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20話 本当の舞踏会
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「さて……話がヒートアップしているところ済まないが、そこまでだ」
丁度良いタイミングを見計らい、ユアン王子殿下は仲裁に入った。本来ならもっと後で入る予定だったみたいだけど、表向きは主催者としての責任を全うする必要がある為だ。
「兄上……」
「ユアン……」
バール様とベノム様は同時にユアン王子殿下に視線を合わせていた。どうでも良いことかもしれないけれど、ベノム様はユアン王子殿下のことを、名前で呼んでるのね。ユアン王子殿下の方がお兄様になるはずだけど。もしかしたら、複雑な家庭事情があるのかもしれない。
「ユアン。そこまで……というのは、どういうことだ?」
「言葉の通りだよ、ベノム。これ以上、リシド殿とメープル嬢に恥をかかせるな」
「おいおい、いきなりどうしたんだ? 彼らの事情を話したのはお前だろう?」
「それはそうだが……私も主催者側なんでな。舞踏会を円滑に進めていく責任がある。これ以上、お前たちが言い争いをしていては、とても舞踏会が上手く進んでいくとは思えない」
「それはそうかもしれないが……」
影響力の違いということでしょうね。ベノム様やバール様は王族だけに、その影響力はとても強い。メープルへの攻撃を想定していたユアン王子殿下だけれど、これ以上はまずいと判断した結果かしら。
「ベノム、お前はシャルナ嬢の気持ちも考えてやるんだな」
「シャルナ嬢の気持ち……?」
ベノム様はハッと我に返ったように、私の方向を再度見ていた。先ほども視線が合っていたけど、今回のベノム様の表情は物悲しく映っている。
「そうだったな……私はシャルナ嬢のことを例外とは言っていたが……アモネート家を悪目立ちさせてしまったようだ」
「うむ、そういうことだ。しかし、お前がそこまでの感情を出すなんて珍しいじゃないか。私としても嬉しいよ」
「茶化すな、ユアン。私は正室の子供ではないのだからな。お前とは今後も微妙な関係性になるだろうし……」
「今はそんなことは関係ないだろう? 私は純粋にシャルナの件で怒りを露わにしてくれて嬉しいと思っているのだよ」
「ふん……まあ、誉め言葉として受け取っておこうか」
なんだか微妙な会話が繰り広げられていた気がする。正室の子供であるユアン第二王子殿下と側室の子供であるベノム第三王子殿下……年齢はもしかして、同じなのかな? お互いにコンプレックスみたいなものを持っているのかもしれないわね。
「私、少し頭が痛いですわ。医務室に行ってまいります……」
その時、無言を貫いていたメープルが話し出した。支えて貰っていたリシド様から離れて、自分の足で立っている。その態度で頭が痛いという表現はおかしい気がするけど。
「そうかそうか……では、私も同行するとしよう。メープルだけでは心配だからな!」
「ええ……お願いいたしますわ、リシド様。私にはあなたしか居ませんので……」
そう言いながらメープルはリシド様に寄り添う。恐ろしい二枚舌を見た気がした……彼女はおそらく、全く反省していない。この圧倒的劣勢の状況から一刻も早く抜け出したいだけなんだろう。
「そうか体調が悪いか……それは早く診てもらった方が良いな」
「ありがとうございます、ユアン王子殿下……それでは私達はこれで」
「……失礼いたします」
二人は私達が見ている中、パーティ会場から出て行った。すれ違い様に強烈な視線を残して……。はあ、まだまだこれからも、波乱の展開になりそうね……。
「シャルナ」
「ユアン様? なんでしょうか?」
「ああ。メープルとリシドの二人が居なくなって、なんとか元の雰囲気に戻ったようだ。今後は予断を許さないが、楽しめそうか?」
「そうですね……ユアン様と踊りなどできましたら、とても楽しめると思います」
ちょっと大胆な言い回しだったかしら……つい誘ってしまったけれど。
「なるほど……では、喜んでその申し出を承諾させてもらおうか」
「ユアン様……ありがとうございますっ」
ユアン様は少し戸惑っていたみたいだけれど、快く誘いにのってくれた。私達の本当の舞踏会は今から始まる。
「ユアン……羨ましいぞ、まったく……」
「あとで兄上も誘ってみては如何ですか?」
「ば、馬鹿を言うな……! そんな恥ずかしいことを……!」
後ろの方で王族達の会話が聞こえてきたけれど、詳しい内容までは分からなかった。
丁度良いタイミングを見計らい、ユアン王子殿下は仲裁に入った。本来ならもっと後で入る予定だったみたいだけど、表向きは主催者としての責任を全うする必要がある為だ。
「兄上……」
「ユアン……」
バール様とベノム様は同時にユアン王子殿下に視線を合わせていた。どうでも良いことかもしれないけれど、ベノム様はユアン王子殿下のことを、名前で呼んでるのね。ユアン王子殿下の方がお兄様になるはずだけど。もしかしたら、複雑な家庭事情があるのかもしれない。
「ユアン。そこまで……というのは、どういうことだ?」
「言葉の通りだよ、ベノム。これ以上、リシド殿とメープル嬢に恥をかかせるな」
「おいおい、いきなりどうしたんだ? 彼らの事情を話したのはお前だろう?」
「それはそうだが……私も主催者側なんでな。舞踏会を円滑に進めていく責任がある。これ以上、お前たちが言い争いをしていては、とても舞踏会が上手く進んでいくとは思えない」
「それはそうかもしれないが……」
影響力の違いということでしょうね。ベノム様やバール様は王族だけに、その影響力はとても強い。メープルへの攻撃を想定していたユアン王子殿下だけれど、これ以上はまずいと判断した結果かしら。
「ベノム、お前はシャルナ嬢の気持ちも考えてやるんだな」
「シャルナ嬢の気持ち……?」
ベノム様はハッと我に返ったように、私の方向を再度見ていた。先ほども視線が合っていたけど、今回のベノム様の表情は物悲しく映っている。
「そうだったな……私はシャルナ嬢のことを例外とは言っていたが……アモネート家を悪目立ちさせてしまったようだ」
「うむ、そういうことだ。しかし、お前がそこまでの感情を出すなんて珍しいじゃないか。私としても嬉しいよ」
「茶化すな、ユアン。私は正室の子供ではないのだからな。お前とは今後も微妙な関係性になるだろうし……」
「今はそんなことは関係ないだろう? 私は純粋にシャルナの件で怒りを露わにしてくれて嬉しいと思っているのだよ」
「ふん……まあ、誉め言葉として受け取っておこうか」
なんだか微妙な会話が繰り広げられていた気がする。正室の子供であるユアン第二王子殿下と側室の子供であるベノム第三王子殿下……年齢はもしかして、同じなのかな? お互いにコンプレックスみたいなものを持っているのかもしれないわね。
「私、少し頭が痛いですわ。医務室に行ってまいります……」
その時、無言を貫いていたメープルが話し出した。支えて貰っていたリシド様から離れて、自分の足で立っている。その態度で頭が痛いという表現はおかしい気がするけど。
「そうかそうか……では、私も同行するとしよう。メープルだけでは心配だからな!」
「ええ……お願いいたしますわ、リシド様。私にはあなたしか居ませんので……」
そう言いながらメープルはリシド様に寄り添う。恐ろしい二枚舌を見た気がした……彼女はおそらく、全く反省していない。この圧倒的劣勢の状況から一刻も早く抜け出したいだけなんだろう。
「そうか体調が悪いか……それは早く診てもらった方が良いな」
「ありがとうございます、ユアン王子殿下……それでは私達はこれで」
「……失礼いたします」
二人は私達が見ている中、パーティ会場から出て行った。すれ違い様に強烈な視線を残して……。はあ、まだまだこれからも、波乱の展開になりそうね……。
「シャルナ」
「ユアン様? なんでしょうか?」
「ああ。メープルとリシドの二人が居なくなって、なんとか元の雰囲気に戻ったようだ。今後は予断を許さないが、楽しめそうか?」
「そうですね……ユアン様と踊りなどできましたら、とても楽しめると思います」
ちょっと大胆な言い回しだったかしら……つい誘ってしまったけれど。
「なるほど……では、喜んでその申し出を承諾させてもらおうか」
「ユアン様……ありがとうございますっ」
ユアン様は少し戸惑っていたみたいだけれど、快く誘いにのってくれた。私達の本当の舞踏会は今から始まる。
「ユアン……羨ましいぞ、まったく……」
「あとで兄上も誘ってみては如何ですか?」
「ば、馬鹿を言うな……! そんな恥ずかしいことを……!」
後ろの方で王族達の会話が聞こえてきたけれど、詳しい内容までは分からなかった。
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