47 / 65
〈47〉地上の戦い 3
しおりを挟む
ドレイクの手の中から降りたメアリが、地面の感触を確かめるように軽く足下を踏み鳴らす。
ふと、周囲に目を向けると、誰しもが頭を下げて、メアリたちを眺めていた。
「古竜様が人の姿に。2人の娘様まで……。ありがたや、ありがたや……」
「古竜に魔法を撃つなんて、バカなマネを! あの娘の首だけじゃダメだ。平民たちの首も差し出すぞ」
「いや、動くな! 下手に刺激するんじゃねぇ!」
拝むように見上げる者や、怯えた瞳を向ける者。
右を見ても左を見ても、市民や貴族を問わずに、誰しもが地に伏していた。
立っているのは、人の姿に戻ったドレイクとメアリ、背後に控えるリリだけだ。
突然の状況ゆえに、リリの心の中では、
“ 次女ってなに! なんでそうなったのか知らないけど、絶対におかしいでしょ!? どうして私まで拝まれてるのぉぉぉぉおおおおお!!!! ”
なんて叫んでいると思うのだけど、メイドらしい笑みで覆い隠す姿は、素直に賞賛できる。
ラテス殿下の接待を経験して、色々と頑張った成果だろうか?
(おい、あのメイドの魔力、やばくないか!?)
(あぁ、竜の魔力とは明らかに違うから人間だとは思うが、俺たちじゃ束になっても瞬殺だ)
(ひっ! 長女がこっちを見た!!)
(かっ、神の加護を! 光竜の加護を! なにとぞ!)
ヒソヒソと話す兵士の声に振り向くと、その者たちの顔がすごい勢いで下を向いた。
そしてまた、別の方向からも声が聞こえてくる。
(公爵令嬢だ! あの長女って呼ばれていた方は、公爵令嬢のメアリ様だ。リアム殿下の護衛だった時に、見たことがある)
(!! それって、一方的に魔の森に捨てられた、って噂の!)
(あぁ、その御令嬢だ。速やかにリアム殿下から離れた方が良い)
(そっ、そうだな。巻き込まれたら ひとたまりもねぇ……)
兵士たちは、任務よりも自分の命を優先するようだ。
遠い場所に離れて片膝を付いて、メアリたちの動きを伺っているように見える。
視界の端の方に転がっているリアムも、今は気を失っているらしい。
「攻撃してくる者は……、いないみたいね」
「そうだね。1番お転婆だったお嬢ちゃんも、今は檻の中だから」
ドレイクに促されて視線を向けると、光の檻を握り締めた女性が、鋭い瞳で睨んでいた。
下唇を強く噛んだのか、口の端から滲む血が見える。
「メアリくんの知り合いなのかい?」
「いいえ、おそらくは初対面だと思うわよ?」
市民では買えないドレスを身に付けているから、たぶん貴族だとは思うのだけど、見覚えはなかった。
おそらくは、下級の騎士や男爵の家柄だろう。
「怨みを買った覚えも、ないわね」
頬に手を当てて悩んでみても、思い当たる節がなかった。
政敵であれば、その使用人の顔も覚えている。
おおかた、彼女個人の感情に由来する逆恨みか何かだろう。
そうあたりを付けたメアリが、ふと先程の言葉を思い起こして、ドレイクに視線を向ける。
「ドレイク殿下。転生者、って言葉に聞き覚えはあるかしら?」
「さっき、このお嬢ちゃんが言った言葉だね? あいにくと思い当たる節はないかな」
「そう、わかったわ。ドレイク殿下でも知らないとなると、造語か何かかしら?」
お前も転生者か、ってことは、少なくともこの女性は、転生者なのだろう。
意味もわからないのだけど、何かが引っかかる。
そんな思いを胸に、メアリが首を横に振った。
「……まぁ、良いわ。転生者に関しては、あとで文献でもあさることにして」
今はリリの弟くんが先ね。
そう言って、リリとドレイクに視線を向けた。
暴れていた女性なんかに、構っている時間はない。
「リリの弟くんがいる家は、どの辺かしら?」
「えっ? えぇっと……、あっちに10分くらい走ったら着きます」
「10分ね……」
往復で20分、弟くんの準備を含めると早くても30分。
兵たちに敵対する意志はなさそうだけど、リアムが目を覚ますと面倒な事になりかねない。
「わかったわ。私とドレイクはここに残るから、リリはマッシュと一緒に、弟くんを迎えに行ってもらえるかしら?」
「この中を、ですか……?」
なんて言葉と共に、リリが住宅地の方に視線を向けると、頭を下げていた人々が一斉に立ち上がって、左右に分かれた。
見る見るうちに、1本の道が出来上がる。
あははー、と笑いながら、リリが頬をかいてみせた。
「大丈夫みたいです。行ってきますね」
「えぇ、お願いね。マッシュ、リリの護衛をお願いするわ。敵意のある人物を近付けちゃダメよ?」
「キュァ!」
任せとけ! とばかりにドンと胸を叩いて、1体のマッシュがリリの前を行く。
「光の精霊くん、キミもリリくんの護衛を頼めるかな?」
ドレイクの手に光が集まり、小さな玉と成って、リリの頭上へと飛んで行った。
頭の周囲、肩のまわり、腰から足先へと回り続けて、最終的にはリリの背後を守るように動きを止める。
そうしてリリの背中が、人々の中へと消えていった。
ふと、周囲に目を向けると、誰しもが頭を下げて、メアリたちを眺めていた。
「古竜様が人の姿に。2人の娘様まで……。ありがたや、ありがたや……」
「古竜に魔法を撃つなんて、バカなマネを! あの娘の首だけじゃダメだ。平民たちの首も差し出すぞ」
「いや、動くな! 下手に刺激するんじゃねぇ!」
拝むように見上げる者や、怯えた瞳を向ける者。
右を見ても左を見ても、市民や貴族を問わずに、誰しもが地に伏していた。
立っているのは、人の姿に戻ったドレイクとメアリ、背後に控えるリリだけだ。
突然の状況ゆえに、リリの心の中では、
“ 次女ってなに! なんでそうなったのか知らないけど、絶対におかしいでしょ!? どうして私まで拝まれてるのぉぉぉぉおおおおお!!!! ”
なんて叫んでいると思うのだけど、メイドらしい笑みで覆い隠す姿は、素直に賞賛できる。
ラテス殿下の接待を経験して、色々と頑張った成果だろうか?
(おい、あのメイドの魔力、やばくないか!?)
(あぁ、竜の魔力とは明らかに違うから人間だとは思うが、俺たちじゃ束になっても瞬殺だ)
(ひっ! 長女がこっちを見た!!)
(かっ、神の加護を! 光竜の加護を! なにとぞ!)
ヒソヒソと話す兵士の声に振り向くと、その者たちの顔がすごい勢いで下を向いた。
そしてまた、別の方向からも声が聞こえてくる。
(公爵令嬢だ! あの長女って呼ばれていた方は、公爵令嬢のメアリ様だ。リアム殿下の護衛だった時に、見たことがある)
(!! それって、一方的に魔の森に捨てられた、って噂の!)
(あぁ、その御令嬢だ。速やかにリアム殿下から離れた方が良い)
(そっ、そうだな。巻き込まれたら ひとたまりもねぇ……)
兵士たちは、任務よりも自分の命を優先するようだ。
遠い場所に離れて片膝を付いて、メアリたちの動きを伺っているように見える。
視界の端の方に転がっているリアムも、今は気を失っているらしい。
「攻撃してくる者は……、いないみたいね」
「そうだね。1番お転婆だったお嬢ちゃんも、今は檻の中だから」
ドレイクに促されて視線を向けると、光の檻を握り締めた女性が、鋭い瞳で睨んでいた。
下唇を強く噛んだのか、口の端から滲む血が見える。
「メアリくんの知り合いなのかい?」
「いいえ、おそらくは初対面だと思うわよ?」
市民では買えないドレスを身に付けているから、たぶん貴族だとは思うのだけど、見覚えはなかった。
おそらくは、下級の騎士や男爵の家柄だろう。
「怨みを買った覚えも、ないわね」
頬に手を当てて悩んでみても、思い当たる節がなかった。
政敵であれば、その使用人の顔も覚えている。
おおかた、彼女個人の感情に由来する逆恨みか何かだろう。
そうあたりを付けたメアリが、ふと先程の言葉を思い起こして、ドレイクに視線を向ける。
「ドレイク殿下。転生者、って言葉に聞き覚えはあるかしら?」
「さっき、このお嬢ちゃんが言った言葉だね? あいにくと思い当たる節はないかな」
「そう、わかったわ。ドレイク殿下でも知らないとなると、造語か何かかしら?」
お前も転生者か、ってことは、少なくともこの女性は、転生者なのだろう。
意味もわからないのだけど、何かが引っかかる。
そんな思いを胸に、メアリが首を横に振った。
「……まぁ、良いわ。転生者に関しては、あとで文献でもあさることにして」
今はリリの弟くんが先ね。
そう言って、リリとドレイクに視線を向けた。
暴れていた女性なんかに、構っている時間はない。
「リリの弟くんがいる家は、どの辺かしら?」
「えっ? えぇっと……、あっちに10分くらい走ったら着きます」
「10分ね……」
往復で20分、弟くんの準備を含めると早くても30分。
兵たちに敵対する意志はなさそうだけど、リアムが目を覚ますと面倒な事になりかねない。
「わかったわ。私とドレイクはここに残るから、リリはマッシュと一緒に、弟くんを迎えに行ってもらえるかしら?」
「この中を、ですか……?」
なんて言葉と共に、リリが住宅地の方に視線を向けると、頭を下げていた人々が一斉に立ち上がって、左右に分かれた。
見る見るうちに、1本の道が出来上がる。
あははー、と笑いながら、リリが頬をかいてみせた。
「大丈夫みたいです。行ってきますね」
「えぇ、お願いね。マッシュ、リリの護衛をお願いするわ。敵意のある人物を近付けちゃダメよ?」
「キュァ!」
任せとけ! とばかりにドンと胸を叩いて、1体のマッシュがリリの前を行く。
「光の精霊くん、キミもリリくんの護衛を頼めるかな?」
ドレイクの手に光が集まり、小さな玉と成って、リリの頭上へと飛んで行った。
頭の周囲、肩のまわり、腰から足先へと回り続けて、最終的にはリリの背後を守るように動きを止める。
そうしてリリの背中が、人々の中へと消えていった。
42
あなたにおすすめの小説
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。
アズやっこ
恋愛
❈ 追記 長編に変更します。
16歳の時、私は第一王子と婚姻した。
いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。
私の好きは家族愛として。
第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。
でも人の心は何とかならなかった。
この国はもう終わる…
兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。
だから歪み取り返しのつかない事になった。
そして私は暗殺され…
次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました
Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。
そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。
「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」
そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。
荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。
「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」
行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に
※他サイトにも投稿しています
よろしくお願いします
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる