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1話 追放される聖女、カーミラ その1
しおりを挟む「聖女カーミラよ」
「はい、聖女カーミラ、公爵閣下の元に馳せ参じております」
タルカロン王国のバークス・シルド公爵の私室に私は居た。彼の前で跪き、顔を上げる許可が出るまでひたすら待っている。
「面を上げて構わないぞ」
「ありがとうございます、バークス公爵」
私は礼を言いながら、バークス公爵に視線を合わせた。この国では公爵閣下であろうと、ファーストネームで呼ぶことが多い。個人をより尊重する意味合いが昔から強調されてきたらしいから。
「本日のご用件をお伺いしてもよろしいですか?」
「うむ……そうだったな」
私はタルカロン王国の王都カルスタッドにて聖女としての仕事をしている。仕事場は主に貴族街や宮殿内ということになるけれど、襲って来る魔物の浄化と結界の付与が主な役割だ。聖女という役職は希少性が強く、ほとんど数は賄えない。その希少な聖女のスカウトと管理を担うのが、目の前にいるバークス公爵になる。
つまりは彼は私、カーミラ・ユトレヒトの直属の上司となるわけで……。
「カーミラ、悪いがお前は用済みだ」
「……えっ?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。ええと……用済み、と聞こえたんだけど……まさかね。私はバークス公爵に質問してみる。
「も、申し訳ございません、公爵閣下……なんとおっしゃったのでしょうか?」
「ああ、聞こえなかったか。お前は用済みだと言ったのだ」
「用済み……?」
「その通りだ」
やっぱり聞き間違いではなかったみたい……でも、用済み? どうして……?
「私が何か阻喪をしてしまったでしょうか?」
「いいや、そういうことではないが。やはり、聖女というのは高貴な立場の者が背負うべきだと判断したのだ」
「高貴な立場の者……?」
それってつまり……。
「お前は貴族の称号もない、ただの一般人だ。お前のような薄汚い平民が貴族街をウロウロしているのは、見るに堪えなかったからな」
「そ、そんな……!」
確かに私は平民出身だけれど、聖女という立場で貴族街や宮殿への出入りも許されていた。それをバークス公爵は嫌がっている……?
「しかし……私が居ないと、魔物が侵入した際には、国民に被害が及んでしまうのでは……?」
現在、聖女という役職は私しか居ない。私がその役職から遠ざかるということは、結界も浄化もできないということになるけれど。
「ふははははっ、お前は私の話を聞いていなかったのか? 高貴な者に任せると言っただろう?」
「そうよ、カーミラ。平民であるあんたはもう必要ないの」
「えっ……?」
バークス公爵の私室に入って来た人物……二人の貴族令嬢の姿があった。同時に私は確信する……この二人が新しい聖女で、私はそのために必要なくなったのだと。
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