5 / 49
第1章 最低です
第5話 アンラッキー
しおりを挟む
翌朝、俺はベッドの上で目を開けた。
「…はっ! 制作!?」
世理はベッドから飛び起き、周りを見渡して少し思考を停止させる。そしてカーテンを開けると、まだ外は薄暗く、いつもとは違う懐かしい風景が目に映る。
「……実家か」
世理は安堵し、大きく息を吐く。
癖でつい身体が反応してしまった…。
世理はベッドから出て、頭を掻きながら部屋を出る。
あっちにいる時は常に制作について考えてたけど…こっちでは頭を空っぽにしてゆっくりしないと!
と、変な目標を掲げて世理は洗面所へと向かう。
ガラッ
「あ」
「……」
扉を開け、目の前にいたのは歯ブラシを口に加え、可愛い猫の絵柄が散りばめられているパジャマを着て、寝ぼけ眼でボーッとしている葵だった。
葵は目をシパシパさせながら、俺に目もくれず通り過ぎる。
葵の口元からは少し、白い歯磨き粉が垂れている。
…そうだった。こいつがいた。俺には頭を空っぽに出来ない出来事あったわ…。
世理は葵の背中を見ながら思った。
そして歯磨きを取り出すと、歯を勢いよく磨いていく。
昨日…最低なんて言われたしなぁ。これから仲良くして行くのは至難の業だよなぁ。
シャカシャカシャカシャカシャカ
何か俺と共通する趣味があったら会話が弾むんだろうけど…あんな感じだったら無いよなぁ。
葵は見た目からだが、どちらかと言うと陰キャの類に入るのだろう。俺も同じ陰キャだが、陰キャの中にも種類がある。
まずは、オタク系。アニメや漫画が好きな陰キャラ。コイツらは仲間を見つければ、凄いトーク力で仲間に引き込み、周りを圧倒する猛者どもである。しかし、特定の分野の情報量が凄いある代わりに、他の分野と異性とのトークの場合、著しく勢いが落ちるというピーキーな性能を持った人達だ。因みに俺はこれに入る。俺は昔からアニメや漫画が大好きなのである。
そして、サイレント系。1人を好む、一匹狼系陰キャラ。周りとの会話をめんどくさがり、1人でいた方が楽だと言うメンタル鬼バケモノども。授業中に2人組つくれーって言われても動じずに先生に相談しに行く、ポーカーフェイスな奴が多い。俺は葵は恐らくサイレント系と踏んでいる。こいつは休み時間とかは独自に好きな事をやってる事が多い。強いて言うなら本を読んでいるイメージか?
世理はそんな事を考えながら歯磨きを終えた後、顔を洗う。
タイプが違えば会話も難しい。誰であっても相性が良い、悪いがあるんだよなぁ。
バシャバシャバシャ
っと…タオルタオル…
颯太は目を瞑り、タオルを手探りで探す。確か洗面台の端に置いてあった筈だが、どこを触っても無い。
落としたか?
そう思った世理はしゃがみ込む。
むにゅ
「……つめてゃい」
そして寝ぼけている様な可愛い声が、静かなうちの洗面所で響く。
……え?
しゃがみ込む途中、それは世理の顔へと接触した。
此処にはいつもなら何もない。そう、何も置いてない筈。しかし、俺の顔には何か2つの玉の様な形をした柔らかい物が当たっていた。
…こんなラッキースケベ…現実で存在すんのかよ…。
まぁ、今の俺にとってはアンラッキースケベなんだが…。
世理は頭のすぐ真上から聞こえて来た声には、聞き覚えがあった。
「……何をしてるんですか?」
「…分からない」
俺は自分でも何をしているのか分からなかった。義妹の胸に濡れている顔を押し付けている義兄…いや、どう言う事?
俺、またもや失敗を犯す。
此処で素直に謝っておけば、こんな仕打ちは受けなかったかもしれない。精々罵倒で終わった筈だった…かもしれない。
ドスッ!!
葵の拳が無情にも、世理のみぞおちに綺麗に決まる。
相性、タイミング、どちらも間違いないと言い切れる。
最悪だ。
……2日連続義妹に殴られた件について。
世理は腹を抑えながら、床に蹲った。
「おはよー、葵ー」
いつもの路地。茶色のウェーブの掛かった髪を後ろで結び、ぱっちりとした二重の目が葵を捉えながら、同じ制服を着た活発そうな女子高生が、すぐ隣で挨拶を交わしてくる。
「…おはよ」
「あれ? 今日なんかあった? 朝練前なのに寝ぼけてないじゃん」
「色々あってね…」
葵は少し遠い目をしながら、親友である志賀《しが》 環《たまき》から目を離す。
「へ~! なんか面白そうな香りが漂ってるんだけど?」
環は葵の腕に捕まえ、目をキラキラとさせながら葵の顔を覗き込む。
「別に大した事ないから」
「え! 隠すなんて益々怪しい~!!」
「ほら、いいから早く朝練行こ」
「うわ~、誤魔化してる~」
葵は環から質問攻めを喰らいながら、朝練へと向かった。
「うっ……良いの食らったな…」
世理は葵に殴られた痛む腹をさすりながら、部屋で横になっていた。
本来なら朝ご飯を食べる予定だったが、急遽、腹痛に苛まれていて食べれる様な状態ではなかった。
「外でも散歩して気を紛らわせるか…?」
そう思っていた世理に、ある事が起きる。
ピリリリリ ピリリリリ
「ん?」
部屋に着信音が鳴り響く。
世理はポケットからスマホを取り出した。
「…はっ! 制作!?」
世理はベッドから飛び起き、周りを見渡して少し思考を停止させる。そしてカーテンを開けると、まだ外は薄暗く、いつもとは違う懐かしい風景が目に映る。
「……実家か」
世理は安堵し、大きく息を吐く。
癖でつい身体が反応してしまった…。
世理はベッドから出て、頭を掻きながら部屋を出る。
あっちにいる時は常に制作について考えてたけど…こっちでは頭を空っぽにしてゆっくりしないと!
と、変な目標を掲げて世理は洗面所へと向かう。
ガラッ
「あ」
「……」
扉を開け、目の前にいたのは歯ブラシを口に加え、可愛い猫の絵柄が散りばめられているパジャマを着て、寝ぼけ眼でボーッとしている葵だった。
葵は目をシパシパさせながら、俺に目もくれず通り過ぎる。
葵の口元からは少し、白い歯磨き粉が垂れている。
…そうだった。こいつがいた。俺には頭を空っぽに出来ない出来事あったわ…。
世理は葵の背中を見ながら思った。
そして歯磨きを取り出すと、歯を勢いよく磨いていく。
昨日…最低なんて言われたしなぁ。これから仲良くして行くのは至難の業だよなぁ。
シャカシャカシャカシャカシャカ
何か俺と共通する趣味があったら会話が弾むんだろうけど…あんな感じだったら無いよなぁ。
葵は見た目からだが、どちらかと言うと陰キャの類に入るのだろう。俺も同じ陰キャだが、陰キャの中にも種類がある。
まずは、オタク系。アニメや漫画が好きな陰キャラ。コイツらは仲間を見つければ、凄いトーク力で仲間に引き込み、周りを圧倒する猛者どもである。しかし、特定の分野の情報量が凄いある代わりに、他の分野と異性とのトークの場合、著しく勢いが落ちるというピーキーな性能を持った人達だ。因みに俺はこれに入る。俺は昔からアニメや漫画が大好きなのである。
そして、サイレント系。1人を好む、一匹狼系陰キャラ。周りとの会話をめんどくさがり、1人でいた方が楽だと言うメンタル鬼バケモノども。授業中に2人組つくれーって言われても動じずに先生に相談しに行く、ポーカーフェイスな奴が多い。俺は葵は恐らくサイレント系と踏んでいる。こいつは休み時間とかは独自に好きな事をやってる事が多い。強いて言うなら本を読んでいるイメージか?
世理はそんな事を考えながら歯磨きを終えた後、顔を洗う。
タイプが違えば会話も難しい。誰であっても相性が良い、悪いがあるんだよなぁ。
バシャバシャバシャ
っと…タオルタオル…
颯太は目を瞑り、タオルを手探りで探す。確か洗面台の端に置いてあった筈だが、どこを触っても無い。
落としたか?
そう思った世理はしゃがみ込む。
むにゅ
「……つめてゃい」
そして寝ぼけている様な可愛い声が、静かなうちの洗面所で響く。
……え?
しゃがみ込む途中、それは世理の顔へと接触した。
此処にはいつもなら何もない。そう、何も置いてない筈。しかし、俺の顔には何か2つの玉の様な形をした柔らかい物が当たっていた。
…こんなラッキースケベ…現実で存在すんのかよ…。
まぁ、今の俺にとってはアンラッキースケベなんだが…。
世理は頭のすぐ真上から聞こえて来た声には、聞き覚えがあった。
「……何をしてるんですか?」
「…分からない」
俺は自分でも何をしているのか分からなかった。義妹の胸に濡れている顔を押し付けている義兄…いや、どう言う事?
俺、またもや失敗を犯す。
此処で素直に謝っておけば、こんな仕打ちは受けなかったかもしれない。精々罵倒で終わった筈だった…かもしれない。
ドスッ!!
葵の拳が無情にも、世理のみぞおちに綺麗に決まる。
相性、タイミング、どちらも間違いないと言い切れる。
最悪だ。
……2日連続義妹に殴られた件について。
世理は腹を抑えながら、床に蹲った。
「おはよー、葵ー」
いつもの路地。茶色のウェーブの掛かった髪を後ろで結び、ぱっちりとした二重の目が葵を捉えながら、同じ制服を着た活発そうな女子高生が、すぐ隣で挨拶を交わしてくる。
「…おはよ」
「あれ? 今日なんかあった? 朝練前なのに寝ぼけてないじゃん」
「色々あってね…」
葵は少し遠い目をしながら、親友である志賀《しが》 環《たまき》から目を離す。
「へ~! なんか面白そうな香りが漂ってるんだけど?」
環は葵の腕に捕まえ、目をキラキラとさせながら葵の顔を覗き込む。
「別に大した事ないから」
「え! 隠すなんて益々怪しい~!!」
「ほら、いいから早く朝練行こ」
「うわ~、誤魔化してる~」
葵は環から質問攻めを喰らいながら、朝練へと向かった。
「うっ……良いの食らったな…」
世理は葵に殴られた痛む腹をさすりながら、部屋で横になっていた。
本来なら朝ご飯を食べる予定だったが、急遽、腹痛に苛まれていて食べれる様な状態ではなかった。
「外でも散歩して気を紛らわせるか…?」
そう思っていた世理に、ある事が起きる。
ピリリリリ ピリリリリ
「ん?」
部屋に着信音が鳴り響く。
世理はポケットからスマホを取り出した。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる