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第9章(2)ディアスside
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しおりを挟む「あちらに車をご用意しております。さぁ、参りましょう……」
「ーー嫌だ」
車までの道のりを案内しようと差し出した私の手を、マオ様がパッと振り払った。
「っ……もっと、遊びたい。
まだ、帰りたくない……ッ」
絞り出したような声が、そう訴える。
私の手を振り払った事。
我が儘を言っている事、に罪悪感を感じているのは一目瞭然にオドオドした態度。
だが、それはマオ様にとって初めての反抗だった。
「心配しなくても、自分でちゃんと帰れるよ。
っ……だから、もう少しだけ。お願い……ディアス」
私を見つめる揺れる瞳が”まだ帰りたくない”と、ハッキリ言っていた。
リオン様に命じられ、幼少期から私はずっとこの方を陰ながら見守ってきた。
それは誰の目から見ても過酷で、幸せには程遠い毎日。
リオン様と別れ、アンナ様と別れ、リディア様と別れ……。彼の大切な人は、いつも目の前からいなくなってしまう。
そんな人生の中で出逢ったアカリ様。
きっと、彼と彼女はまさに”運命の相手”なのだろう。
一度は引き離され、記憶を失くしておられるのに、この広い世界で二人は再びこうして出逢ってしまわれた。
そして……。
「っ……マオさん!
あの、っ……今日はもう、帰りませんか?」
「!……え?」
「夏だから明るくて分かりませんが、もうけっこう遅い時間です。私、帰ってご飯の支度しなきゃ……。
っ……それに、マオさんもずぶ濡れだし。風邪、ひいたら大変ですよ?」
私とマオ様の間に入り、さり気なく帰るように促してくれたアカリ様。
その彼女を見つめる、マオ様の瞳。
「……そう、ですね。
アカリさんも、お忙しい……ですよね?
すみません、子供みたいな事言って……」
照れてハニカミながらそう言うマオ様の瞳は、確かに記憶を失くす前の彼ーー。
ヴァロン様がアカリ様を見つめる優しい瞳と、同じだった。
……
…………。
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