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第3章 はぁ。
第24話 頼み事
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「いただきます」
「…いただきます」
朝、俺達はいつもと変わらず、ご飯を食べ進める。
今日の葵は昨日よりも眠そうだ。
恐らく、テーブルの上のおにぎりが無かった事から、夜食を食べてくれるぐらい深夜まで頑張っていたのだろう。
「…ありがとう」
食事の途中、葵がボソッと呟く。
「…え、何か言った?」
「…」
俺の問い掛けに答える事なく、葵は朝ご飯を食べ続ける。
ハッキリ言うが、俺は難聴系主人公ではない。さっき葵が言っていた事はハッキリと聞こえている。
しかし、ここで話しかけて葵の機嫌を損ねたら碌な事にならないと考え、俺はこんな難聴系主人公を演じている。
(那由さん…これでいいんだよな…)
俺は何も無い空中に問い掛けながら、食事を進めたのだった。
「いってきます」
「おー、いってらっしゃい」
葵がいつも通り無表情で家から出る。
しかし、最近の声よりも少し大きな声で挨拶をして行った。
那由さんのサイン、夜食が効いたのだろうか。
そんな事を思っていると。
バタンッ
「そうだ! 聞き忘れてました!!」
葵が扉を勢い良く開け、家へと帰ってくる。
随分と早いお帰りだ。
「なんだ?」
俺は至って冷静を保ちながら葵と接する。
そんな俺に、少し違和感を覚えたのか眉を顰めながら葵は言う。
「あの…あ、いや、その少し聞きたい事があるんですけど…美術大学に通ってるんですよね?」
「ん? あ、あぁ」
それがどうしたんだ?
「…」
葵は目を閉じて一度大きく深呼吸すると、カッと目を開いた。
「す、少し手伝って欲しい事があるんですけど…」
表情とは裏腹に、葵の口からとても小さな声が俺の鼓膜を震わせた。
キーン コーン カーン コーン
「…おぉ。久々だな、この音」
その日の17時頃。俺はその前で仁王立ちしていた。
「我が母校に久々の帰還ってとこか」
そう。俺は今校門の前に居た。
葵からの頼みで此処に来た俺は、久々の母校だし、高校生という勢いある若者たちが何か新しい刺激をくれるかもしれないと言う少しの期待を込めて、葵の頼みを快諾していた。
「よし、取り敢えずは職員室行って先生にでも挨拶しに行くか!」
「ちょっとあの人ーー」
「うん。凄いーー」
おっと…マズイマズイ。
俺は下校途中の女子生徒から視線を感じて、足早に昇降口へと向かった。
*
「環はこっち手伝ってくれる?」
「おっけー! 任せなさーい!!」
私達は教室で文化祭の準備、もといメイド喫茶の衣装作りをしていた。
「可愛い感じにしたいからフリル一杯にしようか」
「ふんふんふん、そうね! そうしようか」
環は元気一杯な何処か陽気だが、それと同時に友達想いで何でもこなせるオールラウンダー。
それにーー
「ほほいっと…」
私とは違って裁縫も出来るし、女子力が高い。
「こんな感じ?」
「うん。ありがとう」
こんなに頼りになる人をなんで私は頼ろうとしなかったんだろう。
「よし、じゃあ私はこっち準備してるから、環はそっちもうちょっと頑張ってくれる?」
「りょーかい!」
ガラガラガラ
そんな時、教室の戸が開く音が聞こえて私は振り返った。
時間ではそろそろ来る時間。あの人が来たのか、そう思った。
「え…」
「あ」
しかし視線を向けるとそこには、私と同じ文化祭実行委員の高波 流星くんが気まずい顔で此方を見ていたのだった。
「…いただきます」
朝、俺達はいつもと変わらず、ご飯を食べ進める。
今日の葵は昨日よりも眠そうだ。
恐らく、テーブルの上のおにぎりが無かった事から、夜食を食べてくれるぐらい深夜まで頑張っていたのだろう。
「…ありがとう」
食事の途中、葵がボソッと呟く。
「…え、何か言った?」
「…」
俺の問い掛けに答える事なく、葵は朝ご飯を食べ続ける。
ハッキリ言うが、俺は難聴系主人公ではない。さっき葵が言っていた事はハッキリと聞こえている。
しかし、ここで話しかけて葵の機嫌を損ねたら碌な事にならないと考え、俺はこんな難聴系主人公を演じている。
(那由さん…これでいいんだよな…)
俺は何も無い空中に問い掛けながら、食事を進めたのだった。
「いってきます」
「おー、いってらっしゃい」
葵がいつも通り無表情で家から出る。
しかし、最近の声よりも少し大きな声で挨拶をして行った。
那由さんのサイン、夜食が効いたのだろうか。
そんな事を思っていると。
バタンッ
「そうだ! 聞き忘れてました!!」
葵が扉を勢い良く開け、家へと帰ってくる。
随分と早いお帰りだ。
「なんだ?」
俺は至って冷静を保ちながら葵と接する。
そんな俺に、少し違和感を覚えたのか眉を顰めながら葵は言う。
「あの…あ、いや、その少し聞きたい事があるんですけど…美術大学に通ってるんですよね?」
「ん? あ、あぁ」
それがどうしたんだ?
「…」
葵は目を閉じて一度大きく深呼吸すると、カッと目を開いた。
「す、少し手伝って欲しい事があるんですけど…」
表情とは裏腹に、葵の口からとても小さな声が俺の鼓膜を震わせた。
キーン コーン カーン コーン
「…おぉ。久々だな、この音」
その日の17時頃。俺はその前で仁王立ちしていた。
「我が母校に久々の帰還ってとこか」
そう。俺は今校門の前に居た。
葵からの頼みで此処に来た俺は、久々の母校だし、高校生という勢いある若者たちが何か新しい刺激をくれるかもしれないと言う少しの期待を込めて、葵の頼みを快諾していた。
「よし、取り敢えずは職員室行って先生にでも挨拶しに行くか!」
「ちょっとあの人ーー」
「うん。凄いーー」
おっと…マズイマズイ。
俺は下校途中の女子生徒から視線を感じて、足早に昇降口へと向かった。
*
「環はこっち手伝ってくれる?」
「おっけー! 任せなさーい!!」
私達は教室で文化祭の準備、もといメイド喫茶の衣装作りをしていた。
「可愛い感じにしたいからフリル一杯にしようか」
「ふんふんふん、そうね! そうしようか」
環は元気一杯な何処か陽気だが、それと同時に友達想いで何でもこなせるオールラウンダー。
それにーー
「ほほいっと…」
私とは違って裁縫も出来るし、女子力が高い。
「こんな感じ?」
「うん。ありがとう」
こんなに頼りになる人をなんで私は頼ろうとしなかったんだろう。
「よし、じゃあ私はこっち準備してるから、環はそっちもうちょっと頑張ってくれる?」
「りょーかい!」
ガラガラガラ
そんな時、教室の戸が開く音が聞こえて私は振り返った。
時間ではそろそろ来る時間。あの人が来たのか、そう思った。
「え…」
「あ」
しかし視線を向けるとそこには、私と同じ文化祭実行委員の高波 流星くんが気まずい顔で此方を見ていたのだった。
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