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第9章 (2)最後の想い出
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しおりを挟む「……。
ごめん、ちょっと触るよ」
遠慮がちに私を抱き上げたバロンが、ベッドまで運んでくれる。
触れ合った部分が、あったかくて。
冷え切った私には熱いくらいに感じて、このまま彼の腕に抱かれて溶けてしまうなら、きっと本望だ。
……このまま、離れたくない。
そう。私はこれ以上、彼と離れたくないのだ。
そう思っても、何も出来ない。
この手を首に回して抱き着く事すら出来ない私を、バロンはそっとベッドに寝かせると、掛け布団を掛けてポンポンッと優しく叩いてくれた。
心地良いテンポが今は余計に寂しくて、大好きな彼の声も、切なく響く。
「……なんかさ。
初めて会った日、思い出すね」
「ッ……」
っ……やだ。
そんな事、言わないでよっ……。泣きそ……。
今までの想い出を語るその言葉にズキッと胸が締め付けられて、涙が溢れ出そうな最高潮。
けど。
意地悪そうな声が呪文になって、不思議な魔法が私の涙を止めてくれた。
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