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1話 婚約破棄をされた侯爵令嬢
しおりを挟む「何度も言わせるな、シャールよ……私は幼馴染のマチュアと婚約したいのだ。だから、お前との婚約は破棄させてもらう」
「そんな……! ゼノン様、いくらなんでも酷過ぎます!」
ゼノン様は私の婚約者であり、バハラス侯爵家の当主を務めている。まだ20歳と若いので、その若さゆえなのかもしれないけれど……いきなりの婚約破棄。あまりにも理由が酷過ぎた。単なる浮気でしかないのだから。
16歳の私の心は彼の言葉に酷く傷ついている。
「まあ、いいじゃないか。お前はまだ16歳だろう? これから素敵な男性が見つかるだろうしな」
「そういう問題ではありません!」
私の家系であるミライースト家はバハラス家と同じく侯爵家に当たる。その侯爵令嬢である私が婚約破棄なんてされたら……貴族達の間でなんと噂されるか分かったものではない。
ゼノン様は当主なので、基本的には下の私が悪く言われてしまうのだろうし……そんなことはごめんだった。
「ゼノン様。なんとか婚約破棄を取り下げてもらえないでしょうか? 私と結婚してください」
「嫌だと言っているだろう? いい加減にしてくれ、シャール……私の目がまだ正気な内に、荷物をまとめて出て行くのだ……」
「ゼノン様……そんな……」
「あまり、私を怒らせるでない。私はシャールには怒ったことがなかったな。しかし……それはラッキーというものだぞ?」
なんだか背筋に悪寒が走ってしまった……ゼノン様にこれ以上言うのは駄目だと本能が告げている。私は彼の言葉を呑む以外になかった。
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「ゼノン様が怒りだす前に身を引いて頂き感謝いたします」
「身を引きたいわけではありません。それは分かっていますよね?」
「ええ、分かっています。ですので、より感謝したい気持ちでいっぱいなのです」
ゼノン様の執事の一人が私に話しかけている。彼からの話を聞くと、キレたゼノン様は女性にも簡単に手をあげるのだとか……私があそこで身を引いたのは最善だったのかもしれないわね。でも、感謝をされたとしても意味がない。私はゼノン様の屋敷から出て行くのは決定なのだから……。
こんな悔しいことがあるだろうか? 幼馴染のマチュア様……同じ侯爵令嬢に該当しているお方だ。まさか、その方に婚約者を奪われることになるなんて……。私は素直にゼノン様の屋敷から出て行くことにした。
でも、心の中は非常に複雑だ……こんなに悔しいことは生まれて初めてかもしれない。
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