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最終章 (4)夢の言葉は魔法の呪文
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しおりを挟む?……なに?
目の前に差し出された手に首を傾げる。
再会を喜ぶ握手、な訳がない。
ただじっと見つめていると、彼が問い掛けてきた。
「お前が昨日俺に言った事。
あれは、お前からの依頼か?」
「!……え?」
「昨日、お前は砂浜で言ったよな?
『私がここから連れ去って、って言ったら……。貴方はどうする?』……てさ」
それは昨日、私が望んだ夢のようなお願い。
叶う事はないと分かりながら、口にしてしまった儚い願い。
の、筈だった。
「俺がお前を、次の契約者に選んでやる。
お前が本気で望むなら、その依頼引き受けてやるって言ってんだよ」
「っ……ヴァロン」
夢は終わらない。
夢は叶うのだと言いたげに、ヴァロンの言葉が、優しく私の心に沁みてくる。
私だけを見つめる、彼の眼差し。
私に差し出された、彼の大きな手。
嬉しくて。
今すぐ手を伸ばしたくて……。
ーーけど、同時に浮かぶ現実。
きっと、迷惑がかかる。
私のせいで、ヴァロンもみんなにもッ……。
震える手を、私は握り締めて俯いた。
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