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2話 新たなる道へ その1
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「うむ、エレナよ。お前の気持ちが揺らいでしまったのは無理もないだろう」
「お父様……私は、最低な女です」
「何を言っている。お前はマグリト国王陛下の目を覚まさせる為のカンフル剤を演じたのだからな。立派なものだ……自らの裕福な幸せよりも、愛する国王陛下の信頼回復を選んだ。本当によく決断したと言えるよ」
「ありがとうございます、お父様……そう言っていただき、本当に光栄です」
私は屋敷に戻ってからも涙を完全には拭えなかった。それだけ、マグリト様のことを愛していた証拠だと言えるだろう。彼と一緒に生きて行きたかった……その気持ちに嘘はない。ただ、マグリト様は私のせいで道を間違えてしまったのだ。
私が近くにいてはマグリト様もソルド大臣や正妃様も、辛い目に遭ってしまう。さらに国民へのしわ寄せを考えると、私がマグリト様から離れるのが最適解に思えた。そのようにソルド大臣に相談したら……彼も頷いてくれたのだから。
お父様も同じような感想のようだ。後は私とマグリト様がそれぞれの新しい道を歩んで行けば済む話だ。そう簡単にマグリト様のことを忘れられるとは思えないけれど、なるべく早く忘れることが彼への礼儀になるでしょうね。
「エレナ、君との整理はつけられそうか?」
「はい、お父様。時間が掛かるかもしれませんが、必ずつけてみせます。なるべく早くに」
「ああ、分かった。あまり無理はしないようにな? 辛くなった時はいつでも相談するのだぞ?」
「ありがとうございます、お父様」
優しいお父様に報いるためにも、早く元気にならないといけないわね。
-----------------------
(マグリト・リューガ国王陛下視点)
「エレナ……」
「あなた大丈夫ですか? なんだか元気がないように見えるけれど……」
「ラジェルか……心配を掛けるな」
「別に気にしなくていいですよ。私は正室なんですし、あなたの悲しみを享受するのも義務ですから」
「エレナがまさか、あんなことを言うとは……私にはとても信じられないのだ」
エレナ……彼女は私に目を覚まして欲しいと言っていた。だからこそ、婚約破棄をするのだと。堕落していく私は見たくないとも言っていたか。私はそんなに周りが見えていなかっただろうか?
いや、エレナのためならば周りが見えないくらいは大したことがないのだ。その気持ちに嘘はない。
「側室のエレナ……そうですね、あなたは少し彼女に熱を入れ過ぎていたのかもしれません。一度、離れた状態で自分を見つめ直すのも良いんじゃありませんか?」
「ラジェル……」
私はそんなに間違っていたのだろうか? いや、そんなはずはない。私にはエレナがいなければならないんだ。私の生活において、彼女はかけがえのないものになっている。
「お父様……私は、最低な女です」
「何を言っている。お前はマグリト国王陛下の目を覚まさせる為のカンフル剤を演じたのだからな。立派なものだ……自らの裕福な幸せよりも、愛する国王陛下の信頼回復を選んだ。本当によく決断したと言えるよ」
「ありがとうございます、お父様……そう言っていただき、本当に光栄です」
私は屋敷に戻ってからも涙を完全には拭えなかった。それだけ、マグリト様のことを愛していた証拠だと言えるだろう。彼と一緒に生きて行きたかった……その気持ちに嘘はない。ただ、マグリト様は私のせいで道を間違えてしまったのだ。
私が近くにいてはマグリト様もソルド大臣や正妃様も、辛い目に遭ってしまう。さらに国民へのしわ寄せを考えると、私がマグリト様から離れるのが最適解に思えた。そのようにソルド大臣に相談したら……彼も頷いてくれたのだから。
お父様も同じような感想のようだ。後は私とマグリト様がそれぞれの新しい道を歩んで行けば済む話だ。そう簡単にマグリト様のことを忘れられるとは思えないけれど、なるべく早く忘れることが彼への礼儀になるでしょうね。
「エレナ、君との整理はつけられそうか?」
「はい、お父様。時間が掛かるかもしれませんが、必ずつけてみせます。なるべく早くに」
「ああ、分かった。あまり無理はしないようにな? 辛くなった時はいつでも相談するのだぞ?」
「ありがとうございます、お父様」
優しいお父様に報いるためにも、早く元気にならないといけないわね。
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(マグリト・リューガ国王陛下視点)
「エレナ……」
「あなた大丈夫ですか? なんだか元気がないように見えるけれど……」
「ラジェルか……心配を掛けるな」
「別に気にしなくていいですよ。私は正室なんですし、あなたの悲しみを享受するのも義務ですから」
「エレナがまさか、あんなことを言うとは……私にはとても信じられないのだ」
エレナ……彼女は私に目を覚まして欲しいと言っていた。だからこそ、婚約破棄をするのだと。堕落していく私は見たくないとも言っていたか。私はそんなに周りが見えていなかっただろうか?
いや、エレナのためならば周りが見えないくらいは大したことがないのだ。その気持ちに嘘はない。
「側室のエレナ……そうですね、あなたは少し彼女に熱を入れ過ぎていたのかもしれません。一度、離れた状態で自分を見つめ直すのも良いんじゃありませんか?」
「ラジェル……」
私はそんなに間違っていたのだろうか? いや、そんなはずはない。私にはエレナがいなければならないんだ。私の生活において、彼女はかけがえのないものになっている。
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