3 / 3
3話 幼馴染との会話 その1
しおりを挟む「レンネ……! 久しぶりだね!」
「あ、アレック様……お久しぶりでございます……!」
私は3年振りの幼馴染との再会にとても緊張してしまっていた。当時は普通に話していたけれど、今のアレックは伯爵様になっているのだ……敬語を使う以外の選択肢がなかった。
「レンネ、今までのように普通に話してくれた方が助かるんだが……」
「そ、そうは言われましても……アレック様は伯爵様……この地の領主様になるのですし」
村娘の家系の家に伯爵様が来ている段階で、既におかしい……いくら幼馴染とはいえ、普通に言葉を交わすことは難しかった。彼は色々と事情があったらしく、私と同じ歳にして伯爵家の当主になっている。私とは全く地位が違うのだ。
「なら、私から命令させて貰おうかな? 普通に話しなさい」
「ちょ、アレック……それはズルいんじゃないかしら?」
「ははは、その言葉遣いを待っていたんだよ! 久しぶりだな」
「え、ええ……久しぶりね。アレック」
完全にアレックの術中に嵌ってしまったようだわ……私は敬語を使っていたのが馬鹿馬鹿しくなってしまった。アレックは昔からこういう性格だったわね……。
「コホン、父さんは家に戻っていることにしよう。後は若い者達で済ませなさい」
「ちょ……! 父さん! 変な気を遣わないでよ!」
「はっはっは、それではアレック様。娘をよろしくお願い致します」
「心得ました、サウガさん。ご安心くださいませ」
父さんだけじゃなく、アレックまで悪ノリしている気がする。まったく、この二人は……しょうがないんだから。
「サウガさんも相変わらずだね。安心したよ」
「それを言うなら、アレックだって変わっていないわよ? 伯爵様が村娘の一人と普通に話していて大丈夫なの?」
「それについては問題ないさ。ほら、周りを見ていても奇異な目では見られていないだろ?」
「うん、まあ……それは確かに……」
それに関してはリハル村の住人の感覚がおかしいとも言える。アレック様が来たというのに、周囲の人達は笑顔で迎えているようだったし……う~ん、このウェルカム感は素晴らしいと言えば良いのかしら?
「それで、アレック。一体、何の用事があってここまで来たの?」
「まあ、大体分かっているかとは思うけど、君の婚約破棄についてだよ。出来れば君の家で話したいんだけど……大丈夫かな?」
「ええ、それは構わないけれど……」
タイラー・ヘンブリッジ様との婚約破棄についてか……まあ、普通に考えればその話になるわよね。私は頷いてアレックを自分の家に招くことにした。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~
銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。
自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。
そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。
テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。
その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!?
はたして、物語の結末は――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる