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47話 しゃべり過ぎた男 その1
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(ビクティム侯爵視点)
「あははははは、なるほどなるほど、それは面白いですね……!」
「そうだろう? ふははははははっ」
私たちはその日、酒を飲みながらチェスを続けていた。気分が良くなった私はついつい、ザイールに事情を話してしまう。まあ、他に誰が聞いているわけでもない。特に問題はないだろう。
「エドモンド・デューイ殿……なるほど、あなたの叔父上の権力で管理者になれ、あなたは爵位をはく奪された身でありながら、事実上は自由の身と変わらない。特に労役も課されることはない、という仕組みですね」
「大まかな流れとしては、そんなところだな」
「なるほど……ふむふむ。非常に興味深い話ですね」
ザイールはかなり頭の回転が早い人物のようだ。一度しか言っていない私の話を上手く整理し、直後に道筋を正確に追うように話しているのだから。なるほど、こんな辺境地の管理人で終わる人間ではないようだな。まさに、私の片腕に相応しい人物かもしれない。話も合うしチェスという共通の趣味もある。
「しかし、エドモンド様の権力はとてつもないですね。ビクティム殿の罪を実質的に失くしたようなものですから」
「それは……確かにその通りかもしれんな」
婿養子という立場ではあったが、確かに叔父上の権力は相当に高いという認識だ。流石は公爵といったところかもしれないな。叔父上のおかげで現在の私の立場がある……全く、感謝してもし切れないとはまさにこのことだろうな。
爵位をはく奪されると地下牢で聞かされた時はどうしようかと思ったものだが……侯爵であったこの私が、そんな惨めな人生を送るはずはないのだ。神は私を見てくれているのだろう。いや、違うな……私こそが神なのかもしれん。
「どうかしましたか、ビクティム殿?」
「いや、なんでもない。少し神の話を思い出したまでだ……」
「神……ですか?」
「ああ、爵位をはく奪された私ではあるが、成功の道は約束されている……地下牢で無礼を働いた兵士どもはさぞや、悔しがっているだろうと思ってな」
「なるほど……つまりは、あなたが神にも等しい存在だった、と?」
「まあ、そんなところだ……おっと、臭かったかな」
「いえいえ。ビクティム殿にしか言えないセリフかと思われます」
ふふふふ……しかし、ザイールは若いのに私を持ち上げる技量も申し分ないと完璧かもしれないな。これで女であれば……惜しい。私はそっち方面の気はないので、非常に惜しいとしかいいようがない。
「ん?」
と、そんな時だった……なにやら、管理棟が騒がしくなっていた。なんだ? 今、何時だと思っている……私の護衛をしている叔父上の配下たちも休んでいるはずだが。
「なんなのだ、一体?」
「さて……なんでしょうかね……?」
その騒がしさは、私たちに近づくように大きくなっていった。そして……扉が開かれる。
「ビクティム・クラウスか……久しぶりだな」
「馬鹿な……フューリ王太子殿下……!? それに、レオーネも……!」
「お久しぶりです、ビクティム様」
わざとらしく、深々と挨拶をするレオーネだった。その表情は勝ち誇ったような……そんな忌々しい表情になっている。馬鹿な……いくら王太子殿下といえども、この辺境地に簡単に乗り込むことは出来ないはず。私には何がなんだか分からなかった……。
「あははははは、なるほどなるほど、それは面白いですね……!」
「そうだろう? ふははははははっ」
私たちはその日、酒を飲みながらチェスを続けていた。気分が良くなった私はついつい、ザイールに事情を話してしまう。まあ、他に誰が聞いているわけでもない。特に問題はないだろう。
「エドモンド・デューイ殿……なるほど、あなたの叔父上の権力で管理者になれ、あなたは爵位をはく奪された身でありながら、事実上は自由の身と変わらない。特に労役も課されることはない、という仕組みですね」
「大まかな流れとしては、そんなところだな」
「なるほど……ふむふむ。非常に興味深い話ですね」
ザイールはかなり頭の回転が早い人物のようだ。一度しか言っていない私の話を上手く整理し、直後に道筋を正確に追うように話しているのだから。なるほど、こんな辺境地の管理人で終わる人間ではないようだな。まさに、私の片腕に相応しい人物かもしれない。話も合うしチェスという共通の趣味もある。
「しかし、エドモンド様の権力はとてつもないですね。ビクティム殿の罪を実質的に失くしたようなものですから」
「それは……確かにその通りかもしれんな」
婿養子という立場ではあったが、確かに叔父上の権力は相当に高いという認識だ。流石は公爵といったところかもしれないな。叔父上のおかげで現在の私の立場がある……全く、感謝してもし切れないとはまさにこのことだろうな。
爵位をはく奪されると地下牢で聞かされた時はどうしようかと思ったものだが……侯爵であったこの私が、そんな惨めな人生を送るはずはないのだ。神は私を見てくれているのだろう。いや、違うな……私こそが神なのかもしれん。
「どうかしましたか、ビクティム殿?」
「いや、なんでもない。少し神の話を思い出したまでだ……」
「神……ですか?」
「ああ、爵位をはく奪された私ではあるが、成功の道は約束されている……地下牢で無礼を働いた兵士どもはさぞや、悔しがっているだろうと思ってな」
「なるほど……つまりは、あなたが神にも等しい存在だった、と?」
「まあ、そんなところだ……おっと、臭かったかな」
「いえいえ。ビクティム殿にしか言えないセリフかと思われます」
ふふふふ……しかし、ザイールは若いのに私を持ち上げる技量も申し分ないと完璧かもしれないな。これで女であれば……惜しい。私はそっち方面の気はないので、非常に惜しいとしかいいようがない。
「ん?」
と、そんな時だった……なにやら、管理棟が騒がしくなっていた。なんだ? 今、何時だと思っている……私の護衛をしている叔父上の配下たちも休んでいるはずだが。
「なんなのだ、一体?」
「さて……なんでしょうかね……?」
その騒がしさは、私たちに近づくように大きくなっていった。そして……扉が開かれる。
「ビクティム・クラウスか……久しぶりだな」
「馬鹿な……フューリ王太子殿下……!? それに、レオーネも……!」
「お久しぶりです、ビクティム様」
わざとらしく、深々と挨拶をするレオーネだった。その表情は勝ち誇ったような……そんな忌々しい表情になっている。馬鹿な……いくら王太子殿下といえども、この辺境地に簡単に乗り込むことは出来ないはず。私には何がなんだか分からなかった……。
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