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第1章 最低です
第8話 相談
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俺は那由さんの手を借りて立ち上がり、手で尻についた砂を払い落とす。
「まぁ、俺、やる事あるんでなんもしないですけど」
「なっ!?」
那由さんは一層、頬を膨らませる。
「…じゃあそのやる事に付き合ってあげる! 何するの!?」
「いや…那由さん、漫画描かなくていいんですか?」
「え、えーと…うん」
那由が吃りながら答える。
どうやらこの人…サボって此処に居るらしい。まぁ、いいか。付き合ってくれるならありがたい。
「これから商店街の方に向かおうと思ってるんですけど、いいですか?」
「い、良いわね! デート!?」
「違います。少し買いたい物があるんですよ」
そう言うと俺は那由さんを連れて、商店街へと向かった。
街の一角。午前中にも関わらず、そこは祭りの様に賑わっていた。天井はガラス張りで日光が降り注ぎ、その近くには何ヶ国かの旗が釣られている。
「世理くんとまた歩けるなんて…高校生の時に戻ったみたい!」
那由さんは俺に無垢な笑顔を見せる。
那由さんとは、俺が美術部へと入った時からの仲だ。
あの時は那由さんと付き合うとは、全然思ってなかった。
しかし聞いた話によると、部活が終わった後でも絵を描いてる俺の背中に、那由さんが段々と惹かれていったらしい。
そして、高校2年の冬、告白して貰った。
俺はそれを承諾し、俺が高校を卒業するまでその関係は続いた…。
「……さてと、何を買うか」
「無視!? って…え? もしかして何を買うか決めてないの?」
「…まぁ…此処に来たら考えようかな、と」
とりあえずは、誠意の証としてお詫びの品だと思ったんだが…残念な事に葵の好きな物を何一つ知らない。
「……用事とは」
那由さんが世理に聞こえるギリギリの声で呟く。
そんな事言わなくても…こちとら義妹のお詫びの品を…いや、そうか。
俺は遠くを見る那由さんの肩を叩く。
「ちょっと聞きたい事があるんですけど良いですか?」
「何!? 良いわよ!! 何でも聞いて!!」
「えぇ…」
凄い勢いだな、こんなグイグイくる人だったっけ、この人。
でも今は都合が良いか。
「もし、もしですよ? 俺が那由さんを怒らせたとしたら、何を貰ったら許しますか?」
「そうね、世理くんのすべ
「少し変えましょう」
俺は那由さんの言葉を遮る。
何故か今、遮らなければならないと本能が言っていた。
ふぅ。じゃあ気を取り直して、
「俺じゃなくて、家族が那由さんを怒らせたとしら何を貰いたいですか?」
聞くと、那由さんは何故か残念そうに眉を八の字変えると答えた。
「んー…そうね…私だったら画材を買って貰えたら許すかしら」
そうだよな、普通は自分の好きな物とか、趣味の物とか貰ったら嬉しいんだろうけど…俺は葵の好きな色さえ知らない。
「えーと…他には?」
「うーん、マッサージ機とか? 最近肩凝りが酷くて…」
うーん…マッサージ機か。どちらも漫画家が嬉しい物であって、高校生には必要なさそうな気がするな。
んー…どうしたもんか。
世理が唸っていると、
「…ちょっと、まどろこっしいんだけど? 誰を怒らせたの?」
那由さんが眉を上げ、バレバレだと言わんばかりの目で此方を見て来る。
流石に無理があったか。俺はこの人に上手く隠し事が出来た事が数回しかない。
「実は…」
「はぁ!? 義妹が出来た!? しかも昨日その義妹のパンツを
「声デカいですって!!」
俺は急いで那由さんの後ろに回り込み、抱き寄せる様に口を手で塞ぐ。
「むっ!?! んふっ! んふふふ…!」
那由は急激に顔を赤らめる。
…何だが不気味な笑いが聞こえるが、我慢、我慢だ。
俺は那由さんが落ち着くまで、ずっと口を両手で塞いだ。
数分後。
「ふぅ…こういうのも悪くない…」
「何か言いました?」
「な、なんでもない!!」
何だ? そんなに焦んなくても…それよりも、
「で、何か良い物ないですかね?」
「予算はどれくらい?」
「そうですね…まぁ3000円ぐらいには抑えたい気持ちはあります」
「はぁ、せち辛いわね。なら金額では表せられない物が良いわね。それに女の子がほぼ喜ぶ物…」
「そんなのあるんですか?」
「ふっ…私を誰だと思ってるのよ?高橋那由よ?」
「お、おぉ…!!」
た、確かに!! 高橋那由は世界でも通用する名前だ! それを言われてしまっては納得するしかない!!
「そ、それは!?」
「それはね~…」
夕方、18時頃。家の玄関。
「…何のつもりですか?」
「これが例の葵のお兄さん?」
「今朝はその、悪かった」
俺は玄関で両手に収まるぐらいの箱を隣に置き、葵達を正座で出迎えた。
「まぁ、俺、やる事あるんでなんもしないですけど」
「なっ!?」
那由さんは一層、頬を膨らませる。
「…じゃあそのやる事に付き合ってあげる! 何するの!?」
「いや…那由さん、漫画描かなくていいんですか?」
「え、えーと…うん」
那由が吃りながら答える。
どうやらこの人…サボって此処に居るらしい。まぁ、いいか。付き合ってくれるならありがたい。
「これから商店街の方に向かおうと思ってるんですけど、いいですか?」
「い、良いわね! デート!?」
「違います。少し買いたい物があるんですよ」
そう言うと俺は那由さんを連れて、商店街へと向かった。
街の一角。午前中にも関わらず、そこは祭りの様に賑わっていた。天井はガラス張りで日光が降り注ぎ、その近くには何ヶ国かの旗が釣られている。
「世理くんとまた歩けるなんて…高校生の時に戻ったみたい!」
那由さんは俺に無垢な笑顔を見せる。
那由さんとは、俺が美術部へと入った時からの仲だ。
あの時は那由さんと付き合うとは、全然思ってなかった。
しかし聞いた話によると、部活が終わった後でも絵を描いてる俺の背中に、那由さんが段々と惹かれていったらしい。
そして、高校2年の冬、告白して貰った。
俺はそれを承諾し、俺が高校を卒業するまでその関係は続いた…。
「……さてと、何を買うか」
「無視!? って…え? もしかして何を買うか決めてないの?」
「…まぁ…此処に来たら考えようかな、と」
とりあえずは、誠意の証としてお詫びの品だと思ったんだが…残念な事に葵の好きな物を何一つ知らない。
「……用事とは」
那由さんが世理に聞こえるギリギリの声で呟く。
そんな事言わなくても…こちとら義妹のお詫びの品を…いや、そうか。
俺は遠くを見る那由さんの肩を叩く。
「ちょっと聞きたい事があるんですけど良いですか?」
「何!? 良いわよ!! 何でも聞いて!!」
「えぇ…」
凄い勢いだな、こんなグイグイくる人だったっけ、この人。
でも今は都合が良いか。
「もし、もしですよ? 俺が那由さんを怒らせたとしたら、何を貰ったら許しますか?」
「そうね、世理くんのすべ
「少し変えましょう」
俺は那由さんの言葉を遮る。
何故か今、遮らなければならないと本能が言っていた。
ふぅ。じゃあ気を取り直して、
「俺じゃなくて、家族が那由さんを怒らせたとしら何を貰いたいですか?」
聞くと、那由さんは何故か残念そうに眉を八の字変えると答えた。
「んー…そうね…私だったら画材を買って貰えたら許すかしら」
そうだよな、普通は自分の好きな物とか、趣味の物とか貰ったら嬉しいんだろうけど…俺は葵の好きな色さえ知らない。
「えーと…他には?」
「うーん、マッサージ機とか? 最近肩凝りが酷くて…」
うーん…マッサージ機か。どちらも漫画家が嬉しい物であって、高校生には必要なさそうな気がするな。
んー…どうしたもんか。
世理が唸っていると、
「…ちょっと、まどろこっしいんだけど? 誰を怒らせたの?」
那由さんが眉を上げ、バレバレだと言わんばかりの目で此方を見て来る。
流石に無理があったか。俺はこの人に上手く隠し事が出来た事が数回しかない。
「実は…」
「はぁ!? 義妹が出来た!? しかも昨日その義妹のパンツを
「声デカいですって!!」
俺は急いで那由さんの後ろに回り込み、抱き寄せる様に口を手で塞ぐ。
「むっ!?! んふっ! んふふふ…!」
那由は急激に顔を赤らめる。
…何だが不気味な笑いが聞こえるが、我慢、我慢だ。
俺は那由さんが落ち着くまで、ずっと口を両手で塞いだ。
数分後。
「ふぅ…こういうのも悪くない…」
「何か言いました?」
「な、なんでもない!!」
何だ? そんなに焦んなくても…それよりも、
「で、何か良い物ないですかね?」
「予算はどれくらい?」
「そうですね…まぁ3000円ぐらいには抑えたい気持ちはあります」
「はぁ、せち辛いわね。なら金額では表せられない物が良いわね。それに女の子がほぼ喜ぶ物…」
「そんなのあるんですか?」
「ふっ…私を誰だと思ってるのよ?高橋那由よ?」
「お、おぉ…!!」
た、確かに!! 高橋那由は世界でも通用する名前だ! それを言われてしまっては納得するしかない!!
「そ、それは!?」
「それはね~…」
夕方、18時頃。家の玄関。
「…何のつもりですか?」
「これが例の葵のお兄さん?」
「今朝はその、悪かった」
俺は玄関で両手に収まるぐらいの箱を隣に置き、葵達を正座で出迎えた。
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