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第5章 なんでもない!
第42話 失敗はするもの
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俺は、そのまま神輿の準備をする葵達を見ることになった。まぁ、ただ見ててもつまらないので、暇つぶしに葵の勇姿を写真に納めてはいるが。
む。
「神原さーん。これってどうすれば良いかな?」
「あ、それはーー」
パシャッ
スマホをスクロールして、撮った写真を確認する。
葵がクラスの皆んなに指示を出している写真。我ながら良い写真である。
俺はすぐポインを開くと、葵の勇姿を両親に送りつける。それにすぐ返信が返ってきて、もっと頂戴との催促が来る。
椿先生からの頼み事って言うのも、美術の授業の参考に文化祭の風景を撮っている…という事にしよう。
決して盗撮ではないという言い訳を作りながら、俺が葵の写真を撮っていると、遂に葵達のクラスの神輿が姿を現した。
「へぇ…中々凄いな…」
お化けがモチーフとされているのか、血のりがいっぱいに描かれたそれは、他の神輿よりも異質な雰囲気を放っている。
高校生の中でなら、中々に良い作品なのではないだろうか。
「どうですか? 一応、これ俺が提案したデザインなんです」
「高波君が?」
「はい」
高波君は嬉しそうに笑顔で答えた。
ハッキリ言って意外だ。もっと王道なデザインとかを作るイメージだったんだけど。
「此処の部分は段ボールを細く切って表現してーー」
「へー、上手くやるもんだな」
俺は高波君の話を聞きながら感心し、頷きを返した。
普通の高校生が神輿のデザインをしたんだ。これぐらい出来たら上出来だろう。
しかしーー
「いや、俺なんて大した事ないですよ! 卒業生なんですけど、画期的なデザインをした神輿を作った人とかが居て……その人と比べたら天と地の差がありますよ」
「へ、へぇ。そうなのか」
恐らく、恐らくだが、高波君が言っているのは俺の事だ。確か俺が高3の時に作った神輿が新聞に取り上げられたから、多分それだろう。
あの時は色々あって、書き殴ったデザインを採用されたが、細かい所はあまりよく覚えていない。
神輿を作ったのは良い経験にはなったけど、ただそれだけだった。あの時は那由さんと色々…いや、今はそんな事を考えても仕方ないな。
「流星!!」
そんな時、クラスメイトであろう男子が此方へ駆け寄って来る。
「ん? どうした?」
「た、大変だ!! 俺達の神輿の足の滑車が壊れてる!!」
この学校では、神輿を担ぐのではなく、引いて商店街を練り歩く。
足の滑車が壊れたとなると…
「ほ、本当か!?」
「あぁ!! どうする!?」
「と、取り敢えずは神原さんにも相談しよう…」
高波君達は、葵達の元まで走って行った。
俺はそれを追う様に、少し早歩きで追ったのだった。
「それは……」
「ど、どうする? 先生に相談する?」
高波君に相談された葵は、分かりやすく顔を青くしていた。
「文化祭での犯罪、校則に繋がるトラブル以外は自分達で何とかするというのが、この学校での決まり。だから先生に相談してもあまり意味は無いかも……」
そう。葵の言う通りだ。
ウチの学校は、基本的に自由。卒業後の進路は親身になって聞いてくれるが、それ以外はうんともすんとも言わない。
この文化祭でも同様だ。
だけど、葵は少し焦り過ぎかもしれない。
「葵…ちょっといいか?」
「…まずはどうにかして直さないといけない。何か案のある人はドンドン言って」
葵は本当に焦っている様で、俺の方を見向きもしない。それ程までに追い詰められてるって事か。
「葵のお兄さん、どうしたんですか?」
そんな時、背後から環ちゃんが話しかけて来る。
「あ…環ちゃんだっけ?」
「はい」
「あのさ、ヘアゴムとか持ってる?」
***
「あまり手伝うつもりはなかったんだけどな…」
失敗で終わるのも経験だ。
だけど、苦く苦しい思い出なんて少ない方が良いに決まっている。
失敗はした。
だが、その失敗をこれからどうするかが1番大事だ。自分1人でどうにかするのか、それとも誰かに助けて貰ってやるのかでは、意味は大いに変わってくる。
一人で淡々と、頭を抱えながら自力でやり遂げるのか。
和気あいあいと、友と試行錯誤してやっていくのか。
どちらも一長一短だ。
俺は前者を選んだ。
だが、前者を選んだ俺だからこそ、他の者には後者を選んで欲しい。
一人は孤独だ。孤独は寂しい。マイナスの方向へと何度も考えが傾いていく。
だが複数人だったら、どちらかが気持ちを落ち込ませたとしても、もう一人がそれを支えれば良い。マイナス方向へと思考が陥っても、もう一人がそれを上回るプラス思考へと持っていけばそれでいいのだ。
一人と二人では、圧倒的な違いがある。
一人でやり遂げる事は、その者の成長に大いな影響を与えるだろう。
複数人でやり遂げた時は、その者の成長にはあまり影響を与えない可能性があるかもしれないが……
それだけの事だ。
根気も、孤独さえも…支え合える。
「ちょっと良いかな」
俺は皆が戸惑う中、前に一歩踏み出し、葵の肩を掴んだ。
神輿を持って出るまでに時間はまだ30分もある。
「何ですか。今忙しいんですけど
これは試験みたいなものではあるが、明確な合格基準はない。
皆が楽しめるならそれは成功《ごうかく》と言える筈だ。
「なら…簡単だ」
俺はヘアゴムで髪を束ねた。
む。
「神原さーん。これってどうすれば良いかな?」
「あ、それはーー」
パシャッ
スマホをスクロールして、撮った写真を確認する。
葵がクラスの皆んなに指示を出している写真。我ながら良い写真である。
俺はすぐポインを開くと、葵の勇姿を両親に送りつける。それにすぐ返信が返ってきて、もっと頂戴との催促が来る。
椿先生からの頼み事って言うのも、美術の授業の参考に文化祭の風景を撮っている…という事にしよう。
決して盗撮ではないという言い訳を作りながら、俺が葵の写真を撮っていると、遂に葵達のクラスの神輿が姿を現した。
「へぇ…中々凄いな…」
お化けがモチーフとされているのか、血のりがいっぱいに描かれたそれは、他の神輿よりも異質な雰囲気を放っている。
高校生の中でなら、中々に良い作品なのではないだろうか。
「どうですか? 一応、これ俺が提案したデザインなんです」
「高波君が?」
「はい」
高波君は嬉しそうに笑顔で答えた。
ハッキリ言って意外だ。もっと王道なデザインとかを作るイメージだったんだけど。
「此処の部分は段ボールを細く切って表現してーー」
「へー、上手くやるもんだな」
俺は高波君の話を聞きながら感心し、頷きを返した。
普通の高校生が神輿のデザインをしたんだ。これぐらい出来たら上出来だろう。
しかしーー
「いや、俺なんて大した事ないですよ! 卒業生なんですけど、画期的なデザインをした神輿を作った人とかが居て……その人と比べたら天と地の差がありますよ」
「へ、へぇ。そうなのか」
恐らく、恐らくだが、高波君が言っているのは俺の事だ。確か俺が高3の時に作った神輿が新聞に取り上げられたから、多分それだろう。
あの時は色々あって、書き殴ったデザインを採用されたが、細かい所はあまりよく覚えていない。
神輿を作ったのは良い経験にはなったけど、ただそれだけだった。あの時は那由さんと色々…いや、今はそんな事を考えても仕方ないな。
「流星!!」
そんな時、クラスメイトであろう男子が此方へ駆け寄って来る。
「ん? どうした?」
「た、大変だ!! 俺達の神輿の足の滑車が壊れてる!!」
この学校では、神輿を担ぐのではなく、引いて商店街を練り歩く。
足の滑車が壊れたとなると…
「ほ、本当か!?」
「あぁ!! どうする!?」
「と、取り敢えずは神原さんにも相談しよう…」
高波君達は、葵達の元まで走って行った。
俺はそれを追う様に、少し早歩きで追ったのだった。
「それは……」
「ど、どうする? 先生に相談する?」
高波君に相談された葵は、分かりやすく顔を青くしていた。
「文化祭での犯罪、校則に繋がるトラブル以外は自分達で何とかするというのが、この学校での決まり。だから先生に相談してもあまり意味は無いかも……」
そう。葵の言う通りだ。
ウチの学校は、基本的に自由。卒業後の進路は親身になって聞いてくれるが、それ以外はうんともすんとも言わない。
この文化祭でも同様だ。
だけど、葵は少し焦り過ぎかもしれない。
「葵…ちょっといいか?」
「…まずはどうにかして直さないといけない。何か案のある人はドンドン言って」
葵は本当に焦っている様で、俺の方を見向きもしない。それ程までに追い詰められてるって事か。
「葵のお兄さん、どうしたんですか?」
そんな時、背後から環ちゃんが話しかけて来る。
「あ…環ちゃんだっけ?」
「はい」
「あのさ、ヘアゴムとか持ってる?」
***
「あまり手伝うつもりはなかったんだけどな…」
失敗で終わるのも経験だ。
だけど、苦く苦しい思い出なんて少ない方が良いに決まっている。
失敗はした。
だが、その失敗をこれからどうするかが1番大事だ。自分1人でどうにかするのか、それとも誰かに助けて貰ってやるのかでは、意味は大いに変わってくる。
一人で淡々と、頭を抱えながら自力でやり遂げるのか。
和気あいあいと、友と試行錯誤してやっていくのか。
どちらも一長一短だ。
俺は前者を選んだ。
だが、前者を選んだ俺だからこそ、他の者には後者を選んで欲しい。
一人は孤独だ。孤独は寂しい。マイナスの方向へと何度も考えが傾いていく。
だが複数人だったら、どちらかが気持ちを落ち込ませたとしても、もう一人がそれを支えれば良い。マイナス方向へと思考が陥っても、もう一人がそれを上回るプラス思考へと持っていけばそれでいいのだ。
一人と二人では、圧倒的な違いがある。
一人でやり遂げる事は、その者の成長に大いな影響を与えるだろう。
複数人でやり遂げた時は、その者の成長にはあまり影響を与えない可能性があるかもしれないが……
それだけの事だ。
根気も、孤独さえも…支え合える。
「ちょっと良いかな」
俺は皆が戸惑う中、前に一歩踏み出し、葵の肩を掴んだ。
神輿を持って出るまでに時間はまだ30分もある。
「何ですか。今忙しいんですけど
これは試験みたいなものではあるが、明確な合格基準はない。
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「なら…簡単だ」
俺はヘアゴムで髪を束ねた。
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