捨てる神あらば、拾う世界あります

卯堂 成隆

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転生枕 4

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「ね、ねぇ……冒険者なんか雇ってどうするのさ。 村の周りにゴブリンがたくさんいるって本当なの!?」

 イングリッドが雇った冒険者を引き連れてギルドから出ると、その後ろでずっと会話を聞いていたクラウディオがすかさず質問の雨を降らしてきた。
 気持ちはわかるけど、答えるだけ無駄である。
 根本的に六歳児に話したところでついて行ける話ではない。

 だが、このまま無視していても、彼は諦めずに何度もしつこく聞いてくるだろう。
 ――あぁ、面倒くさい。
 イングリッドは溜息とともに立ち止まると、徹底してクラウディオを無視するための言い訳を作ることにした。
 
「説明する気はないけど、一応教えてあげる。
 そもそも、領主が村の周りに冒険者の立ち入りを禁止している時点でおかしいのよ。
 騎士団に警備を任せているというけど、そんなものは見たことも無いし。
 そもそも、あの村に騎士団を差し向ける価値なんて無いのよ。
 自分のところの兵士を動かすとそれだけで金が飛んで行くのに、村の自治体が自分勝手に冒険者を雇って問題を解決しようとするのを止めるのはなぜ?」
 そこでイングリッドはその指先をびしりとクラウディオの鼻先に突きつける。

「……ごめん、何を言っているのかすらさっぱりわからないよ。 どういう事なの?」
 案の定、クラウディオは悲しそうな顔でそう呟いた。
 そもそも、彼が質問を重ねる半分以上の理由が、単にかまってほしいからであると言うことに、悲しいかなイングリッドは気づかない。

 もはや呆然とするしかないクラウディオをさしおいて、イングリッドは自らの考えをペラペラとしゃべりだす。
 それは自分の考えをまとめるためであり、雇った冒険者たちへの事情説明をかねたものだ。

「つまり、あの村には冒険者を立ち寄らせたくない何かがあると考えるのが普通だわ。  こうも露骨だと、隠す気がないとしか思えない。
 たぶん、私たちや冒険者に知られると都合の悪いことがあるからよ」
 そして、領主がおかしなことをかけたその村が、ゴブリンに襲われて壊滅する。
 偶然にしては少々出来すぎだ。

「ねぇ、イングリッド。 それ、もしかして独り言? ねぇ、お願いだからわかるようにちゃんと話をしてよ!」
「無理。 それに最初に言ったでしょ? 説明する気は無いって。
 恨むなら、自分の頭のお粗末さだけにしておいてちょうだい」
 傍から見ても、とても六歳児が同じ六歳児に告げているとは思えない言葉である。
 そのあまりの口の悪さにクラウディオが哀れになったのか、冒険者たちの代表がおずおずと声をかけてきた。

「なぁ、いくらなんでもその扱いは可愛そうだろお嬢ちゃん。 おまえさん、本当に六歳か?」
「あら? 私が大人にでも見えるというなら、残念だけど雇う人間を間違えたようね」
 口元だけは笑っているが、目は氷のように冷え切っている。
 相手が反論しづらい言葉をしっかりと選んでいるあたり明らかに子供らしくないのだが、それが妙に似合っているからさらにおかしい。

「うわ、予想以上に言葉がキツっ!? 目を閉じていたら子供には絶対に見えんぞ」
「あら、ありがとう。 でも、褒め言葉はもうちょっと正しい使い方を勉強してからにしたほうがよろしくてよ?」
 護衛の冒険者たちを台詞一つで撃沈すると、彼女は先頭に立って下町の中でも特に治安の悪いところに入っていった。

「おいおいおい、こんなところに入ったらさらわれちまうぞ」
「そ、そうだよ……やめようよ、イングリッド」
 あわてて引きとめようとする一同だが、イングリッドは冷たい笑みとともに鼻で笑う。

「そのための護衛よ。 しっかり働いて頂戴」
 仕事だといわれれば引き下がるしかなく、縋るような目を向けてくるクラウディオに、冒険者たちはただ黙って首を横に振った。

 そして彼女は迷うことなく迷路のような下町を進むと、やがて一軒の酒場の扉を開いた。
 客が五人も入ったら一杯になってしまうような、カウンター席しかない狭い店である。
 とても六歳の少女が入る場所とは思えない。

「……ここは?」
「情報屋よ。 さすがに私たちが聞き込みをしてすぐに何が起きているかわかるとは思えないもの」
 いぶかしげな声を上げる冒険者たちに、イングリッドは極めて事務的な声で答えた。

「こういうのは、専門家に任せるに限るわ」
 そう告げると、彼女はなれた足取りでカウンターの一つに腰をかける。

「なんだ、お嬢ちゃん。 ここはアンタの来るようなところじゃないぜ」
「シルフの声を聞きたいわ」
「……意味がわかっているのか?」
「えぇ、情報を買いたいの」
「あんたに売るような者は何も無い」
「ドケチな領主がとある村に冒険者を立ち寄せらないようにしているんだけど、どういう風の吹き回しかしら?」
 そう告げながら金貨を投げる。
 店主はしばらくその金貨を凝視した後、忌々しげな顔でそれをつまみあげた。

「さぁな。 ここ数年、なにやら王宮勤めの魔術師共の出入りが激しい。
 だが、何をやっているかまでは誰もしらん」
 そう言って、店主は何枚かの銀貨をイングリッドに返す。
 この程度の情報では金貨の価値は無いという事だろう。

 だが、イングリッドは銀貨を受け取らずにさらに質問を重ねた。
「出入りしている魔術師の名前は?」
「悪いがそこまでは知らない」
 ――嘘だ。 この男がそれを知らぬはずも無い。
 だが、それ以上を話す気は無いのだろう。
 この辺が潮時か。

「……ま、今の信用じゃこんなものか。 情報屋としては正しいけど、ツレない話ね」
 そう言いながらイングリッドは突っ返された銀貨を拾って巾着に仕舞う。

「次はちゃんとしたツテを通してくれ。 誰に聞いたかは知らないが、迷惑だ」
「あらあら、私のことがわからないだなんてヤキが回ったんじゃない?」
「とっとと帰ってくれ。 お前のそのしゃべり方を聞いていると、忌々しい"美しさは罪ギルティック・ビューティー"を思い出す」
「あら、光栄だわ」
「……ケッ。 とんでもないガキが来ちまった」

「お前、なんで情報屋なんか知ってるんだよ。 しかも、慣れすぎだろ!」
「余計な詮索はプロの仕事らしくないわよ」

 魔物の群れをコントロールするための実験であることを知る。
 


 姿隠しの魔術を使って侵入。
 指令書を手に入れる。
 その証拠を手に入れ、領主に届けようとする。
 立ちはだかる悪徳冒険者。


 自分が囮になるので、少年が証拠を届けるように言う。
 ギリギリのタイミングで領主の配下の騎士がやつてきて、証拠を届けることには成功するが、少女は精霊を呼び出した代償で死ぬ。


 そして元の世界で目覚める。
 気がつくと、枕がなくなっている。


 やがて、その夢の中に出てきた幼馴染の少年の成長した姿である騎士の青年と出会う。
 不思議なことに、人間への嫌悪が消えている。
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