久々に実家に帰ったら、俺にはライオンの様に凶暴な義妹が出来ていました。父「ごめん、言うの忘れてた。俺再婚した^_^」俺「◯ね」

ゆうらしあ

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第4章 …ありがとう

第34話 そして(過去)

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 とんでもない才能の者には、凡人などただの路傍の石ころに過ぎない。

「世理! 聞いて!! 私連載する事になったの!!」

 路傍の石は才能ある者を見上げるのみ。

「おー! 本当ですか? おめでとうございます!!」

 表には決して出さない"妬み"…その感情に心が支配される。

「ふっふっふっ!! 見てなさいよ!! 私はこれで天下を取るわ!!」

 そんな自分が、本当に嫌いだった。





 那由さんの連載が始まって1年、そして俺が高校3年生の秋だった。

「那由さん、俺達別れましょう」

 俺は、卒業後に美術部の先生として来てた那由さんに向かって言った。


 ガタンッ


「……何言ってるの? 世理?」

 美術室の中には俺達2人だけ。俺が残って絵を描いている時、俺が唐突にそれを言うと那由さんは、座っていた椅子から勢い良く立ち上がった。

「そのままの意味です。彼氏彼女から、ただの先輩後輩になるって
「そう言うのを聞きたいんじゃない!!」

 俺の言葉を遮り、那由さんが叫ぶ。

「…ただ、先輩の事が好きじゃなくなった。それだけですよ」

 俺は絵を描き続ける。

「何で…私なんかした…? 昨日だって一緒に帰ったし…普通に手を振って別れた。それにこの前には…」
「……」
「謝る…何か悪い所があるなら直すよ…だから…!!」
「那由さんに飽きたんですよ。那由さん、元は色んな経験がしたいって話でしたよね? 別にそれだと別れても問題ないじゃないですか?」
「それは…そうだけど…」

 分かってる…分かってるんだ。

「じゃあ、俺達はこれからただの先輩後輩ですね」
「ま、待って!! 私は納得してない!! な、何で飽きたのか教えて貰える!? これから何か役に立つかもだし!!」

 この必死さ…痛い程に貴方の気持ちが伝わって来る。

 でも、もう遅いんだ。

「これを聞いた所で何の役にも立ちませんよ」

 そう言って俺は那由さんに目を向ける事なく、美術室から出た。


 そして俺は那由さんとそれ以上会う事なく卒業し、何も言わずにロンドンの大学へと入学した。

 俺が那由さんと別れた理由は、那由さんと付き合っている自分の事がーー

 いや。

 彼女だと言うのにも関わらず、成功した那由さんの事を妬む、酷く醜い彼氏で、自分自身それを認められなかったから。

 至極単純な事だと思うだろうか。
 そんな理由で、と訝しむだろうか。
 彼女の努力して得た未来を馬鹿にしていると怒るだろうか。


 ならーー


 それを言ったら俺も努力して来た。
 結果を残すと言う、至極単純な事が俺には出来なかったというデカい一言が付くが。

 あの人が付き合わないかと聞いて来た時、俺は嬉しかった。いや、今だから恥ずかしげも無く言えるが、とてつもなく嬉しかった。
 出会い方はあまりよくなかったが、一緒に過ごしてるうちに俺は那由さんへと惹かれていったのだ。

 いつでも明るく、今を最大限に楽しんでいるあの人の笑顔に…俺は少なからず助けられた。

 ただーー

「経験をしたい」

 告白された時のその一言に、俺は自分の想いを押し殺してしまった。

 いつかは言おうと思っていた。

 その言葉に、俺は心の何処かに引っ掛かりを覚え、将来の事、那由さんの事を頭から出そうとガムシャラに練習を頑張った。

 その結果ーー。

 那由さんが成功した。




 俺はそれに耐えられなかった。
 何故那由さんが、いつも俺の後ろで項垂れている高橋さんが、何でアイツがーー…

 そんな事思ったが…誰にも相談する訳にもいかなかった。そんな事を思う自分がとてつもなく嫌で…

 だから俺は海外の有名大学へと行った。

 あの人の名前が一時的にでも、聞こえなくなる、そんな所へ。


 *

 まぁただーー


「"嫌い"とは言えなかったなぁ」

 俺は家のリビングに寝転がりながら、大きく息を吐いた。

 まぁ今回は"大嫌い"って言われてしまったけど。それほど、あの別れ方を恨んでるって事なのかなぁ…会った時は忘れてる様な雰囲気だったのになぁ。


 ガチャ


 そんな時扉が開く音が聞こえ、俺は起き上がった。

「ただいま…」
「あぁ、おかえり」

 だけど今は自分や那由さんの事よりも…こっちの方で手一杯だな。

 俺は少し苦笑いを浮かべながら義妹を迎え入れた。
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