久々に実家に帰ったら、俺にはライオンの様に凶暴な義妹が出来ていました。父「ごめん、言うの忘れてた。俺再婚した^_^」俺「◯ね」

ゆうらしあ

文字の大きさ
21 / 49
第3章 はぁ。

第21話 あの人の到来

しおりを挟む
「はぁ」

 私はご飯を食べ終わった後、部屋で大きく溜息を吐いた。

 何故こんな大きな溜息を吐いているのか。それには理由があった。

「色々やる事多過ぎて疲れた…」

 葵は自分の部屋で1人呟く。

 今日は朝から寝坊するし、文化祭実行委員で仕事が多いし、部活もある。それにママ達は帰って来れないし…何か最近良い事無いかも。

 葵はお風呂に入る事も忘れて、ベッドの上で眠りにつくのだった。



 *

「葵の奴…寝ちゃったのかな」

 俺は食器を洗う中、上を見上げる。
 ご飯を食べた後、いつもなら体操服等をさっさと洗濯機に入れ洗濯する筈だ。

 それなのに2階から戻って来ないと言う事は…起こすか? いや、俺が部屋に行ってもする事はないよな。

 疲れてるなら洗濯をしてあげたい所だが、年頃の義妹にそんな事出来ないし…。

「はぁ」

 大きく溜息を吐いた瞬間、


「世理く~ん! 遊びに来たわよ~!!」


 外から大声で俺の名前が呼ばれた。

 しかもこの声は…そう思って急いで手を拭き、靴を履いて外に出る。

「暇だから遊びに来ちゃった!」

 玄関前には目の下に大きな隈を作りながら、笑顔で仁王立ちしている那由さんの姿があった。

「那由さん…何時だと思ってるんですか」
「21時! まだ昼ね!」

 那由さんはグッと親指を立てる。

「…」

 ガッ

「那由さん足退けてください、扉が閉まらないじゃないですか」
「い、いやよ!! 退けたら閉めるじゃない!?」

 俺は何分か玄関で言い争いをした後、これでは近隣に迷惑が掛かってしまうと判断して家の中へと入れる。

「で? 何でこんな時間に?」
「今ちょうど一区切りついて…まぁそんな事はいいじゃない! おじゃまします!」
「ちょっと声大きいって! 妹が寝てるかもしれないんだから!」

 俺は那由さんに静かにする様に頼みながら、後を追う。

 那由さんはリビングのソファに座ると、恍惚とした表情で大きく息を吐いた。

「久々の世理くんの家ね…」
「顔ヤバいです、那由さん」
「う、うるさいわね。別にいいでしょ…」

 俺は少し呆れながらお茶を淹れる。

 那由さんが家に来るのは高校以来、つまり3年は経ってる…だけど、流石にその顔は引く。

 そんな事を思ってる俺を置いて、那由さんは部屋を歩き回り始める。

「…やっぱり変わったわね~」

 那由さんの視線の先には、観葉植物やぬいぐるみ等の置物があった。

「そりゃあ新しい家族が増えましたからね、しかも女性が2人も増えましたし」
「女性って…」
「え、何ですか?」

 俺はお茶を那由さんに手渡す。

「あ、ありがとう、別に何でもないわ。流石に妹さんに嫉妬はみっともないわよね…女の子でも女性よね…」
「何か言いました?」
「何も言ってないわ!!」

 那由さんはお茶を呷り、凄い熱がっている。随分と忙しい人だ。

 はぁ、誰かさんもこんなに分かりやすければ苦労はしないのにな。

 そんなありもしない事を思いながら小さく息を吐き、自分のお茶を啜る。

「…世理くん、何か悩み事?」
「……本当に何でそんな分かるんですか?」
「私って結構鋭いのよ!」
「それはないですけど」

 直ぐに切り返した俺に「何でよ!?」と驚いている那由さん。

 世理はそんな那由に、また葵について相談する事にしたのだった。



「ふ~ん…まぁ、年頃でしょうね」
「やっぱりそういうのってあるんですね」

 俺と那由さんは椅子に座りあいながら話していた。

「当たり前じゃない! 新しい環境に新しい家族、しかもその人と2人で暮らすなんて相当ストレスも溜まるでしょう!」

 なるほど…俺はそんなに気にしなかったが、女子高生からしたらそうだよな。

「どうすれば良いですかね?」

 那由さんに聞く。

「とりあえず妹さんにアドバイス! 何か行き詰まってる時は何もしないでゆっくり休息を取ってみる事も大事なのよ!」
「なるほど…じゃあ俺は何を
「世理くんは気を遣い過ぎ!! 大事なのは分かるけど、あまり気にし過ぎてもその子の為にならないし、何よりウザい!! 私も兄がいるから妹さんの気持ち分かるわ!!」

 …また抉られるのか。

 話を遮る様に話す那由さんに、俺は少し胸を抑えながら頷く。

「…分かりました。伝えてみます」

 そこで突然、那由さんの漫画『空白の渇望』のオープニング曲が流れ、那由さんが携帯を手に取る。

「げ…もしもし…えー…はい…分かりました」

 タン

「もしかして編集さんですか?」
「えぇ…今から直さないといけないみたい」

 那由さんの周りの空気がゲンナリとしている事が感じ取れる。

「まぁ…仕事ですから頑張って下さい」
「…」
「どうしたんですか?」

 送り出そうと那由さんの背中を押すが、那由さんは抵抗するかの様に力を入れている。

「那由さん?」
「…もう少し居たい気も
「今ならタクシー乗り場まで送りま
「さっ! 早く帰るわよ!!」

 そうして俺は、那由さんをタクシー乗り場まで見送った。

「じゃ、お仕事頑張って下さい」
「えぇ、そっちも色々頑張りなさい。あ、あと年頃の女の子は洗濯して貰うのは嫌な筈。でも結局困るのは自分なのだから、やってあげるのが"愛"ね! 例え自分が怒られるとしてもよ!」
「分かりました…あ、その前にちょっといいですか?」

 世理は外でアイディアが出た時用に持っていた、ペンとメモ帳の紙を那由に渡した。

「何?」
「実は妹、"空白の渇望"好きみたいなんです。だからサインでもと」
「へー! それは嬉しいわ!」

 那由さんは嬉々としながらペンを走らせ、葵ちゃんへ、と書き俺に紙を返した。

「じゃあ今度こそ、またね!」

 那由さんはいつも通り力強い笑みを浮かべながら、自宅兼仕事場である実家へと帰って行った。

 ようやく嵐が過ぎ去り、俺は貰ったアドバイスに希望を見出しながら、帰路へと立つのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...