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第1章 記憶と兄妹
第1思 今日も彼は扉を開ける2
しおりを挟むアパートを出て、歩いて十分。
そこが最初のバイト先。
ピザ屋のピザラ~ラ。
出前もやってる大手チェーン店だ。
今日は少し話し込んでしまった。
急がないと遅刻する...。
哀檻は急いで向かおうとするが、そこでお隣の扉が開き、出てきた人とぶつかってしまう。
「...!すみません」
「いや、こちらこそ少しボーッとしてて....」
扉から出てきた桜咲高校の制服を纏った人物に頭を下げ、バイト先に向かう。
「さっきの人、酷くフラついてたけど、大丈夫か....?」
先程の少年を心配するが、今の生活に他人を心配している余裕は無い。
「おとと....僕も少しふらつくな...やっぱり朝食はとるべきか.....けど、それだと奏の朝食のメニューが一品減る....」
自身の空腹と妹の笑顔を天秤に掛け、結局、空腹感を我慢する事に決めた哀檻は今度こそバイト先へと向かった。
▽
「はい。哀檻君。これ、出前のピザ。届け先は、えーと....桜咲高校だね。」
「...出前で、高校ですか....?」
「おや。哀檻君の世代だと、もうあんまりこういうのはなくなったか。僕が高校生だった頃は、文化祭とかのイベントとかで学校に遅くまで残る時は、先生に頼んで夜食に出前をとったものさ。今は色々煩いからね。あまり見なくなったけど。」
「はあ。でもまだ昼前ですよ。イタズラとかじゃ....」
「かもね。けどまぁ、イタズラならイタズラでいいよ。どっちにしろ生徒が注文したものならお金は先生方にでも払ってもらえばいいし。」
「そうですか。...わかりました。」
哀檻は配達のピザ5枚を受け取り、バイクにのせる。
ピザの良い香りが空腹を刺激するが、必死に耐えてバイクにまたがり桜咲高校へと向かう。
ここからだと、10分足らずで着くだろう。
「お腹すいた.....」
哀檻はバイクを出した。
▽
「ピザラ~ラです。商品のお届けにあがりました。」
「あー、はいはい。ピザね。ピザ。確か1年.....4組だったかな。そこ曲がって階段上ってすぐ右だから。よろしくちゃん。」
「はぁ。承りました。」
なんだ。このおじさん凄いチャラっとしてるけど、高校教師って、こんなものなのか?
というか、普通に、ピザの出前間違いじゃなかったのか。今、10時前だぞ?いいのかそれで。
高校の教員に疑問を覚えながらも、仕事だと割り切り階段を上る。
1年4組と書いてある表札を見つけ、扉に手をかけようとするが、丁度休み時間だったらしく、扉は開いていた。
授業中だったらどうしようかと思っていたので非常に都合が良い。
哀檻はそのまま中へ入りながら挨拶をしようとして固まる。
「あの、ピザ5人前、お届けに参りまし、た....?」
何故なら、目の前には足を浮かせた少年。
アパートを出たときぶつかった彼がいたから。
...などという理由では無く、教室の中心に青く輝く円が広がっていたのだから。
何かを考える前に円は回転を始め赤く輝きだす。
「!?...これは、あの時の....!?」
目の前の少年が最後に何か言ったような気がしたが、哀檻はそれ以上何かを考えることはできなかった。
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