久々に実家に帰ったら、俺にはライオンの様に凶暴な義妹が出来ていました。父「ごめん、言うの忘れてた。俺再婚した^_^」俺「◯ね」

ゆうらしあ

文字の大きさ
8 / 49
第1章 最低です

第8話 相談

しおりを挟む
 俺は那由さんの手を借りて立ち上がり、手で尻についた砂を払い落とす。

「まぁ、俺、やる事あるんでなんもしないですけど」
「なっ!?」

 那由さんは一層、頬を膨らませる。

「…じゃあそのやる事に付き合ってあげる! 何するの!?」
「いや…那由さん、漫画描かなくていいんですか?」
「え、えーと…うん」

 那由が吃りながら答える。

 どうやらこの人…サボって此処に居るらしい。まぁ、いいか。付き合ってくれるならありがたい。

「これから商店街の方に向かおうと思ってるんですけど、いいですか?」
「い、良いわね! デート!?」
「違います。少し買いたい物があるんですよ」

 そう言うと俺は那由さんを連れて、商店街へと向かった。



 街の一角。午前中にも関わらず、そこは祭りの様に賑わっていた。天井はガラス張りで日光が降り注ぎ、その近くには何ヶ国かの旗が釣られている。

「世理くんとまた歩けるなんて…高校生の時に戻ったみたい!」

 那由さんは俺に無垢な笑顔を見せる。

 那由さんとは、俺が美術部へと入った時からの仲だ。

 あの時は那由さんと付き合うとは、全然思ってなかった。

 しかし聞いた話によると、部活が終わった後でも絵を描いてる俺の背中に、那由さんが段々と惹かれていったらしい。

 そして、高校2年の冬、告白して貰った。

 俺はそれを承諾し、俺が高校を卒業するまでその関係は続いた…。

「……さてと、何を買うか」
「無視!? って…え? もしかして何を買うか決めてないの?」
「…まぁ…此処に来たら考えようかな、と」

 とりあえずは、誠意の証としてお詫びの品だと思ったんだが…残念な事に葵の好きな物を何一つ知らない。

「……用事とは」

 那由さんが世理に聞こえるギリギリの声で呟く。

 そんな事言わなくても…こちとら義妹のお詫びの品を…いや、そうか。

 俺は遠くを見る那由さんの肩を叩く。

「ちょっと聞きたい事があるんですけど良いですか?」
「何!? 良いわよ!! 何でも聞いて!!」
「えぇ…」

 凄い勢いだな、こんなグイグイくる人だったっけ、この人。

 でも今は都合が良いか。

「もし、もしですよ? 俺が那由さんを怒らせたとしたら、何を貰ったら許しますか?」
「そうね、世理くんのすべ
「少し変えましょう」

 俺は那由さんの言葉を遮る。

 何故か今、遮らなければならないと本能が言っていた。

 ふぅ。じゃあ気を取り直して、

「俺じゃなくて、家族が那由さんを怒らせたとしら何を貰いたいですか?」

 聞くと、那由さんは何故か残念そうに眉を八の字変えると答えた。

「んー…そうね…私だったら画材を買って貰えたら許すかしら」

 そうだよな、普通は自分の好きな物とか、趣味の物とか貰ったら嬉しいんだろうけど…俺は葵の好きな色さえ知らない。

「えーと…他には?」
「うーん、マッサージ機とか? 最近肩凝りが酷くて…」

 うーん…マッサージ機か。どちらも漫画家が嬉しい物であって、高校生には必要なさそうな気がするな。

 んー…どうしたもんか。

 世理が唸っていると、

「…ちょっと、まどろこっしいんだけど? 誰を怒らせたの?」

 那由さんが眉を上げ、バレバレだと言わんばかりの目で此方を見て来る。

 流石に無理があったか。俺はこの人に上手く隠し事が出来た事が数回しかない。

「実は…」

「はぁ!? 義妹が出来た!? しかも昨日その義妹のパンツを
「声デカいですって!!」

 俺は急いで那由さんの後ろに回り込み、抱き寄せる様に口を手で塞ぐ。

「むっ!?! んふっ! んふふふ…!」

 那由は急激に顔を赤らめる。

 …何だが不気味な笑いが聞こえるが、我慢、我慢だ。

 俺は那由さんが落ち着くまで、ずっと口を両手で塞いだ。



 数分後。

「ふぅ…こういうのも悪くない…」
「何か言いました?」
「な、なんでもない!!」

 何だ? そんなに焦んなくても…それよりも、

「で、何か良い物ないですかね?」
「予算はどれくらい?」
「そうですね…まぁ3000円ぐらいには抑えたい気持ちはあります」
「はぁ、せち辛いわね。なら金額では表せられない物が良いわね。それに女の子がほぼ喜ぶ物…」
「そんなのあるんですか?」
「ふっ…私を誰だと思ってるのよ?高橋那由よ?」
「お、おぉ…!!」

 た、確かに!! 高橋那由は世界でも通用する名前だ! それを言われてしまっては納得するしかない!!

「そ、それは!?」
「それはね~…」




 夕方、18時頃。家の玄関。

「…何のつもりですか?」
「これが例の葵のお兄さん?」

「今朝はその、悪かった」

 俺は玄関で両手に収まるぐらいの箱を隣に置き、葵達を正座で出迎えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...