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5話
しおりを挟む「机はどうにか元に戻ったようだな……」
「そうですね……王子殿下」
私達は食堂に来て食事をしていた。とても今は授業どころではなかったからだ。ちなみにシャリーもいる。
「今頃、教室は大騒ぎでしょうね。チェスター王子殿下が見事に終息させてくれた件で」
「そちらよりも苛めが横行していたことの方が問題だ」
苛めか……まあ、確かにあれは苛めと呼んで問題ない行為だっただろう。シャリーの件もあるし、あとで教員にも相談しないといけないかもしれないわね。
「エスメラルダもシャリーもなかなか気丈なんだな。あれだけのことがあった後にしては落ち着いている」
「え、ええ……! 落ち着いていますか?」
「うん、落ち着いているように見えるぞ。なあ、エスメラルダ?」
「そうですね。シャリーなんて家柄のことを言われたのに……」
私もどちらかというと冷静な方だと思う。でも、シャリーはさらに凄かった。王子殿下が来たことに対しては動揺しているけれど、それ以外は概ね平静を保っているし。
「私は言われ慣れているからですかね~~? 男爵令嬢が貴族学園に入学しているなんて生意気だ! 平民と変わらないくせに! とか言う人もいるし……」
「それは……大問題だな」
「いえ、私は大丈夫ですよ。それよりも、エスメラルダの方が心配です!」
いや、シャリーも大概心配なんだけれど……大丈夫なんだろうか? 言われ慣れているというのはいいけれど、それが苛めに繋がる言葉だった場合、慣れではいけない気がするし……。
「まあ、本人の意見もあるし一旦はエスメラルダに戻すとするか。君はなぜあんな仕打ちを受けていたんだ? 家柄で虐められるとも思えないんだが」
「私の場合……」
一瞬、ヨシュアの表情が映ってしまった。まあ、いいわよね。あいつが悪いんだし……。
「私はヨシュアと婚約していたんですけど、その婚約がなくなってしまって」
「ああ、そうだったのか。それは災難だったな」
多分、今の王子殿下は普通に縁談がなくなったと思っているはず。本題はここからなわけで。
「婚約破棄を受けたんです。なんだかヨシュアは運命の人に出会ったみたいで」
「な、なんだそれは……? 婚約破棄に運命の相手だと?」
「はい、ヨシュアは確かにそう言ってました。さらに、その婚約破棄を誰もが聞いている食堂で行ったんです。つまりは……ここですね」
婚約破棄された場所にチェスター王子殿下と一緒にいるなんて、なにかの運命かもしれないわね。不思議な感覚だった。
「そんなことがあったのか。そして……あのような騒動に繋がったんだな」
「そういうことになります」
あ~あ、王子殿下に話してしまった。恥ずかしい部分を知られたくはなかったけれど……でも、怒ってくれているようだし、良かったのかもしれない。
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