旦那様が素敵すぎて困ります

秋風からこ

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第一章

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月曜日、私はビクビクしながら大学へ行った。涼太があの後誰かに私たちのことを漏らしていれば、すでに噂が広まっててもおかしくないと思ったのだ。
そろそろと教室の扉を開けていると、「おはよ!」と肩を叩かれて、大げさにびくっと反応する。

「また動きがおかしなことになってるけど、どうしたの?」

振り向くと朋子がいた。もう私が嘘をついていたこともバレているだろうか。気まずくて、視線を合わせられないまま「おはよ」と小さく返す。

「あ、なんで変なのかわかった!ふふふ、涼太に聞いたよー」

朋子に軽く背中を押されて、教室の中へ足を踏み入れながら朋子は話しを続ける。心臓がばくばくして変な汗が出てきた。ここは先に謝ってしまおう…!

「朋子、ごめ「彼氏がいるんだって?」

私と朋子の声が重なる。

「それで振られたーって涼太に聞いた。ごめんね、私てっきり璃子はフリーかと思ってたよ」
「い、いや、私こそ勘違いされるような態度とってごめん!」
「まあしょうがないよ。永井さんはかっこよすぎるからねー」

もしかして、涼太は私が恭ちゃんと結婚してることを秘密にしてくれた?…きっとそうだ。

「涼太と璃子が気まずくなっちゃったら私も寂しいしさ、涼太は友達として璃子と付き合っていきたいって言ってたし、璃子さえよければまた三人で仲良くしよ?」
「う、うん!ありがとう、朋子」

ふってしまった挙句、恭ちゃんが失礼な態度をとってしまったのに、まだ友達でいてくれるなんて涼太はなんていいヤツなんだろう。しかも、私たちのことをきっと秘密にしてくれている。私は心の中で涼太に感謝し、噂が広まらないことに安堵した。


***


夕方、安心しきっていた私が家に帰ろうと大学を出ると、一人の女の人に声をかけられた。

「永井さん、ちょっといいかしら?」

話したことはないけど、知っている。恭ちゃんと噂になっている相川さんだ。なんで彼女が私を知っているんだろう?私は少し緊張しながら返事をした。

「なんですか?」
「ちょっと二人でお話ししたいことがあるの。お茶でもしない?」

心臓がバクバク鳴り始める。相川さんから伝わるピリッとした空気で、なんとなく話っていうのは恭ちゃんのことかなと感じた。



二人で近くの喫茶店に入り、相川さんはホットコーヒー、私はホットティーを注文した。飲み物が運ばれてくると早速相川さんが口を開く。

「あなたが永井恭くんの奥さんなの?」

いきなりな質問に私は焦って口ごもる。どうしよう…。

「隠さなくていいわ。私、この間居酒屋で見ちゃったのよ。あなたたちが、一緒にいた男の子に結婚指輪を見せているところを」

あの場面を見られていたのか…。もう私たちの関係を知っているのならば、しらばっくれてもしょうがない。

「はい、そうです」

意を決して私は恭ちゃんの妻であることを認めた。絶対に不釣り合いだと思われているはず。どんな嫌味を言われるんだろうとビクビクしていると、相川さんの纏っているオーラがふっと柔らかくなった。

「やっぱり!実はこの間は横顔しか見えなかったから、確証が持てなかったんだよね。そっかー、永井くんはこういう子がタイプなのね」

急に高くなったテンションに私は戸惑う。しかも確証持ってなかったって、かまかけられたってこと?

「あの完璧な永井くんの奥さんってどんな人なんだろうってずっと気になってたのよ!私ね、永井くんと仲良くさせてもらってるの。よかったら璃子ちゃんとも仲良くしたいんだけど、いいかしら?」

完璧な笑顔を見せつつ、相川さんが私の手を握ってくるので、ドキッとした。同性なのにドキドキするって…。美人の笑顔は反則だなあと思いつつ、反射的に私は頷いてしまった。

「よかった。結婚してることは皆には秘密なんでしょう?何か相談とかあったら、遠慮なく言ってね!」
「は、はい。ありがとうございます」

そしてあれよあれよと言う間に連絡先も交換した。相川さんが美人だからか、勝手に気が強くて難しい人だと思っていたけど、すごく気さくでいい人だった。そうだよね、恭ちゃんのお友達なんだから、悪い人なわけないか。私は相川さんに嫉妬していた自分に少し恥ずかしくなった。



その後、相川さんと少しおしゃべりをしてから私は上機嫌で帰宅した。
先週末は相川さんと恭ちゃんの噂を聞いて落ち込んで、涼太から告白されて今後友達付き合いを続けられるか悩んで、 気持ちが沈みがちだったけど、どちらもうまく解決しそうな気がしていた。

「どうしたの?やけに機嫌いいじゃん」

帰るなり先に帰宅していた恭ちゃんに不思議な顔をされる。

「あのね、帰りがけに相川さんに会って、お茶に誘われたから、行ってきたの。話してみたらすごく気さくでいい人だった!さすが恭ちゃんのお友達だね!」
「…なんで相川がおまえのこと知ってんの?」
「金曜日、居酒屋で見られてたみたい…。私たちが結婚してるのもばれちゃったんだけど、秘密にしてくれるみたいだし、相談相手になってくれるって」
「ふーん。まああいつは言いふらしたりはしないだろうけど、あんま相談とかはしない方がいい」
「え、なんで?」
「なんとなく、一癖ありそうだから」
「なにそれー。友達なのに?」
「俺にとってはいい友達ではあるけど、あんまりおまえとは合わなさそうってこと。だからあんま近づくなよ?」
「はーい。まあ恭ちゃんに言われなくても、美人すぎて近づき難いけどね」

私がおどけるようにそう言うと、恭ちゃんは私の頭をくしゃっと撫でて、「璃子の方が可愛い」って言うから、私の顔はボッと赤くなる。

「…恭ちゃん、目悪くなったんじゃない?」
「なってないよ。璃子が世界で一番可愛いって思ったから結婚した」
「…………」

照れもしないで真顔でそんなこと言われると、どうしていいかわからなくなる。私は小さい声で「ありがと」と言うと、思いっきり背伸びをして恭ちゃんにチュッとキスをした。

「やっぱり可愛い」

そう言って笑った恭ちゃんの顔はすっごくすっごくかっこよかった。

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