この夏が終わっても

番外編 〜智樹side〜

１-７

初対面なのに気持ち悪がられるのを恐れて、誤魔化すように「人の顔と名前を覚えるのが得意」なんて言ったけど、本当は違うよ。

君を見付けたくて、知りたくて、覚えてしまっただけ。
本当は、そんな大勢の人の事より、君の事だけを知りたいーー。

……とは、当然言えない不甲斐ない俺。
そんな俺に義理とは言えいきなりチョコレートなんてくれたりするから、また焦ってしまった。
もっと会話したかったのに意地悪なチャイムに遮られて、去って行く彼女の背中を見送る事しか出来なかった。


でも、このまま終わらせる事なんて出来ないーー！！

この日少しでも話せたチャンスを無駄にしたくなくて、俺は一ヶ月後のホワイトデーに全てを賭ける事にしたんだ。
色んなお店に行って、彼女が喜びそうな物をいっぱい考えた。

選んだのは、透明なクマの形の瓶に入った色取り取りの飴。
初めて彼女を見た時のように、俺にはキラキラして映ったからだ。