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第4章 (1)バロンVS夢の配達人

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「……モ、モニカ様」

扉の外に居たのはやっぱりモニカ様。
驚く私ににっこりと微笑んでいるが、ふと不安と疑問に包まれる。
何故なら滞在初日から今日まで、彼女が私の部屋を訪れてきた事なんてない。


最終日に、今更どうして?
また何やら悪い事を言われるのではないか?

そんな思いしか浮かばなかったが、モニカ様は私の手を両手で包むように取って言った。


「夕方は風が気持ち良くなってきました。
少し一緒にお散歩しません?」

「!……えっ?」

私を誘う予想外の言葉。
私に向けられる、とても可愛らしいモニカ様の笑顔。

単純。
そう思われるかも知れないが、それが嬉しくて嬉しくて。
今まで悪い印象しかなかった彼女に急に優しい態度を取られ、喜びが勝った私の警戒心はあっという間に薄れてしまった。


「はいっ!ぜひ!」

「よかった。
じゃあ、参りましょう」


夕食までまだ時間もあるし、大丈夫だよね?

笑顔で頷いた私は、弾んだ気持ちでモニカ様と一緒に別荘を出た。

この辺りはアルバート様が所有する土地内。
「そう遠くまで行かなければ大丈夫!」と、私達は使用人達に何も告げずに別荘を後にしてしまったのだった。

……
…………。
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