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第22章(4)スズカside
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しおりを挟む信じられない、夢のような光景が私の目の前に広がっていた。
「みんな揃ったわね?
改めて、今日からこの邸に住む事になりましたアカリと申します。皆さんには、出来れば"奥様"ではなく名前で呼んでもらいたいです!
それから、皆さんの事も名前で呼びたいので今から自己紹介をお願いします」
まさかまさかの、お茶会をしながらの自己紹介の時間。
この邸の主人がアラン様に代わって以来の初めてのこの雰囲気に、みんな顔を見合わせて戸惑っていた。
しかし、奥様の勢いに押され観念したのか、使用人長が自己紹介を始めた事がキッカケとなり……。みんなおずおずとしながらも、順番に自己紹介をする事となった。
更に驚く事は……。
「分かった!みんな、ありがとう!
えっと、エルナ、パオラ、マリカ……」
たった一度の自己紹介で奥様はこの場にいる全員の名前を覚え、確認するように順番に名前を復唱したのだ。
本当に、信じられない。
使用人や調理師、警備や庭師など総勢40名程の名前をたった一度の自己紹介で覚えてしまうなんて……。
これには「皆さんの事も名前で呼びたい」と言っていた奥様の言葉を"口先だけの事だ"とは誰も疑えなくなっていた。
「よし!じゃあ自己紹介も終わったし、みんなでクッキー食べましょ?
こっちが普通のやつで、こっちがチョコ。あとアレルギーのある人はこっちを食べて下さい、玉子も小麦粉も使ってませんから」
それは当たり前のようで、実は1番難しい気配りだった。
この方がやっている事は、やろうと思って出来る事ではない。奥様が持つ美しい心が、そのまま形となり表に出て来ているのだ。
「……私、いただきます」
「私も、いただきます」
そんな奥様を目にして、心を動かされない人間はいなかった。
その場に居たみんなは次々と「いただきます」と奥方様のクッキーを受け取り、口にしては笑顔で「美味しいです」と伝えた。
「本当っ?良かった!」
その言葉と笑顔に奥様も弾んだ声でそう言って、微笑む。
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