3 / 4
3話 新たなる道へ その2
しおりを挟む「エレナ様、今後の予定でございますが……マルーク・ウェベリ侯爵が主催の舞踏会になりますが、ご出席なさいますか?」
「ま、マルークってまさか……!?」
メイドの一人であるパームがニコリと笑っていた。私が驚くのを想定していたようだ。
「はい、そうですね。マルーク様はエレナ様の幼馴染になるかと思います。あの頃は侯爵令息でしたけど、今は侯爵になられているのですよ?」
「ええ、そんなことが……! 私と同じ歳よね? 19歳で侯爵家の当主って……」
「ええ、そうですね。非常にめずらしいことだと思われます」
リューガ王国の長い歴史を考えれば、あり得ないことではないのかもしれないけれど、19歳で侯爵様って……24歳で国王陛下になったマグリト様より凄いかもしれないわね。
側室の教育で必死だったから、全然知らなかったわ……。
「そうなんだ、知らなかったわ……パーム」
「エレナ様は最近は王族の方々との婚約ですとか、教育ですとか、パーティ出席とかがありましたから……こちらにまで意識が向かないのは仕方ないと思います」
「ま、まあそれは……確かに」
幼馴染のマルークが侯爵になっており、彼が主催の舞踏会があることを知らなかったなんて失礼かとは思うけれど……最近の私はかなり忙しかったしね。
マグリト様の溺愛を一心に受けて……それでいて、婚約期間中だから身体を差し出せとは一切言われなくて。マグリト様はそういうところでは非常に紳士なお方だった。彼との思い出は単純に楽しかったと言える。側室の教育については辛かった時も多いけれど、マグリト様の優しさに救われた時も多かったっけ。
いけないいけない……マグリト様のことは忘れないといけないんだった。
「エレナ様、やはりマグリト国王陛下との思い出は簡単には忘れられませんか?」
「うっ……それは……」
パームは私の専属のメイドの一人だ。彼女に嘘を吐くことは難しいと言えた。はあ……流石はパームね。
「まあ、そうね……マグリト様との思い出は単純に面白かったもの。途中から私に寄り過ぎだとは感じるようにはなったけれど、なかなか抜け出すのは辛かったわ」
「その気持ちは分かります。私も同じ立場になれば、抜け出せるかは不明ですので……」
「そうね……幸せを感じていたのは事実だわ」
最初は王家の資金を使っていても、側室だし問題ないと考えていた。何よりも、あのマグリト様が行っていることだから間違いはないと思っていたの。でも……国民の税金を上げたという事実を知ってからはそれが変わってしまった。私の贅沢は国民の血税を浪費しているだけだと思わされてしまったのだ。
だから、マグリト様との別れを決意したわけで……。
「マグリト様も私のことは忘れて、正室のラジェル様との仲を深めて欲しいわね」
「そうですね……そう願いたいところです。ところで、マルーク・ウェペリ侯爵の舞踏会は出席されますか?」
「そうね、出席することにするわ」
「畏まりました、そのように手配いたします」
私の新しい道の開拓……マルークとの再会はそれに繋がるかもしれない。なんだかんだ言って、楽しみではあった。
0
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
⬜︎小説家になろう様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる