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「わー! わー! すっごーい! 超凄い、魔法棟よりも凄い! お金掛かってるね!」
「……そんなに喜んでもらえるなんて、連れて来た甲斐があったね。嬉しいよ」
トライアの魔法実験室は、素晴らしい場所だった。
広い部屋に最新の設備、豊富な実験器具に材料……!
いいなぁ、こんな場所で実験出来るなんて羨ましい。
ガーネットの魔法棟は、予算の関係もあり最低限の設備しかないのだ。
「魔法薬の実験室だね! トライアは主に薬を作るの?」
「うん。魔法薬は得意なんだー♪」
「ガーネットの器具とはまた違うんだね。材料も、見たことのないものがある」
「これは、うちの国でしか取れない。しかも、少量だから国外にはまず出回らないんだよ」
素晴らしい!
魔法使いの仕事を辞めなければならなかったときはショックだったけれど、魔法実験ならこの国でも出来るかもしれない。
「ねえ、カミーユ。君になら、この実験室を好きに使わせてあげる」
「えっ、いいの!?」
「特別だよ? 材料も、欲しいものがあれば何でも揃えてあげるからね」
そんな、出血大サービス……本当だとしたら、とても嬉しい。
「実は僕、カミーユの刺青にも興味あるんだよね。それって、魔法薬の一種じゃないの?」
「よく分かったね。これは魔法植物から作った色の成分と、魔法を掛け合わせたものなんだ。定義としては魔法薬に近いと思う……トライアは、どんな魔法薬を作っているの?」
「何でも作るよ。睡眠薬、毒薬、回復薬……今研究しているのは、魔力を増幅させる薬」
「そんなものも出来るの!?」
「まだ実験段階だからなんとも言えないけどー。この薬が完成すれば、個人の総魔力量に関係なく魔法が使えるようになるよ思う」
「それは凄いね! 私も仕事で魔力回復薬を使っていたけれど、本当はもっと効き目のあるやつが欲しかったんだよね。今、出回っているものは、少ししか魔力が回復出来ないんだもの……」
魔法薬に関してのトライアの知識は、かなりのものらしい。
「ねえ、私もトパージェリア式の魔法薬の作り方を知りたいんだけど……」
「いいよ、カミーユになら教えてあげても」
「……本当!?」
「ただし、授業料はもらうからね♪ 薬一種類につき、キス十回で手を打とうか」
ろくでもないことを言い出したトライアは、私を見てニヤリと笑う。
「……!?」
とんでもない条件だ。
でも、でも、魔法薬の作り方が知りたい……
「トライア、提案なんだけど! 私が魔法刺青の作り方を伝授するから、模様一個につき、魔法薬を一種類教えて欲しい」
「……そうだねえ。模様一個にキス一回を付けてくれるなら、いいよ」
「なっ、なんでキス? ガーネットの魔法薬とか、直接魔法の使い方の方がいいんじゃ……」
「そんなの……僕が、カミーユとちゅーしたいからに決まってるじゃん?」
「ねえ、トライア。どうして私のことを、そんなに気に入ってくれているの? そもそも、なんで私に縁談の話を? 何回考えても、さっぱり分からないんだけど」
私がそう言うと、トライアは何故か困ったような表情を浮かべた。
「一目惚れだよ? 結構分かりやすく伝えているつもりだったんだけどなあ」
「えっ……ど、どこに!? 私、惚れられるような要素は持ち合わせていないと思うんだけど」
自国でも、まったくモテないのに……
変人刺青女と言われて久しい今日この頃だ。
「それは秘密。とにかく、僕は心底カミーユに惚れているってことだよー」
そう言うと、トライアは不意打ちで私の額に唇を落としたのだった。
なんだか、上手い具合に質問を躱された気がする。
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