荒地に配属された食いしん坊聖女。いつの間にかラスボス認定されていたようです。

ゆずこしょう

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食いしん坊聖女は、お酒探しの旅に出る。

お酒のためなら努力は惜しみません。

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「よし、じゃあ始めようか。まずは何から手をつける?」


皆を代表してケルネリウスが前に出れば、アンネリーゼは一瞬考え――そして、にっこりと笑った。


「まずはこの地を調べることから始めましょう!ケルネリウスは土壌を調べてくれる?キャスバルは“幻のお酒の泉”を見に行ってほしい。それから、エリザベッタは私と一緒にこの辺りの果樹を調べましょう。メメント・ムーンとメメント・ソレイユには別のことをお願いするわ!」


それぞれに指示を出すと、皆はすぐに動き始めた。


「了解。土壌の状態を調べるには、少し深く掘る必要があるな。腐敗の根がどこまで広がっているか、見てみよう。
久しぶりに土壌研究ができるとは……フフ、しかも腐敗した地なんて……腕が鳴る」


「ふむ。面白そうだな……我も一緒に行こう」


「いや、ついてこなくていい」


「そんな冷たいことは言わないでくれ!! 我も一緒に行くぞぉぉぉ!!」


ケルネリウスは腰の道具袋を確認しながら、意気揚々とシルクトレーテから降りる。そして、なぜかラケルもケルネリウスと一緒にバッカースの地へとついていった。


それに続くように、キャスバルも動き出す。


「幻のお酒の泉ね……本当にあるのかどうか、確かめてくるが……一体どこにあるのか、目星はついているのか?」

バック―スの地もかなりの広さがある。しかも幻のお酒といわれているくらいだ。

泉を探すのは難易度がかなり高いだろう。

アンネリーゼもこの地に来たのは初めて…もともとこの地に来たら人海戦術で探す気満々だったのだ。

少し悩んでいると、シルクトレーテが声を発した。


「ふむ……泉の場所は変わっていないだろう。どれ、儂の分身体を連れていくとよい」


そう言うと、祠の横から小さな海亀が顔を出す。


「うぉっ!?」


思わぬ出来事に、キャスバルだけでなく、この場にいた皆が驚いた。


海亀はゆっくりとキャスバルの肩に登ると、シルクトレーテより少し高い声で話し出した。


「さぁ、出発しよう!!」


「あ、あぁ……じゃあ行くか」


驚いていたキャスバルだったが、すぐに気持ちを切り替えて森の奥へと足を向けた。


一方、メメント・ムーンとメメント・ソレイユの面々は、アンネリーゼの方を向いて首を傾げる。


「私たちには何を?」とディアナが尋ねると、アンネリーゼは少しだけ声を落として答えた。


「あなた達には、シルクトレーテと一緒に新しい曲を覚えてほしいの。もちろんダンスも考えて頂戴。ただ……それが効くかはわからないから、高望みはできないんだけどね」


そう言ってアンネリーゼが渡したのは、一枚の紙。


そこには歌詞が書かれていた。


「メメント・ソレイユの六人には……剣舞をできるようになってもらうわ!メメント・ムーンの曲に合わせて剣舞をできるようにしておいて。内容は任せるから。そうね……ソレイユのリーダーはリック。あなたに任せるわ!」


「え……!? 俺……ですか?」


まさか自分が指名されると思っていなかったのか、リックは驚いた。


「えぇ。あなたが今まで神官たちを束ねていたことは知っているから。ぴったりだと思うのよ。それにほら……」


周りを見るように言えば、皆が頷いているのが見える。


「皆が認めてるんだから、頑張って!」


「わ、わかりました」


リックとの話が終わると、待っていたかのようにエリザベッタが話し出した。


「じゃあ、私たちは果樹を見に行きましょうか。腐ってるのか、それともまだ生きてるのか……見極めるのは得意よ。行きましょ、アンナ!!」


エリザベッタはアンネリーゼの手を取ると、一緒に歩き出す。


残った面々に手を振れば、笑顔で振り返してくれる。


その顔は以前とは違い、アンネリーゼの信頼に報いようとする静かな決意がにじんでいた。


アンネリーゼはその背中に温かさを感じながら、エリザベッタと並んで歩く。


「ふふ、なんだか不思議ね。いつも私が手を引っ張っている方だったから、変な感じがするわ!」


「たまには引っ張られる側も悪くないでしょ?それに、あなたが全部背負う必要なんてないんだから。こういう時は一緒に前に進めばいいのよ!別に急ぐ必要なんてないんだから。 これからも頼りなさい?」


エリザベッタの言葉に、アンネリーゼは小さく笑った。


(そうね……皆がいる。だから、絶対大丈夫! あと二ヶ月あるんだもの!)


二人の足音が、腐敗した果樹園へと向かっていく。


その先に待つのは、枯れた枝か、まだ息づく命か――


それを確かめるために、彼女たちは歩き出した。



***


「ふむ……この異臭はすごいな」


ケルネリウスがシルクトレーテから降り、土壌の確認を始める。


いくつかのサンプルを採取しながら、腐敗の広がりを見極めようとしていた。


その傍らで、ラケルがパタパタと小さな羽根を動かしながら、手で鼻を塞いでいた。


「お前、なんで俺についてきたんだよ」


「い、いいだろう……暇だったんだよ」


ケルネリウスはちらりとラケルを見て、ふっと息を吐いた。


(あぁ……誰も相手にしてくれなくて、寂しかったんだな)


「まぁ、別に構わないが。これからどんどん匂いがひどくなる可能性が高いからな。ついてきたことを後悔するなよ?」


そう言うと、自分の口と鼻にハンカチを巻き付けた。


ここはまだ、果樹の都・バッカースの入り口。


今はまだ風が吹いているおかげで匂いが分散しているが、


中に入っていけば――腐敗の臭気は、さらに濃くなるだろう。


「うっ…やっぱ帰るか…?」

シルクトレーテの方を一度振り返ると、げんなりした顔でそのままついてきた。


(結局ついてくるのか…)


そう思いながらも、ケルネリウスは無理に帰らせようとはしなかった。


むしろ、少しだけ歩調を緩めて――


シルクトレーテが追いつきやすいようにしていた。


「だったら…黙ってついてこい。これをもってな。」


そういってラケル用に作られたスコップとバケツを渡されたラケルは一瞬目をパチクリさせる。


「…これって…?もしかして俺に…?」


「勘違いするなよ。ついてくるなら手伝ってもらうって言っているんだ。」


少し頼られたのがうれしかったのか、ラケルはフッと笑う。


「……ふん、まぁ、使ってやるよ。暇だしな」


そう言いながら、バケツを脇に抱え、スコップを肩に担ぐ。


ケルネリウスはその様子をちらりと見て、何も言わずにバックースの中へと足を踏み入れた。


風が吹き抜ける腐敗の地で、二人の足音だけが、静かに響いていた。

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