君に恋したあの瞬間

☆リサーナ☆

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今も、忘れられない

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ーーあ、キスしたいんだな。

傍にいる彼を見て、私はそう思った。


デートの帰り際。
彼の帰りの電車を待つ、駅のホーム。

時刻はもう22時を過ぎていて、辺りは静かで暗い。
電車待ちをしている人はほとんど居なくて、こっち側と反対側のホームに数人がちらほらって感じ。

おかげで朝の通勤ラッシュの時間帯に利用する雰囲気とは全く違っており、その時には決して座れない電車待ち用のベンチにも余裕で座れた。


しかし、そんな状況にも関わらず……。
さっきから彼はベンチで座る私の傍に立っていて、辺りをキョロキョロ落ち着かない様子。


「座らないの?」

彼の乗る電車が来るまで10分くらいある時点で尋ねると、「あ、うん」と短い言葉が返ってきただけ。

それから約5分くらい経った今も、彼は一度もベンチに座る事なく立ちっぱなしだった。


今日はお昼くらいから待ち合わせをして、ショッピングモールをブラブラして、夕飯を食べた。
その後、送ってくれると言うので私の地元の駅に着いて……今に至る。

送る、と言っても私の自宅はこの駅から更にバスで10分程の距離がある為、いつも送ってもらうのは大体ここまで。
改札口を出てしまえば、またお金もかかってしまうしね。

この年の3月に高校を卒業して、4月から新社会人になって、親元を離れ一人暮らしを始めた彼に、余計なお金を使わせる訳にはいかなった。

まあ、すでに社会人として何年か働いていた私が払えば済む事なのだが……。
元々私は恋人に奢ったり奢られたりするのが苦手で、割り勘派。
固い女だと思われるかも知れないが、付き合って間もない彼に金銭の貸し借りなんて考えられなかった。


実は、私と彼は年齢がけっこう違う。
彼は二ヶ月前に高校を卒業した、19歳。
私は、その九つ上の28歳。

そう、年の差カップルなのだ。
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