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第4章 お祭り

第55話 へい、らっしゃい!

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「良かった……本当に」
「ひなおねーちゃん、くるしいよー」


 俺達は屋台に戻って来ていた。比奈は涙目でメマに抱き着いている。
 比奈は一応屋台に居たみたいだが、心配だったのか着いた時は屋台の周りをグルグルと歩き回っていた。

 1人で待ってて気が気でなかったんだろう。


「メマ様……ッ!!」


 数分前に比奈と同じ事を終わらせた凪さんは、未だに涙がちょちょ切れている。やれやれ、泣き虫が多くて困るぜ。今度何処かに行く時はおとーちゃんを連れてくんだぞ……ズズッ。

 ーーとは言ったものの、メマの話によれば今回の話は俺が原因だったらしい。メマの事を勝手に悪いと思い込んでしまい、真っ先に頭を下げてしまった事から、納得がいかなかったんだと言う。

 今や俺は店の責任者と同時に、誰かさんの親でもあるみたいだからな。1つ1つちゃんと考えてから行動しないといけないな……。


 ーーまぁ、それはさておきだ。


「君はメマの何なのかな?」


 俺は隣に居る少年の肩を掴んだ。メマと同じぐらいの身長、黒髪で如何にも悪ガキそうな見た目をしている。メマは俺が守る。


「しょうただよー! おちこんでるときに、いっしょにいてくれたの!!」
「あ、えっと、よろしくおねがいします」


 しょうたなる、少年は礼儀正しいかもしれない(?)深いお辞儀をしてくる。

 落ち込んでる時に一緒に居てくれた??? だから何? 俺の方がメマと居る時間は長いんですけど???


「ありがと、メマちゃんの事助けてくれたんだね」
「そ、そんなんじゃない……ただひまだったから、ちょっとこえかけただけだし」
「それでもだ、感謝するよ」


 比奈と凪さんが、少年の頭を撫でてお礼を言う。


 2人はそいつの事認めちゃうんだ? 良いんだけどさ、別に。


 俺が少し離れた所から見ていると、2人が近づいて俺の耳元で言う。


「何時までそう不貞腐れてんの? しょうた君が居なかったらメマちゃんどうなってたか分からなかったでしょ?」
「落ち込む原因を作った器の小さなお父さんor落ち込んでた時に励ましてくれた男の子。どっちが好かれるかなんてもう勝敗はもう決まって……おっと、口が滑った」


 ……。


 俺は大きく、大きく深呼吸をした後にしょうた君へと歩み寄った。


「……?」


 戸惑うしょうた君。そんなしょうた君の目の前で膝を着き、俺はまた、しょうた君の肩へと手を置いた。


「メマを助けてくれてありがトねェ?」
「は……はい………」


 精一杯の感謝を込めました。




「よし……じゃあひと段落着いた所で、遅くなったけどウチもそろそろ始めるか」
「うん!!」
「そうですね。メマちゃんも揃いましたしね」
「これで、やっと出来ますね。誰かさんが問題を起こさなければこうはなっていなかったんですけど」


 しょうた君が戸惑う中、俺達は天高くウチの旗を掲げた。
 ウチの店のホームカラーとも言える緑色を基調とした屋台、旗には『KIRO ずんだソフトクリーム』と書かれている。所々に葉や花、ツタ等があってウチの特徴が十分に表せているのではないだろうか。


「よし! 喫茶店 KIRO! ずんだソフトクリーム屋、開店だ!!」
「いらっしゃいませーっ!! おいしいよーっ!!」
「「いらっしゃいませーっ」」



 お祭りの始まりだ!
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