久々に実家に帰ったら、俺にはライオンの様に凶暴な義妹が出来ていました。父「ごめん、言うの忘れてた。俺再婚した^_^」俺「◯ね」

ゆうらしあ

文字の大きさ
36 / 49
第4章 …ありがとう

第36話 フェイズ3

しおりを挟む
「ありがとう。スッキリした」
「寝るなら寝ると言って下さい」

 時刻は20時を過ぎた頃。俺は葵と向かい合って座り、葵の作ったカレーを食べていた。

 膝枕をされて目を閉じた俺はいつの間にか眠っていたらしく、もう2時間程時間が経っていた。

「どうですか? 美味しいですか?」
「美味しい」
「ふふっ…そ、そうですか」

 偽りなく、葵の作ったカレーは美味しい。でもそんな反応が返って来るとは思わなかったな…。

「…よし。これでフェイズ2までは成功…でもこれからはちょっと…」

 葵は何処か口角を上げて、不気味な笑みを浮かべたり、眉間に皺を寄せたりを繰り返している。ハッキリ言って意味が分からないが…

「ご馳走様。じゃ、俺風呂入って来るな」

 一先ずは風呂だ。急に葵が膝枕なんてして来るから、変な汗をかいてしまった。

「は…はい…」

 俺は食器をキッチンへと運ぶと、そのままリビングを後にして着替えを部屋から持ち、風呂へと向かった。



「はぁー」

 ザァーッ 

 俺は頭からシャワーを浴びて項垂れる。

 那由さんには"大嫌い"と言われ、葵には膝枕をされた上に料理まで作って貰った。

 恐らくーー

 どちらもが原因で起こった出来事だ。那由さんとは別れた時の事を思い出させ、葵には大学の事を話している時冷たく接してしまった。

「…大学に行かなかったら…こうはなってなかった」

 絵から離れ、何処かの企業に就職して、那由さんともなんだかんだで上手く行ったのかもしれない。

 今となってはたられはでしかない話だが。


 キュッ

 シャワーの蛇口を閉めると、石鹸を手に取る。

 これ以上ウダウダしてても仕方がない。早く風呂から上がって絵を描こう、そう思った時だった。


「あ、あの…」

 風呂場の曇りガラスに人影が映る。

「葵か? どうした?」
「いえ、その…シャンプーってありましたっけ?」
「ん? あぁ、この青の容器のか?」

 何処かオシャレなシャンプーが置いてある。中心には赤いバラが描かれていて、俺の使うやっすいシャンプーとは違う高級感を醸し出している。

 俺はそれを手に取ると、容器を振り、中身の確認をする。

「いや…まだ入ってるぞ」

 ガラガラガラッ

「失礼します…」
「え……」

 背後から扉の開閉の音、そしてさっきまで少し篭っていた葵の声が風呂場へと響き渡った。

 今の俺は1人で風呂に入っていた。勿論タオルなんて持っていない。

 そう。つまりスッポンポンな訳だ。



「いやいやいや!!? な、何で入って来てんだよ!!?」

 俺は咄嗟に股間を手で隠し、お尻丸出しの姿で葵へと叫んだ。

 後ろにはバスタオルを巻いた葵の姿があった。女性らしいラインが明確に出ており、俺は自然とそこに釘付けになっていた。

「あ、そ、その…か、身体をす、すみ…!」

 顔は赤らめて目は伏せている葵は、途切れ途切れに呟く。

 それは風呂場で反響し、俺の耳に緊張しているという感情がダイレクトに伝わって来ていた。


「す…隅…」

 羞恥と緊張の感情が織り混ざった様なそんな表情だ。そりゃあそうだろう。家族とは言え裸同然の姿を見せているんだ。そんな顔にもなる。

「隅々まで洗おうか……?」
「……ん?」

 何か今…葵が何か言ったような…

「あ、葵」

 そう思って、一度聞こうと思ったその時だった。

「な、なんでもありません!!!」


 ガラガラガラッ


 葵はそう言うと、大きな声で叫び風呂場から出て行った。


 ドタバタッ


 そして大きな物音を立てる。着替えでもしてるのか、布が擦れてるような、そんな音が聞こえる。


「こんなの出来る訳ないでしょーっ!!?」

 誰に言ってるのか、脱衣所から出たであろう葵の少し離れた所から響く声に俺は目を閉じた。


「義妹…妹…家族…」


 俺はまたシャワーの蛇口を捻ると、今度は冷水を頭から被り、冷静さを取り戻すのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...