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第三章 妖刀と姉と弟
朝日と共に覚悟が昇る
しおりを挟む「燈、少しいいかい?」
「……おう」
二人きりの部屋の中で、真面目な顔をした蒼に話を切り出された燈は、その内容を予想しながら答える。
彼の予想に違わず、蒼が切り出した話の内容は、今後の自分たちの行動と燈自身の覚悟を問いかけるものであった。
「百元さんの話は君も聞いたはずだ。色んな私情を抜きにしても、幕府に協力している君の仲間たちに『禍風』と『泥蛙』を渡すわけにはいかない。妖刀使いたちは僕たちの手で止める。妖刀の回収も、僕たちが行う。ここまではいいね?」
「……ああ」
問題はここからだと、暗に蒼の声が語っていた。
幽仙という黒幕を擁する幕府に妖刀を渡すわけにはいかないと、その部分に関しては納得も肯定も出来る燈であったが、次に発した蒼の言葉がその胸を抉る。
「……燈、僕たちが妖刀を回収すると決めた以上、幕府の手先である君の仲間たちとは敵対する形になってしまうだろう。嵐たちを追っていけば、彼らと遭遇することは十分にあり得る。そして……そこで、彼らと戦うこともだ」
「……っ!!」
蒼が何を言おうとしているのか、何を聞こうとしているのか、燈には判っていた。
動揺に動揺を重ねた今の心ではその答えを出すことは出来ず、ただ胸の内でぐるぐると渦巻き続けているその想いを、蒼が言葉として燈に尋ねる。
「もしもそうなった時、燈……君は、かつての仲間たちと戦えるか? 君の命を狙って襲い掛かる友人たちに、本気で刃を向けることが出来るかい?」
「………」
それは、避けられない戦いだった。
王毅たちが燈のことを敵とみなし、燈たちの目的が彼らのそれと被ってしまう以上、この問題を話し合いで解決することなど出来はしない。
まず間違いなく……妖刀を追えば、王毅たちと刃を交えることになる。
その時、王毅たちは本気で燈を殺しに来るだろう。
都合の悪い秘密を消し去りたい順平は勿論、自分の考えに固執している慎吾やタクトもまた、燈に対して剣を向けるに決まっている。
その時、燈は迷いを感じずに彼らと戦えるだろうか?
本気で自分を殺しにきている相手と戦う時、その迷いが致命的な失態に繋がるということを燈も頭では理解している。
しかし、頭で判っていても、心が納得するかどうかというのは、また別問題だ。
「……もし、君が友人たちと戦いたくないというのなら、無理強いはしないよ。百元さんのお屋敷で待機していて構わない。一抹の迷いなく戦いに臨めると言えないのなら、そうしていた方が賢明だ」
蒼は、そんな燈の迷いを理解しているからこそ、こうして王毅たちと対峙しなくて済む道を提示してくれているのだろう。
見知った顔と殺し合いをするということに躊躇いを感じるのは勿論だが、ここで王毅たちと戦ってしまえば、彼らとの敵対は確実なものとなる。
そうなってしまえば、自分もこころも学校に戻れる可能性は零になってしまうだろう。
逆に、ここで明確に王毅たちと敵対する意思表示をしなければ、ほとぼりが冷めた後に再び彼らと邂逅し、話し合いの場を設けられる可能性もなくはない。
正弘の協力を得て、王毅と一対一で話せる場を設定して、誤解を解ければ……まだ、自分たちが彼らと和解することは可能なのだ。
「……燈、君がどうするかは、君自身が決めるんだ。翌朝までに考えて、答えを出してほしい。僕は……いや、僕たちは、君の出した答えを尊重するよ」
「……ああ、わかった」
朝日が昇るまで、僅か数時間。
たったそれだけの時間で答えを出してほしいと告げる蒼に対して、燈は頷きを返す。
事は一刻を争う事態だ。
もし、明日の朝に嵐が暴れ始めたら、それを止めるために自分たちも現場に急行しなければならない。
それならば、今夜中に答えを出しておかなければならないのは自明の理だろう。
「……暫く、一人で考える。お前は先に寝ててくれ」
「うん。……辛いだろうが、よく考えてくれ。もう一度言うけど、僕は君の意見を尊重するよ」
「……ありがとうな、蒼」
自分の感謝の言葉にふわりと笑みを浮かべ、「おやすみ」と就寝の挨拶をしてくれた蒼を見送ってから、燈は屋敷の縁側へと向かい、空を見上げる。
濁り、曇る燈の胸中とは正反対の美しい夜空には、無数の星たちが浮かび上がっていた。
「……こんな気分を乗り越えたのかよ。弟を斬るって決めた、涼音は」
そこまで関わりが深かったわけでもない友人たちと敵対することにここまで苦悩するのだ、血の繋がった弟を斬ると決めた涼音の苦悩はどれほどのものだったのか、想像もつかない。
彼女はそれを乗り越え、弟を屠ると決めた。
その覚悟の強さを素直に尊敬しつつ、燈は夜空に輝く星々を見つめ、一人物思いに耽る。
(迷いを振り切って、戦いに臨む……だなんてことが、そう簡単に出来るわきゃねえよな。でも、このまま黙って見てるだけで本当にいいのか……?)
この場で王毅たちとの戦いを避ける案は、決して悪い策ではない。
燈自身が悪い流れを感じている以上、ここで強引に何かを成そうとすることは必要以上の労力を支払うということを意味している。
ならば、ここは仕切り直して改めて王毅たちの前に姿を現すというのは、逃げかもしれないが賢い判断ともいえなくはなかった。
だが、本当にそれでいいのだろうか?
妖刀を確保するために戦う仲間たちの傍に居ず、自分だけが安全な場所でのうのうと過ごすことが本当に正しいのだろうか?
我が身可愛さに戦いから逃げ、仲間たちに相応の負担を強いることもまた、燈は納得出来はしない。
確かに王毅たちは仲間だが、蒼たちも彼らと同じく仲間であり、友だ。
両者を天秤にかけ、王毅たちの信頼を取るというのは、大和国で出会った仲間たちへの裏切りに他ならないのではないだろうかと、燈は思う。
(どうすりゃいい? 何が正しい行動なんだ……?)
考えても、考えても……答えは出ない、出せない。
何もかもが正しくて、何もかもが間違っているような、思考の袋小路に捕らわれてしまった錯覚に陥った燈は、夜空を見上げながら延々とその問題に悩み続ける。
かつての仲間たちの信頼と、彼らと協力出来る未来を取るべきか?
新たに得た仲間たちとの友情と、陰謀に立ち向かおうとする正義に身を投じるべきか?
そのどちらもが正しくて、どちらもが間違っている。
答えの出ない疑問に頭を悩ませ続けた燈は、全てを投げ出すようにしてその場に寝転ぶと、真横に置いておいた『紅龍』へと話しかけた。
「お前もつくづく災難だよな。妖刀呼ばわりされて、持ち主はこんな迷いっぱなしで……武神刀としちゃあ、最悪の一日だわな」
物言わぬ愛刀へと、親しみを込めて語りかける燈。
胸の内にある感情を少しでも吐き出したいと願いながら、その相手として自身の武神刀を選んだ彼は、苦笑しながら相談するようにして『紅龍』へと語り続けている。
「なあ、お前はどうするべきだと思うよ? もしもお前自身の願いが叶うとするなら……お前は、どうしたい?」
体を起き上がらせ、鞘から『紅龍』の刀身を軽く引き抜いた燈は、そこに映る自分の眼を見つめながらそう問いかけた。
それは『紅龍』に問いかけているようで、自分自身へと質問を投げかけているような、そんな感覚。
武神刀に映る自分自身の心に本当の想いを問いかけた燈であったが、当然ながらその答えが返ってくることなどなく、ただただ静寂とした時間が過ぎるだけだ。
「……ふっ、だよなぁ。その答えは自分で出すしかねえんだ。こんな風に誰かに聞いたとしても、答えが返ってくるわけねえんだよなぁ……」
そうして、暫くの間、刀身に映る自分の瞳とにらめっこしていた燈は、自嘲気味に笑いながらそう呟く。
結局は自分が自分で納得のいく答えを出すしかないのだと、そう考えた彼が引き抜いた『紅龍』の刃を音を鳴らして鞘に納めた時だった。
『燈、お前の力はなんのためにある? わしは、その答えをお前さんに教えたはずだぞ』
「っっ……!? し、師匠……!?」
この場にいるはずのない宗正の声が、聞こえた気がした。
その声に弾かれるように立ち上がり、周囲を見回した燈であったが、確かに響いたはずの宗正の声はもう二度とは聞こえてこない。
今の声は、迷いに迷った自分の心が生み出した幻聴だったのか……と思い、再びその場に座り込んだ燈は、膝の上に置いた『紅龍』を見つめながら、たった今聞こえた宗正の言葉を思い返していた。
「俺の、力……俺はどうして、これまで師匠の下で修業を積んできたんだ……?」
思い出す、自分の起源。
順平の策略によって奈落に叩き落され、一時は死を覚悟した自分を拾ってくれた宗正の下で過ごした日々で、いったい自分は何を学んだ?
自分自身の才覚を、その力を引き出す方法を、数々の強力な技を、自分はずっと学び続けてきた。
ならば、そんな風に力を付け続けてきた理由はなんだ? どうして自分は、強くなろうとしていた?
(俺を陥れた順平たちへの復讐のため、か……? いや、違う。そんなんじゃねえ。そんな下らないことのために俺は、今まで修行を重ねてきたわけじゃねえだろ!)
順平に対する憎しみの気持ちは間違いなく存在している。
だが、それが燈の原動力の全てではないはずだ。
自分が強くなろうとしていた理由は、復讐のためだけじゃない。もっと心を突き動かす、何かがあったはずだ。
なら、それは何だ? 燈の心を動かしていた、前に進ませていた何かとは、いったい――?
「あ……っ!?」
そうやって、考えを深めていた燈は、不意に飛び出してきた答えに小さな呟きを漏らす。
その答えは思ったよりも単純で、簡単で、こんな風に迷った末に出て来た答えとしては、至極ありふれたものだった。
迷っていれば、人が死ぬ。
妖刀に魂を食い潰された者の凶刃にかかって、何の罪もない人々の命が摘み取られていく。
家族を、友を、愛する者を奪われた怨嗟の声が新たな憎しみと復讐の意志となって、終わらぬ悲劇の連鎖が繰り広げられていく。
そして、そんな悲劇は妖刀が世に出回る限り、何度でも繰り返されるのだ。
平穏な日々を送っていた人間がある日、妖刀の魔力に触れて外道に堕ちる。
外道と化した人間の手で無数の人々の命が奪われ、悲しみが広がっていく。
愛する者たちを奪われた者が外道への復讐を誓い、また新たな外道へとその身をやつす。
王毅たちに、幕府に、幽仙に妖刀を渡してしまえば、そんな悲劇が何度でも繰り返される。
その悲劇の中で傷つき倒れるのは、燈でも王毅でも、幕府でもない。
この大和国に生きる、無辜の民たちだ。
彼らには強大な力に抗えるだけの強さはない。
妖の被害にも、狂った人間の暴力にも、なす術なく逃げ惑うしか道はない。
民たちの上に立つ幕府も、異世界から召喚された英雄である王毅たちも、そんな彼らの犠牲を知って知らぬふりをする。
今、王毅たちの目に映っているのは、妖刀を回収するという己の使命のみ……その妖刀によって引き起こされた数々の事件は、視界の外へと弾き出されている。
そこまで考えた燈は、ゆっくりと瞳を閉じると深く息を吐く。
そうやって心を落ち着かせた後、彼は顔を上げると薄明るくなり始めた空を見上げた。
「そうだった……俺は、守るために強くなったんだった……! 理不尽な力に晒される弱い者を守るために、師匠は俺を鍛えてくれた。俺の、俺たちの目的は……人を助けることだ……!!」
この世界は残酷だ。理由のない悪意や唐突な悲劇が、そこら中に溢れかえっている。
その悲劇から無力な人々を守る盾となり、絶望を振り払う刀となる存在こそが、最強の武士団。
宗正が、桔梗が、百元が信じた若者たちに自らの理想を託した夢の結晶。
ここには、底なしの甘さとそれを貫くことの大切さを知る蒼がいる。
暗い過去を乗り越え、未来に進む強さを得た栞桜とやよいがいる。
己の罪と対面しながら、それでも前に進もうとしている涼音がいる。
そして……理不尽な暴力によって人生を狂わされる恐怖を知る、こころと燈がいた。
自分たちは一度、どん底を味わった。
絶望を知り、重く苦しい闇の底まで落ち、互いに助け合ってそこから這い上がってきた。
燈も、蒼も、栞桜もやよいも涼音も……絶望の苦しみと悲しみを知っているからこそ、他の誰にもそんな思いを経験してほしくないと心の底から思うことが出来る。
誰かのささやかで平穏な幸せを、心の底から守りたいと願って、そのために命を懸けて戦うことが出来る。
自分たちの師が与えてくれた力は、そのための力だ。
決して、何かを壊したり、傷つけるための力ではない。
守るのだ、誰かにとって大切なこの瞬間を、明日を。
そして灯すのだ、世界中の人々の心に、消えることのない希望の明かりを。
それこそが、自分たちの、最強の武士団の使命だと信じて……!
「………」
無言のまま、立ち上がる。無言のまま、朝日が昇る空を見つめ、庭先へと歩み出す。
暗い黒から、決意の赤へと染まっていく空の色は、そのまま燈の瞳にも映っていた。
「そうだ、最初から答えは俺の中にあったんだ。迷う必要なんて、これっぽっちもなかったんだな」
自分は、順平や花織が憎いから戦うのではない。王毅たちを倒すために戦いに臨むのでもない。
妖刀と幽仙の目論見が引き起こす悲劇を防ぐために、力なき人々の命と幸福な未来を守るために刀を取る。
幕府に逆らうという罪も、かつての仲間たちと刃を交えるという苦しみも、全て背負って戦い抜く。
自分の大きな体と、宗正がくれた強さと、仲間たちの差さえがあれば……自分が膝をつくことなどないと信じて。
「……なあ、俺の出した答え、聞いてくれるか?」
「おう、聞いてやる。好きなだけ喚くといいさ」
朝日が差す百元邸の庭と縁側。
明るい日差しが差し込むそこに並び立つ、自分と同じ道を歩む仲間たちへと振り返った燈は、覚悟を決めた男の眼差しと、小さな笑みを浮かべながらそう言った。
かつての仲間たちとの再会とその裏切りに苦悩していた燈の身を案じ、夜通し彼を見守っていた栞桜たちは、迷いを振り払って答えを出した燈の言葉に耳を傾ける。
「正直、もう俺は迷わねえだとか、あいつらのことを喜んで斬ってやるだとか、そんなことは口が裂けても言えねえ。でも、俺が迷って、立ち止まっている間に誰かが苦しんで、悲しんで、死んでいくっていうのなら……迷いも葛藤も全部背負ったまま、先に進んでやるさ。誰かが傷つくくらいなら、俺自身が傷ついた方が何倍もマシだって、そう思うからよ」
「……本当に、それでいいの? それはきっと、燈くんが思うよりもずっと苦しい道のりだと思うよ?」
「ああ、大丈夫さ。俺は強いからな」
人並外れた気力と素質を持つからではない。
大事な人たちから、苦しんでも前に進めるだけの力を与えてもらったからこそ言えるその言葉を発しながら、燈がニッと笑う。
そして、自分を見守ってくれた仲間たちの顔を一人一人見つめながら、こう言った。
「やろうぜ、妖刀奪還。嵐たちを止めるのは幕府でも王毅でもねえ、俺たち最強の武士団だ!」
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