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2話 悲劇の侯爵令嬢
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「なんだか不思議な感じね……ゼノン様とではなく、あなたとこうして買い物をしていることが……」
「はい。私もそう思います、シャール様」
ゼノン様の身勝手な婚約破棄……私が素直に身を引いたことでゼノン様の機嫌を損ねずに済んだ。これは、彼からの嫌がらせなどがあるかもしれなかったことを考慮すれば良かったのかもしれない。どのみち、ゼノン様は私との婚約破棄を取り下げることはなかっただろうから。
私は現在、護衛も引き連れてメイドのアルファと買い物をしている。貴族街のとあるお店に来ていた。
「シャール様、このアクセサリーは如何でしょうか?」
「あら、悪くないわね。買おうかしら」
「はい、シャール様にとてもお似合いだと思いますよ」
「ありがとう、アルファ」
アルファとは幼馴染の関係であり、主従関係はそこまで持ってはいない。彼女は最低限の礼をつくしてはくれるけれど、普通に話したい衝動にも駆られている。まあ、彼女はメイドだから難しいのだろうけれど。
「この後、どうしたしましょうか?」
「そうね……もう少し、貴族街を回ってみようかしら」
「畏まりました、お供いたします」
「ありがとう、アルファ」
アルファはそう言いながら私に頭を下げてくれた。彼女もメイドとしての仕事でしんどいだろうに、私の買い物に付き合ってくれている。本当に感謝しかできない状況だわ。私も、もっとしっかりしなくちゃ駄目かもね……。
私達は店を離れて路上に出た。その時、一体の馬と当たりそうになってしまった。
「これは申し訳なかった」
「あ、いえ……私の方こそ、すみませんでした」
立派な鎧を着た男性が兜をとって馬から降りて来た。この方は確か……。
「あっ……もしかして、ランバル・デネトイ公爵令息様ではありませんか?」
「おや、私のことをご存知でしたか。それは光栄です。お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
以前に挨拶をしたことがあると思うけれど、流石に覚えていないわよね。ちなみにランバル様は我が王国の騎士団長を務めている。まだ21なので色々と大変だとは思うけれど、本当に立派なお方だ。
「シャール・ミライーストと申します。以後、お見知りおきを」
「シャール令嬢……あるほど、侯爵家のミライースト家のご令嬢でしたか。これは失礼いたしました」
「いえ、とんでもないことですわ」
「ははは、ありがとうございます。こうして会えたのは何かの縁かもしれませんね。私はもう行かなければなりませんが……また、お会いできる日を楽しみにしております」
「はい。私も楽しみにしていますね」
そう言いながら、ランバル様は馬に乗って去って行った。ランバル様か……私はしばらく彼を見続けていた。なんなのかしらこの気持ちは……。
「はい。私もそう思います、シャール様」
ゼノン様の身勝手な婚約破棄……私が素直に身を引いたことでゼノン様の機嫌を損ねずに済んだ。これは、彼からの嫌がらせなどがあるかもしれなかったことを考慮すれば良かったのかもしれない。どのみち、ゼノン様は私との婚約破棄を取り下げることはなかっただろうから。
私は現在、護衛も引き連れてメイドのアルファと買い物をしている。貴族街のとあるお店に来ていた。
「シャール様、このアクセサリーは如何でしょうか?」
「あら、悪くないわね。買おうかしら」
「はい、シャール様にとてもお似合いだと思いますよ」
「ありがとう、アルファ」
アルファとは幼馴染の関係であり、主従関係はそこまで持ってはいない。彼女は最低限の礼をつくしてはくれるけれど、普通に話したい衝動にも駆られている。まあ、彼女はメイドだから難しいのだろうけれど。
「この後、どうしたしましょうか?」
「そうね……もう少し、貴族街を回ってみようかしら」
「畏まりました、お供いたします」
「ありがとう、アルファ」
アルファはそう言いながら私に頭を下げてくれた。彼女もメイドとしての仕事でしんどいだろうに、私の買い物に付き合ってくれている。本当に感謝しかできない状況だわ。私も、もっとしっかりしなくちゃ駄目かもね……。
私達は店を離れて路上に出た。その時、一体の馬と当たりそうになってしまった。
「これは申し訳なかった」
「あ、いえ……私の方こそ、すみませんでした」
立派な鎧を着た男性が兜をとって馬から降りて来た。この方は確か……。
「あっ……もしかして、ランバル・デネトイ公爵令息様ではありませんか?」
「おや、私のことをご存知でしたか。それは光栄です。お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
以前に挨拶をしたことがあると思うけれど、流石に覚えていないわよね。ちなみにランバル様は我が王国の騎士団長を務めている。まだ21なので色々と大変だとは思うけれど、本当に立派なお方だ。
「シャール・ミライーストと申します。以後、お見知りおきを」
「シャール令嬢……あるほど、侯爵家のミライースト家のご令嬢でしたか。これは失礼いたしました」
「いえ、とんでもないことですわ」
「ははは、ありがとうございます。こうして会えたのは何かの縁かもしれませんね。私はもう行かなければなりませんが……また、お会いできる日を楽しみにしております」
「はい。私も楽しみにしていますね」
そう言いながら、ランバル様は馬に乗って去って行った。ランバル様か……私はしばらく彼を見続けていた。なんなのかしらこの気持ちは……。
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