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6話 クラウドとメイサ
しおりを挟む「ふふ、クラウド!」
「メイサ、ははは!」
私とクラウドの仲はあの一件以来、急速に縮まって行った。まだ正式に婚約をしているわけではないけれど、婚約を前提として付き合っているのだ。私の部屋で彼とじゃれ合っている。
「リドルと別れたばかりで、急に貴方と付き合うのはどうかと思ったけれど……想像以上に周りが祝福してくれて、本当に良かったわ」
「リドルとの別れは君に全く非がないんだから当然だよ。婚約破棄を一方的にされたんだ……すぐに新しい恋を見つけるのは間違っていないさ」
「そう考えると、その通りかもしれないわね」
婚約破棄の場合、不名誉なものとしてその後、しばらくは喪中と同じく静かにしていることが多いと聞く。その間に本人の精神状態を元に戻す狙いがあるらしいけれど、逆効果になる場合もあるだろう。例えば、外に出るのが怖くなってしまったりとか色々だ。
それよりも、以前のことはすっぱりと忘れて新しい出会いに必死になる方が精神衛生的には良いのかもしれない。
そう考えると、私の今の行いはとても良いことのような気がしてしまった。まあ、リドルがもっとまともな人で婚約破棄にもちゃんとした理由があった場合は、クラウドとこんな関係にはなっていないと思うけれど。少なくとももっと時間を掛けているだろう。
今回はリドルへの罪悪感が皆無だからこそ、行えたことだ。
「メイサ……まだ先のことになるかもしれないが、君ともし結婚という夢が実現したら、必ず幸せにすると約束するよ」
「ありがとう、クラウド……貴方のそんな言葉を聞きたかったわ」
「良かったよ……ただまあ、こういう言葉はやはり照れてしまうな」
「何を言っているのよ。クラウドのことだから、私が居なかった時は他の令嬢にも同じようなことは言っていたのでしょう?」
「そ、そんなことは……!」
むっ、想像以上に慌てているわ。これはもう少し責めていく必要がありそうね。
「へえ~~~そうなの? 他の子にも似たようなことを言ったことはあるのね?」
「ま、待ってくれ……誤解だよ! ほら、君がリドルと婚約していたから、俺も違う相手を探さないといけないだろう? つまりはそういうことさ」
「なるほど……上手く逃げたわね」
「メイサ……」
「冗談冗談! ごめんさない! クラウドのことは信用しているわ、それに貴族である以上、結婚相手を見つけるのは当然の行為だものね」
「まあ、そういうことさ。ヒヤヒヤするからそういう冗談は控えてくれよ。心臓に悪い……」
「本当にごめんなさい、クラウド……」
しまった……ちょっと調子に乗り過ぎたかもしれないわね。反省しなきゃ……と、そんな時、私室をノックする音が聞こえてきた。
「失礼致します、メイサ様……少し宜しいでしょうか?」
「あら……どうしたの?」
「はい……実はリドル・ガレッジ侯爵がお見えになっています。お通ししてもよろしいでしょうか?」
「は……? リドルが……えっ?」
あまりに意外な人物が訪ねて来たことに、私は思考が停止した。なぜ、リドルが今頃になって私のところへ来るのだろうか? フィーナ様との仲が悪くなったとか? そんな噂は聞いたことがないけれど……えっ、会ってしまっても大丈夫なのかな……。
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