64 / 127
第二章・少女剣士たちとの出会い
別府屋武士団、壊滅
しおりを挟む「はははははっ! もうゴールかよ。こりゃ、本当に楽な仕事だな!!」
(……ちっ、騒がしい奴だ。だが、異世界から呼び寄せられた英雄の肩書は伊達ではないようだな)
――それから程なくして、洞窟の奥。
そこでは、抜け道を使って易々と先行した栞桜を抜き去り、村人たちが待つ場所へと突き進んでいる別府屋武士団の姿があった。
斑は、大声で叫びながら突き進む順平の不用心さに呆れながらも、自分たちの中で誰よりも早く駆けて行く彼の身体能力、及び気力の素質に舌を巻く。
こんな軽薄そうな男に負けているというのは悔しいが、これが幕府が頼りにする英雄の力という奴なのだろう。
少なくとも今は、幕府の手で気力を強化された自分たちと同等以上の力を持つ順平に従っていた方が後々のためになりそうだ。
「竹元殿、そろそろ合流地点に到着する頃です。我々は作業に入りますので、竹元殿は少しお休みになっていてくだされ」
「とっとと終わらせろよ? こんな洞窟の中じゃ、暇を潰す方法も限られてるんだからな!」
好き勝手言いやがって、と思いながらもその感情を表情には出さず、斑は無言で頷いた。
今は順平に従っているが、金太郎が知略を用いて自分たちが英雄たちの立場を上手く手に入れた暁には、彼にこの屈辱を倍返しにしてやると心の中で誓いながら、斑は仲間たちと共に抜け道を突き進む。
「兄者、間もなく合流地点だ」
「うむ、わかっている」
弟の蝮と短いやり取りを行い、正面の角を曲がる。
そこから少し行けば、獣憑きの格好に変装した仲間たちが待つ地点に辿り着くことを知っていた斑は、特に警戒も払わず先に進んでいたのだが……。
(……なんだ、この臭いは?)
目的地に近づくにつれ、鼻を衝く不快な臭いが強まっている。
その臭いの正体を知っているような、そうでもないような……そんな、本能的に忌避感を感じる悪臭を嗅ぎつけている斑であったが、彼の先を進む順平はそんなものをまるで意に介していないようだ。
何か、嫌な予感がした。
これまでの人生で感じたことのない、全身の毛が逆立つような怖れが斑の胸を突くも、先行する順平を孤立させるわけにはいかない以上、そこで足を止めるという選択肢を取るわけにはいかない。
せめてその臭いが何であるかだけは思い出そうとした斑であったが、はっきりとこれだという答えを見つけることは叶わず、先に合流地点である洞窟の深部に辿り着いてしまった。
そして、そこに広がっている光景を目の当たりにした彼は、細く鋭い瞳を驚愕に見開いて声を漏らす。
「なん、だ……? これは……!?」
本来、そこでは自分たちの到着を待っているはずの人間の姿が、まるでない。
……いや、正確に述べよう。斑たちの到着を待っていた、待機部隊の武士たちは全員、無残な遺体となって洞窟に転がっていた。
引き千切られた四肢。引き裂かれた腹部。綺麗な風穴を開けられている胴体。
そこから黒く濁った血液が溢れ出し、洞窟の床を赤く染めている。
先ほどから感じていた不快な臭いの正体はこれだったのかと気が付いた斑に向け、血相を変えた順平が声をかけてきた。
「お、おい! どうなってるんだ!? こいつら、お前らの仲間だろ!?」
「……その、通りです。こいつらとはここで合流し、共に行動する手筈でした」
「じゃあどうしてその仲間たちが死んでるんだよ!? 何処からどう見ても本物の死体だろ、これは!?」
感情的に喚く順平を煩わしいと思う斑であったが、その一方で彼の困惑は当然のものだとも思えていた。
しかして、自分すらも判らないこの状況の説明を求められても苛立ちが募るばかりで、冷静に考えるために少し黙っていてほしいと願ってしまっているのが正直な感想だ。
仲間たちの血溜まりには壊れた小道具や臓物、彼らの肉片などが浮いており、さながら地獄絵図と表現するに相応しい絵面が出来上がっている。
よく見れば、近隣の村々から集められた人間たちも死体として転がっているではないか。
どうやらこれは人間同士のいざこざから始まった惨劇というわけではなさそうだ、と落ち着いてきた思考の中で判断を下し始めた斑は、仲間たちに命じて周囲の探索を行わせる。
「お前たち! この辺りを散策して、息のある者を見つけろ! 何が起きているかわからん、警戒を怠るな!!」
「はっ!!」
彼の命令を受けた武士たちがきびきびと動き出す。
その動きについていけていないのは順平だけで、彼はおろおろと血溜まりに浮かぶ人間たちの死体に怯え、戸惑っているばかりだ。
こういう、土壇場の部分で人の本性が出るというが、順平もその多分に漏れなかったようだ。
結局、英雄だなんだと祭り上げられているが、まともな戦いを経験したこともない子供だということだろう。
今、順平は役に立たない。
ここは自分が指揮を執り、事態の把握に努めなければ……と、一人考えていた斑へと、部下が声をかけてきた。
「斑さま! こいつ、まだ息があります!! ……おい、しっかりしろ!」
「ごほっ、がぼっ……! ぐ、はぁ……!!」
仲間に呼びかけられ、体を揺さぶられたその男は、口から血を吐き出しながら荒い呼吸を繰り返している。
どう考えても、助かる見込みはない……ならばせめて、息絶えるその前に情報だけでも引き出そうと、彼に呼びかける男は必死になって叫び続けた。
「何があった!? いったい、誰がこんなことを!?」
「あ、あ、あ……あやがし、だ……! ほんものの、妖が、出た……!! 逃げろ、あいつは、つよ、ぃ……」
「妖だと!? それはどんな奴だ!? 数は? どれだけいたんだ!?」
「や、奴は、女の姿をした……く……っっ!?」
仲間に自分たちを襲った妖の情報を伝えようとしていた男の目が、大きく見開かれる。
その瞬間、斑や蝮、順平たちは、この事態を引き起こした妖の正体を理解していた。
唯一それが出来なかったのは、男を尋問していた武士だけだろう。
なにせ彼は、頭上から急襲して来たその妖に、瞬く間に心臓を貫かれてしまったのだから。
「えっ……? あっ、がぼっ……!!」
「ひ、ひいぃぃぃっ! ぎゃっっ!?」
鋭い前足で武士の心臓を一突きしたその妖は、即座に別の脚で恐怖に怯える死に体の男にトドメを刺す。
ギチギチと背筋が凍る不気味な音を響かせ、ゆっくりとこちらへと振り向いたその妖の姿は、人間であるならばおおよそ見覚えのあるものだろう。
男たちを貫いた、細く長く先端が尖った八本の脚。
黄と黒の虎縞模様を作り上げる繊毛に覆われた胴体。
額に浮かぶ無数の眼と、口から飛び出している巨大な牙。
人間の本能的な恐怖を煽り、不気味さを感じさせるその生物は……蜘蛛だ。
だが、ただの蜘蛛ではない。人間の大きさを超える巨大な体躯を持つ、蜘蛛の形をした妖。
名を『土蜘蛛』……平安時代の妖退治の専門家『源頼光』の逸話にも名高い、人間喰らいの大蜘蛛である。
「う、うわあああああっっ!?」
「慌てるなっ! 迎撃準備を整えろっ! 武神刀を構えるんだっ!!」
突如として出現した巨大な蜘蛛の姿に恐慌状態に陥る仲間たちへと斑の指示が飛ぶ。
しかし、この八百長勝負の中で自分が戦うことなど微塵も考えていなかった男たちは、緩み切った緊張感の中で不意打ちを受け、完全に錯乱してしまっていた。
そんな中で、斑の指示が通るわけがない。彼らが戦いに臨めるはずがない。
斑の考えた通り、土壇場でその人間の本性は発露する……その点においては、彼らも順平もそう変わらない人間だったということだ。
「ギギギギギッ! ギチッ!!」
「ま、また来たっ!? ば、化物がっ! こんなに沢山っ!!」
「た、助けてっ! 助けてくれぇっっ!!」
「逃げるな、馬鹿どもっ!! 戦えっ! 戦えと言っているんだっ!!」
次々と天井から落ちてくる土蜘蛛たちの群れに、武士たちは完全に怯えて戦う気力を失っている。
よもや、これが本当に武神刀を持つ男たちの集まりなのかと憤慨しながら、斑は懸命に『おろち』を振るって土蜘蛛たちを斬り捨てていったのだが……。
「ひっ! ま、待って! ぎゃああっっ!!」
「ま、斑さまっ! 我々も剣戟に巻き込まれて……ぐああっっ!?」
「ぐっ! 居ても役に立たないどころか、邪魔なだけではないか!!」
『おろち』を操り、次々と土蜘蛛を屠る斑。
しかし、動き回る刀の刃は仲間であるはずの武士たちをも斬り裂き、地に倒れ伏しさせていく。
ただでさえ狭い洞窟内では『おろち』を満足に操れないというのに、味方の形をした障害物まであるのでは堪ったものではない。
役立たずの味方など、居ても居なくても同じ……そう結論付け、彼ら諸共土蜘蛛を始末していった斑の周囲には、気が付けば数えるほどの供しか残っていなかった。
だが、頭数をぐっと減らした別府屋武士団とは真逆に、土蜘蛛たちはその数を増やし続けている。
倒しても倒してもキリがなく、こちらの損害が増えるばかりの状況に冷や汗を流した斑が、精神的な疲弊を感じたその時だった。
「あ、兄者! 上だぁっ!!」
「何っ!? ぐわああっっ!?」
蝮の狂ったような叫びが洞窟内にこだまする。
その声にはっとして頭上を見上げた斑が巨大な土蜘蛛が自分目掛けて降下してくる姿を目にした次の瞬間には、彼は地面に押し倒されていた。
「こ、このっ! 離れろっ! 汚らしい虫めっ!!」
「あ、兄者っ! 兄者ーーっ!!」
巨大で重量もある土蜘蛛の体は、斑の細腕で押し退けられるものではない。
『おろち』を振るい、敵を倒そうにも、この密着状態では自分まで貫いてしまう危険性がある。
「だ、誰かっ! 俺を助けろっ! こいつを何とかしろぉっ!!」
自分一人ではこの危機を打開出来ないと助けを求めた斑であったが、蝮も他の仲間たちも、自分たちに迫る土蜘蛛に対処するので精一杯のようだ。
そもそも、『おろち』を振り回して味方ごと敵を排除していた彼に近づく者は誰もおらず、こうして土蜘蛛に襲われるまで、彼は自分が味方から孤立していたことに気が付きもしなかったのである。
「ギギギギギッ!!」
「や、やめろ……! 俺は、毒島斑だぞ! こんなところで、お前のような虫けらにやられるはずがないんだっ! 俺は、俺は……っ!!」
地面に押さえつけられ、満足に身動きが出来ない斑に土蜘蛛の鋭い牙が迫る。
命の危機に瀕しながらも何も出来ないでいる斑は、現実逃避とばかりに自らが何者かであるかを土蜘蛛に向かって叫ぶも、そんな行動が何かを成すはずがない。
もし彼が、仲間たちを信じて連携を取ることを優先していたら。
あるいは、一度退いて体勢を立て直す選択を取っていたならば、彼らの運命は大きく変わっていただろう。
人間は、土壇場で本性を現す。真の危機に直面した時ほど、その人間の本質が試される。
毒島斑という人間の本性は、自分の腕前のみを信じ、その実力を過信して、高いプライドに精神を支配されているという、クズの見本市とも呼べる下らないものであった。
誰かを信じ、思いやり、尊敬する心があれば、こんな結末は訪れなかったということを、ついぞ斑は最期まで気が付くことはなかった。
「ぐああああああああああっっ!」
「あ、兄者~~~~っ!!」
斑の絶叫と、蝮の悲鳴。
兄の断末魔と、それを目の当たりにする弟の叫びが洞窟内に反響する。
首筋を齧られ、鮮血を噴き出す斑の体を貪り喰らう土蜘蛛は、そんな叫びなどまるで気にせずに口を動かし続けていた。
「うわあああっ! よくも兄者をっ! 貴様ら、殺してやるぅぅぅっ!!」
「も、もう駄目だ! お終いだぁ!!」
「た、助けてくれっ! 誰か、助けて……!!」
自分たちの中で一番の腕利きであり、精神的主柱でもあった斑の死は、別府屋武士団の壊滅を意味している。
戦意を失い、何とかして逃げようとする者。兄の死に錯乱し、闇雲に刀を振るって土蜘蛛に挑む蝮。
それら全ての武士たちは、平等に土蜘蛛に倒された後、既に斑をはじめとした犠牲者たちを捕食したことで満腹になっていた妖の非常食として、蜘蛛の糸を巻き付けられた繭となって、彼らの住処へと運ばれていく。
こうして、土蜘蛛との遭遇から十分を待たずして、別府屋武士団は壊滅し、金太郎の目論見は露と消えたのであった。
「はぁ、はぁ、はぁ……! ふざけんな! こんなの、こんなの聞いてねえぞ!!」
そんな中、唯一土蜘蛛たちの魔の手から逃れた順平は、息を切らせて洞窟内を走っていた。
彼は一番最初の土蜘蛛の出現を見て取ったその瞬間、わき目もふらず逃走を選択したのだ。
そのおかげで、本格的な戦闘に入る前に戦域を脱出することは出来たのだが……がむしゃらに逃げ惑った結果、自分がどこにいるのかが判らなくなってしまっていた。
「くそ、くそくそくそっ! 何が簡単な仕事だ!? 何が英雄としての威光を示すだけの役目だ!? 何人も死んで、殺されてるじゃねえか! あの狸オヤジめっ!!」
事前の話とは違う、予想外の展開に進んでしまったことに動揺する順平は、自分をここに送り出した金太郎へと怨嗟の声を漏らした。
楽勝で、簡単で、勝負は決まっている。ただ行動を共にするだけで、美味い汁が啜れるという話だったのに……と、彼が唇を噛み締めた時だった。
「う、うあああああっっ!?」
突如、足元の地面が音を立てて崩れる。
何が何だかわからない内に奈落の底に転落した順平は、受け身も取れずに頭を打ち、気絶してしまった。
「ぎゃふんっ!?」
情けない悲鳴を上げ、ぐったりと伸びる順平。
彼が嵌ったのは、別府屋の男たちが栞桜用に掘っておいた落とし穴の一つであり、この道を通らなかった彼女が引っかからなかった罠の残りだ。
ぴくぴくと痙攣し、完全に気を失っている順平であったが、落とし穴に落ちたお陰で土蜘蛛たちの目から逃れることが出来たのは、幸運だったといえよう。
……だが、その幸運が100%良い方向に働くかどうかは、また別の話である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる