァルスは手や羽根を振り回し、彼女を叩き落とそうとする。
だが――
「当たるわけないじゃない!! そんな大ぶりの攻撃がっ……と!」
中華包丁を斧のように大きく横に振り抜くと鋭い一閃が、イグナ・ヴァルスの片足を裂いた。
“オ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ーーー!!!”
切り裂かれた足から、灼熱の血が噴き出し、イグナ・ヴァルスは痛みと怒りに満ちた咆哮を上げた。
「うん!いいじゃない…あなたが動いてくれれば動いてくれるほどうまみ成分がたーっぷり出るのよ?だからもっと暴れて頂戴。」
アンネリーゼは、剣士が敵に剣先を向けるように――
包丁の先端を、まっすぐイグナ・ヴァルスへと突きつけた。
その姿は、もはや聖女でも料理人でもない。
まるで、戦場に立つ剣士そのものだった。
「ここからは、私のターンね♪」
そう言うや否や――
アンネリーゼは目にもとまらぬスピードで、イグナ・ヴァルスの足元を駆け抜け始めた。
「オ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ーーー!!」
イグナ・ヴァルスは必死に彼女を捕まえようと、手を振り、羽根を打ち下ろす。
だが――
そのすべては空振り。
アンネリーゼは、炎の中を舞うように足元を駆け抜けると、
包丁を逆手に持ち、イグナ・ヴァルスの手から肩へと駆け上がった。
そして、肩に到達した瞬間――
イグナ・ヴァルスが大きく空気を吸い込んだ。しかしタイミングを合わせてアンネリーゼが勢いよく中華鍋を頬にぶつけた。
“ゴーン、ゴーン!”
ブレス攻撃がキャンセルされるとは思っていなかったのか、
イグナ・ヴァルスは頬にため込んだ息を――ごくりと飲み込んだ。
「あら……トカゲちゃん、お腹いっぱいなのかしら?」
そう言うや否や、アンネリーゼは鍋を振りかぶり、空気で膨らんだ腹部めがけて、全力で叩き込んだ。
“ドカーーン!!”
鍋で叩き込まれたイグナ・ヴァルスの腹部が膨張し、内部の熱と圧力が逆流する。
炎が漏れ、鱗が軋み、イグナ・ヴァルスの身体が大きく仰け反った。
その隙を逃さず、アンネリーゼは包丁を両手で握り――
ルミナイト・オリハルコンの核めがけて、中華包丁を振り上げる。
“ピキピキピキ”
少しずつ、核にヒビが入り始めると同時にアンネリーゼは高く跳躍。
最後の一撃とばかりに、ヒビ割れた箇所めがけて、もう一度包丁を振り下ろした。
“パリィィィーン…”
ガラスが割れるような音とともに、ルミナイト・オリハルコンは美しく砕け散った。
割れた核からは、キラキラと金色の光の粒が立ち込めていく。
「オ”ォ”ーーー!!!」
イグナ・ヴァルスの咆哮が、悲鳴に変わった。
そして――
その巨体は、ゆっくりと崩れ落ちた。
「フフ……今回の勝負は、どうやら私の勝ちのようね」
アンネリーゼは大きな中華包丁を地面に突き刺し、柄の部分に寄りかかった。
砕けたルミナイト・オリハルコンから溢れた金の粒子が、静かに、アンネリーゼの周囲に集まり始める。
その神秘的な光景に、イグナ・ヴァルスの分身体も言葉を失った。
アンネリーゼは、金の粒子たちを安心させるように微笑む。
「安心なさい。あなたたちの魂は――私がおいしくいただくわ」
その姿を見て、イグナ・ヴァルスは初めて思った。
――この者こそが、“大聖女”なのだと。
(しかし……最後の言葉は、一体何だったんだ……)
アンネリーゼは、マグマの泉の前まで来ると、背中からお鍋の蓋を下ろした。
そして、あることに気づく。
「……お鍋の蓋より、中華鍋の方が良かったかもしれないわね」
お鍋の蓋は軽いという理由で選んだものだったが、以前対峙したとき、一瞬で溶けてしまったことを思い出していた。
(いくら鍋の蓋を大きくしたところで……耐久度は変わらないわよね)
「スキル調理器具」
聞こえるか聞こえないかくらいの声でボソリと呟くと、先ほどまであった鍋の蓋は消え、代わりに鉄製の中華鍋が出現した。
「ふふふ……中華鍋に中華包丁。組み合わせもバッチリね!これなら今夜は……酢豚かしら?」
まだイグナ・ヴァルスの本体を倒したわけでもないのに、すでに“料理の完成”を想像しているアンネリーゼ。
それを見ていたイグナ・ヴァルスは、首を横に振りながら大きな溜め息を吐いた。
「お前が“大聖女”だということは……百歩譲って認めてやろう。だがな……我の本体を倒すのは、無理があるぞ!?」
短い腕を頑張って組みながら、偉そうに語るイグナ・ヴァルス。
だが、アンネリーゼはまるで眼中にないのか、話を聞く素振りすら見せない。
何を言っても返事が返ってこないことに痺れを切らしたイグナ・ヴァルスは――
アンネリーゼの耳に、がぶりと噛み付こうと大きく口を開けた。
その瞬間。
「ぐぇっ……!」
先ほどと同じように、アンネリーゼは迷いなく首をガシッと掴んだ。
「さっきからちょろちょろとうるさいわね……なんで付いてきたのよ」
まるで虫でも払うような手つきで、イグナ・ヴァルスを持ち上げるアンネリーゼ。
その表情は、戦闘前というよりも――
スーパーの割引シールを前に、
「あと10秒で半額になるのよ」と言わんばかりの集中力とさっきを放っている主婦によく似ていた。
「う、うるさいぞぉ!我は食べ物ではないといっておろうが…。」
ぶら下がったままジタバタと暴れるイグナ・ヴァルス。
だが、アンネリーゼはその声すら聞こえていないかのように、静かに中華鍋を構えた。
その瞬間――
マグマの泉が、轟音とともに爆ぜた。
マグマが壁にぶつかり、"ジューッ"と音を立てる。
"オ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ーーー!!!"
地鳴りとともに、赤黒い蒸気が吹き上がり、その中から、巨大な影がゆっくりと姿を現す。
「……来たわね、トカゲちゃん!!」
現れたのは――
鮮やかな赤に黒が混じった鱗を纏い、腹部にはルミナイト・オリハルコンの核を埋め込んだ、イグナ・ヴァルス本体だった。
"オ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ーーー!!!"
アンネリーゼの言葉に応えるように、咆哮を上げると、赤黒く染まった瞳でぎろりと睨みつける。
そして、巨大な羽根を大きく広げ――
マグマの奔流を、一直線にアンネリーゼへと放った。
「んふふっ、火加減は強めね!」
アンネリーゼは中華鍋をくるりと回し、鉄の底をマグマに向けて突き出す。
“ジュウウウウウウウッ!!”
鍋の底にマグマがぶつかった瞬間、爆音とともに蒸気が吹き上がった。
だが、アンネリーゼは一歩も引かない。
むしろ、蒸気の中で笑みを浮かべながら言い放つ。
「いいわね! ここからは、どちらが先に丸焼きになるか……勝負しましょう? トカゲちゃん!」
鍋を軽く横に避けると、今度は一本の中華包丁を取り出す。
"オ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ーーー!!!"
アンネリーゼの勝負という言葉の意味を理解しているのか、返事をするかのように咆哮を上げた。
二人の間に、張り詰めた空気が流れる。
どちらが先に動くか――
互いに見極めようとした、その刹那。
“コロン”
ルミナイト・オリハルコンの欠片が、床に転がり落ちた。
その音が、引き金だった。
イグナ・ヴァルスが大きく息を吸い込み――
吐き出すと同時に、炎の渦が地を這うように立ち上がる。
「んふふ…初めから本気じゃない!いいわねぇ~さすが今日のメインディッシュよぉぉぉ!」
そう言って、アンネリーゼは中華鍋をもう一度自分の前に構えた。
炎を真正面から受け止め――そして、すんでのところで身を翻し、その炎の奔流を華麗にかわす。
と、同時にイグナ・ヴァルスの吐いた炎に、わざと中華包丁を突き出した。
“ゴウッ!”
火に触れた中華包丁は、刃全体が炎を纏い、赤く、妖しく光を放っている。
「いい焼き色になってきたわね……!」
イグナ・ヴァルスの攻撃が収まるや否や、アンネリーゼは地を蹴って一気に間合いを詰めた。
その間も、イグナ・ヴァルスは手や羽根を振り回し、彼女を叩き落とそうとする。
だが――
「当たるわけないじゃない!! そんな大ぶりの攻撃がっ……と!」
中華包丁を斧のように大きく横に振り抜くと鋭い一閃が、イグナ・ヴァルスの片足を裂いた。
“オ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ーーー!!!”
切り裂かれた足から、灼熱の血が噴き出し、イグナ・ヴァルスは痛みと怒りに満ちた咆哮を上げた。
「うん!いいじゃない…あなたが動いてくれれば動いてくれるほどうまみ成分がたーっぷり出るのよ?だからもっと暴れて頂戴。」
アンネリーゼは、剣士が敵に剣先を向けるように――
包丁の先端を、まっすぐイグナ・ヴァルスへと突きつけた。
その姿は、もはや聖女でも料理人でもない。
まるで、戦場に立つ剣士そのものだった。
「ここからは、私のターンね♪」
そう言うや否や――
アンネリーゼは目にもとまらぬスピードで、イグナ・ヴァルスの足元を駆け抜け始めた。
「オ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ォ”ーーー!!」
イグナ・ヴァルスは必死に彼女を捕まえようと、手を振り、羽根を打ち下ろす。
だが――
そのすべては空振り。
アンネリーゼは、炎の中を舞うように足元を駆け抜けると、
包丁を逆手に持ち、イグナ・ヴァルスの手から肩へと駆け上がった。
そして、肩に到達した瞬間――
イグナ・ヴァルスが大きく空気を吸い込んだ。しかしタイミングを合わせてアンネリーゼが勢いよく中華鍋を頬にぶつけた。
“ゴーン、ゴーン!”
ブレス攻撃がキャンセルされるとは思っていなかったのか、
イグナ・ヴァルスは頬にため込んだ息を――ごくりと飲み込んだ。
「あら……トカゲちゃん、お腹いっぱいなのかしら?」
そう言うや否や、アンネリーゼは鍋を振りかぶり、空気で膨らんだ腹部めがけて、全力で叩き込んだ。
“ドカーーン!!”
鍋で叩き込まれたイグナ・ヴァルスの腹部が膨張し、内部の熱と圧力が逆流する。
炎が漏れ、鱗が軋み、イグナ・ヴァルスの身体が大きく仰け反った。
その隙を逃さず、アンネリーゼは包丁を両手で握り――
ルミナイト・オリハルコンの核めがけて、中華包丁を振り上げる。
“ピキピキピキ”
少しずつ、核にヒビが入り始めると同時にアンネリーゼは高く跳躍。
最後の一撃とばかりに、ヒビ割れた箇所めがけて、もう一度包丁を振り下ろした。
“パリィィィーン…”
ガラスが割れるような音とともに、ルミナイト・オリハルコンは美しく砕け散った。
割れた核からは、キラキラと金色の光の粒が立ち込めていく。
「オ”ォ”ーーー!!!」
イグナ・ヴァルスの咆哮が、悲鳴に変わった。
そして――
その巨体は、ゆっくりと崩れ落ちた。
「フフ……今回の勝負は、どうやら私の勝ちのようね」
アンネリーゼは大きな中華包丁を地面に突き刺し、柄の部分に寄りかかった。
砕けたルミナイト・オリハルコンから溢れた金の粒子が、静かに、アンネリーゼの周囲に集まり始める。
その神秘的な光景に、イグナ・ヴァルスの分身体も言葉を失った。
アンネリーゼは、金の粒子たちを安心させるように微笑む。
「安心なさい。あなたたちの魂は――私がおいしくいただくわ」
その姿を見て、イグナ・ヴァルスは初めて思った。
――この者こそが、“大聖女”なのだと。
(しかし……最後の言葉は、一体何だったんだ……)
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