和風ファンタジー世界にて、最強の武士団の一員になる!

烏丸英

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第三章 妖刀と姉と弟

決戦の地は……

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「姉さ~ん、ね・え・さ~ん……! ふ、ふふふふふふ……!!」

 姉と立ち合い、その実力を確かめた嵐は、鼻歌混じりの上機嫌な声で涼音との戦いに思いを馳せていた。
 そんな彼の周囲には無残にも切り刻まれた人間の遺体が転がっており、血と死臭が漂う部屋の中で平然としている嵐はむしろ何処か恍惚とした表情を浮かべている。

「邪魔さえ入らなければ、姉さんと決着がつけられたのにな……折角の楽しい殺し合いが台無しじゃないか」

 『禍風』を回収すると息巻いていた連中に、第二の妖刀使い、それと涼音が連れていた彼女の仲間と思わしき人物たちと、姉との一対一の決闘を望む嵐にとっては、その邪魔をする者が多いのが腹立たしいところだ。
 ここに転がっている男たちは、その八つ当たりで殺されたといっても過言ではない。
 もしくは、姉との立ち合いで発散しきれなかった体の火照りを治めるために、手頃な見廻り所の番人たちを相手にクールダウン代わりの虐殺を行ったといったところであろうか。

 磐木からほど離れた羽生はにゅうの村近くにある見廻り所を制圧した嵐は、血生臭い死臭が漂うそこで一晩明かした後、再び居所を変えようとしたのだが……

「……もう、いいか。雑魚を狩るのも飽きてきちゃったしな。そろそろ、姉さんと本気で殺し合う頃合いだよね……!」

 浮かせた腰を再び下ろし、どっかりと血が滴る椅子の上に腰掛ける嵐。
 そうして、犠牲者の血を吸い取った『禍風』を鞘から引き抜いた彼は、力を解放し、抑えていた妖気を天高く解き放つ。

「ふ、ははは! あははははははははっ!!」

 人を殺し、命を喰らい、力を増した『禍風』が放つ妖気は、気力を持たない一般人でも異変を感じ取れるほどの凶悪な波動となって羽生の村の空を揺らす。
 まず間違いなく、磐木まで伝わったであろう妖気を放った嵐は、狂ったように笑いながら待ちきれない戦いの時へと思いを馳せ始めた。

「さあ、僕はここにいるよ! 姉さんも、その仲間も、僕と『禍風』を狙ってる連中も……! 全員、集まれっ! どうせやるなら、みんなで殺し合おう!! お前たち全員を殺して、僕が一番強いってことを証明してやるよ! あはははははは……!!」

 見廻り所を出て、ざわつく風を肌で感じながら、嵐が空に向かって吼える。
 狂気と、殺意と、姉へと執着を感じさせる笑い声を上げる彼は、不意に真顔になると静かに呟いた。

「ここで終わるんだ。僕か姉さん、どちらかが終わる。終わらせるのは僕だ、僕が全てを終わらせるんだ……!」

 異常に精神の抑揚を上下させ、笑ったり落ち着いたりを繰り返す嵐は、自分を倒すためにこの場にやって来るであろう者たちを待ち続ける。
 誰が何人来ようとも自分は負けはしない。全員を返り討ちにして、標的である涼音も倒して、自分の強さを知らしめてみせる。
 殺意漲る願望を胸に、嵐は再び狂気に満ちた笑い声を響かせると、遠く磐木の地に居る姉に届けとばかりに吼えた。

「待ってるよ、姉さん! 僕を殺しに、会いに来てよ! 今度こそ決着をつけよう! 僕が死ぬか、姉さんが死ぬかだ! それでしか、この戦いは終わらないっ!!」

 木々が、動物たちが、人々が、羽生の村から発せられる不穏な気配にざわめく。
 異変を感じ取り、誰もがそこから離れようとする中で、数名の男女たちだけは逆に最後の戦いに臨むためにその村を目指して動きだす。

 決着の地は、大和国北の大地 磐木領地内の羽生村。
 そこで待つ嵐と、彼を追う者たちの最終決戦が、今まさに始まろうとしていた。
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