ある日、ぶりっ子悪役令嬢になりまして(トライア編)

桜あげは

文字の大きさ
5 / 15

しおりを挟む



「わー! わー! すっごーい! 超凄い、魔法棟よりも凄い! お金掛かってるね!」
「……そんなに喜んでもらえるなんて、連れて来た甲斐があったね。嬉しいよ」

 トライアの魔法実験室は、素晴らしい場所だった。
 広い部屋に最新の設備、豊富な実験器具に材料……!
 いいなぁ、こんな場所で実験出来るなんて羨ましい。
 ガーネットの魔法棟は、予算の関係もあり最低限の設備しかないのだ。

「魔法薬の実験室だね! トライアは主に薬を作るの?」
「うん。魔法薬は得意なんだー♪」
「ガーネットの器具とはまた違うんだね。材料も、見たことのないものがある」
「これは、うちの国でしか取れない。しかも、少量だから国外にはまず出回らないんだよ」

 素晴らしい!
 魔法使いの仕事を辞めなければならなかったときはショックだったけれど、魔法実験ならこの国でも出来るかもしれない。

「ねえ、カミーユ。君になら、この実験室を好きに使わせてあげる」
「えっ、いいの!?」
「特別だよ? 材料も、欲しいものがあれば何でも揃えてあげるからね」

 そんな、出血大サービス……本当だとしたら、とても嬉しい。

「実は僕、カミーユの刺青にも興味あるんだよね。それって、魔法薬の一種じゃないの?」
「よく分かったね。これは魔法植物から作った色の成分と、魔法を掛け合わせたものなんだ。定義としては魔法薬に近いと思う……トライアは、どんな魔法薬を作っているの?」
「何でも作るよ。睡眠薬、毒薬、回復薬……今研究しているのは、魔力を増幅させる薬」
「そんなものも出来るの!?」
「まだ実験段階だからなんとも言えないけどー。この薬が完成すれば、個人の総魔力量に関係なく魔法が使えるようになるよ思う」
「それは凄いね! 私も仕事で魔力回復薬を使っていたけれど、本当はもっと効き目のあるやつが欲しかったんだよね。今、出回っているものは、少ししか魔力が回復出来ないんだもの……」

 魔法薬に関してのトライアの知識は、かなりのものらしい。

「ねえ、私もトパージェリア式の魔法薬の作り方を知りたいんだけど……」
「いいよ、カミーユになら教えてあげても」
「……本当!?」
「ただし、授業料はもらうからね♪ 薬一種類につき、キス十回で手を打とうか」

 ろくでもないことを言い出したトライアは、私を見てニヤリと笑う。

「……!?」

 とんでもない条件だ。
 でも、でも、魔法薬の作り方が知りたい……

「トライア、提案なんだけど! 私が魔法刺青の作り方を伝授するから、模様一個につき、魔法薬を一種類教えて欲しい」
「……そうだねえ。模様一個にキス一回を付けてくれるなら、いいよ」
「なっ、なんでキス? ガーネットの魔法薬とか、直接魔法の使い方の方がいいんじゃ……」
「そんなの……僕が、カミーユとちゅーしたいからに決まってるじゃん?」
「ねえ、トライア。どうして私のことを、そんなに気に入ってくれているの? そもそも、なんで私に縁談の話を? 何回考えても、さっぱり分からないんだけど」

 私がそう言うと、トライアは何故か困ったような表情を浮かべた。

「一目惚れだよ? 結構分かりやすく伝えているつもりだったんだけどなあ」
「えっ……ど、どこに!? 私、惚れられるような要素は持ち合わせていないと思うんだけど」

 自国でも、まったくモテないのに……
 変人刺青女と言われて久しい今日この頃だ。

「それは秘密。とにかく、僕は心底カミーユに惚れているってことだよー」

 そう言うと、トライアは不意打ちで私の額に唇を落としたのだった。
 なんだか、上手い具合に質問を躱された気がする。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜

As-me.com
恋愛
 事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。  金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。 「きっと、辛い生活が待っているわ」  これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。 義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」 義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」 義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」  なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。 「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」  実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!  ────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

処理中です...