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4章 魔法少女と人神の祠

120話 魔法少女はちょっとキレる

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「んー、分からない。ちょっと読み返してみよう。」
読み返し戦法パート2を始めた。

 ふんふん、うんうん。回れー、オーバーヒートする前に終わらせないとダメなんだー!

 まず1つ。青の石は不正解だと思う。青は不正解は隣り合う。って言ってる中、青は不正解。と、不正解は隣り合わない。って言われてるんだから、青は嘘が書いてるってことだ。
 そこから導き出せるのは青。

「あと何個不正解があるかだけど……」

 確か壊すのは正解で……って、何で正解を壊すの?そこは不正解を壊そうよ。
 ……そうじゃなかった。

 私って、都合がいい頭してる気もしないでもないけど、そんな悲しい事実は無視に限る。

「こんなのパッと出てくる人なんていないよ。誰しも考えなきゃ無理、だから私の頭は普通。」
そんな言い訳を誰に聞かせるでもなく呟き、1人悲しくなる。

 ……あ。ふっ、なーんだ。簡単じゃん。
いや、これ気づいちゃった時さ、私の頭ってつくづく変な方向に向いてるなって思った。

 最初の文見たら、いきなり矛盾してた。赤が不正解、黒が不正解。
 1番上に不正解があるってことだから、上の黒か赤が不正解。
 最後にこれでもかって程、ヒントをくれてる。

 上の黒の下の赤は、上が不正解。下の赤は赤は不正解じゃなくて、左下だけ見ると怪しいけど……正解だと思う。

 だから、不正解は左上の黒の石と青の石だ!

「残りの赤と黒の石を壊しちゃえば、この面はクリアってことかな?」
面とか言ってるあたり、ゲーム慣れが出ている。ようやく2個目の謎を解けたことで、少し頬が緩む。

「石くらい魔法を使うまでも無い。ステッキで叩き割ればなんとかなるでしょ。」
1つ目の石の前まで来て、思いっきり振り下ろす。これを7回。非常にめんどくさくて、緩んだ頬が引き攣られる。

 確かステッキの能力に、スイングアップ的なやつがあった気がする。それのお陰で壊しやすくなってると思うから、楽で嬉しい。

「別に個人的な恨みは無いけど、私のために壊させてもらうよ。」
石の目の前でステッキを振り上げ、振り下ろすと同時にバァーンッ!!っと石が吹っ飛ぶ。

 お、おう。凄い、威力だね。

 残りの6個も同様にバァーンッ!!と、吹っ飛ばしていった。
 ちゃんと加減したため、後半の方は綺麗に割れた。

 最後の1個を叩き壊すと、なんか背後からゴゴゴゴゴゴガガッ!!と、変な音が鳴った。

「何っ!?」
バッと後ろを振り返ると、綺麗な長方形に壁がくり抜かれていた。

 やった、入口かな?次こそ神様がいたら嬉しいんだけど……私の頭みたいに都合は良く無いよね。

 あれ、なんでだろう。目から、汗が……

「……気を、取り直していこう。」
すん、と鼻をすすり、歩き出す。

 そして、2回目、3回目、4回目……と、何回か謎解きステージをクリアしていった。

 神様はって?うん、いないね。というか全然この迷宮的なところから抜け出せて無い。

「いつまでやればいいの!これ!?」
私は、謎解きのパズル的な何かを地面に叩きつけた。こう、ドシャーン!てな感じで。

 地面に減り込んだその何かを見て、私は今何をしているんだろうと虚しくなってくる。

「私は一体何をしてるんだろう。そもそもここ、どこだっけ?ちょっと待って、私って、何?」
なんか色々と疑心暗鬼になってきて、段々と自分が分からなくなった。

 ダメだーダメ。思い出せー。私は悲しい悲しい魔法少女。神様にこんな可愛い格好をさせられた、悲しい魔法少女。
 今日は神様に一言文句を入れるために、こうしてわざわざ足を運んでいる。

「だから、私はこんなゲームをするために来たんじゃない!!道を出せ!さもなくばこの祠を破壊するぞ!」
ヤケクソになった私は、魔力のことなど1ミリも気にせずに魔法を放とうとする。その時の顔は、悪魔のような顔だったんだろう。

 その顔を、私が見る事は永遠に無い。

 ほんとはミョルスカイでもぶっ放してやろうかと思ったけど、流石に可哀想だ。
 本音を言うと、そこまで魔力を消費する度胸が無いだけだ。

「……こうなったら、強行突破しよう。」

 魔力とか、どうせなんとかなる。ご都合主義で生きていこう。

 ステッキを腰に挿し、ミョルスカイを両手に抱える。
 魔弾装填、魔力充填、軌道調整、魔法調節、出力調整…………オールオッケー。

「トール!投擲!出力120%!」
引き金を引き絞り、轟音と共に弾丸が射出される。

 出力が高いお陰で、超高温となったトールの魔力は、壁と一緒に他の魔力を溶かしていく。
 弾丸の速度はいまだに衰えることはなく、遠くからドゴォ、ドゴォッ、と鈍い音が聞こえるを

 空気中に滞留したトールの雷が、徐々に隔たりを消滅させていく。

「久しぶりのレールガン、凄い、威力、だね。」
流石の魔力消費量で、少しふらついた。

 それでも壁には穴が開き、通れるようになっている。
 この先がゴールに繋がってくれていることを祈り、私は藁にも縋るような気持ちで壁を通り抜ける。

 カツ、カツ、カツ。ブーツの音がやけに響く。少し湿気ているような感じもする。

 壁の風穴を歩いてしばらく経った頃、外から風のようなものが吹いてきた。
 ここは海底にある祠、風が来るなんておかしいと思って走ってみたら、そこには予想外のものがあった。

「いや、ほんとにRPG?ボス戦の前にHPを回復させろってこと?」
いかにも魔力回復しますって感じの温泉が、何故かぽつんとある。

 室内、全方向石造り。何を思って設置したんだろ。バカじゃない?作った人。

 その先にはまだ弾丸の穴があったので、この先に人神がいるんだと思う。

「優しい設定だ、ミョルスカイ分くらいは回復させていこう。」
こんなところだ。絶対に人なんていないだろう、と高を括り、服を脱ぐ。

 私のインドアを示すような真っ白な肌に、筋肉なんてものを極限まで削ぎ落とした細い体が見える。

「見た目は痩せてないよ、脂肪があるし。」

 それはそれでダメでは?というツッコミは、ゴミ箱に丸めて捨てるからよこしなさい。

「ご都合主義は、やっぱり物語の主人公やってくるのがお決まりだね。」

 勝手に自分を主人公に置き換える、自意識過剰の私であった。
 まぁ、転生とか言ったら主人公の特権だしね。

 クラス転生とかいうワードもあるけど、今はほっとこう。

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 魔法少女と温泉と祠。全く合わない組み合わせとはこのことです。
 例えば饅頭に寿司を入れて、唐辛子をかけて食べるくらい合いません。(もしこの食べ方をしている人がいたらすいません)







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