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6章 魔法少女と奴隷商の国

171話 魔法少女は実力を見せる

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「はぁ……なんでこういうバカはそう決闘したがるのかな?ギルマス、教えて。」

「知らん。やるなら勝手にやってくれ。3回目は流石に付き合ってられない。」
目を瞑って片手を上げ、適当な感じを出していた。

 えぇ、無責任な……
 ギルマスなんだからなんとかしてよ!

 心の中で恨み言を吐いていると、男は「どうするんだ?」と言って私を睨む。

「別に決闘する必要もなくない?」
「なんだ、逃げるのか?」

「いいの?骨の1、2本、折っちゃうかもね。」

「そんな事言ってられるのも、今のうちだぞ。」
なんか弱そうなセリフだな、と思いながら、ステッキを机に立てかけて指を鳴らす。

 指空き手袋が嵌まった手が、コキコキと小さく鳴る。
 なんかしょぼい。

「はっ、大人しく家に帰り……」
言い終わる前に、私は少し早めに歩いた。

 すると。

「いただだだだだだぁーー!」
絶叫が轟く。

 常人からしたら目に移るかギリギリのスピードだからね、私の歩くスピードについてこれるとでも?

「簡単に予想できる末路だったな。」
フィリオが真顔で言った。

「適度なところでやめておけよー。」
ギルマスが、関節をキメてる私に言った。

 今の状況を簡潔に説明すると、背中に乗って左膝でで押さえ、右手で左手を逆に曲げ、もう片方の手は首に添えている。

 いわゆる、関節技をキメている。

「ギブ、ギブー!やめろ、分かっ……あぁぁ!!」
悲鳴がギルド内を埋め尽くし、冒険者達は目を見開いていた。

 それは、この光景にではなく私のスピードに対して驚いている。

「これで分かったと思うけど、物理もいけるよ。」
「分かった、分かったから離してくれぇぇ!!」
また叫ぶ。

「うるさい。」
強く腕を曲げると、事切れたかのように倒れた。

「ライ、あれはどうにかなるか?」
「体はどうにかなりそうですが、心はどうにもできませんね。」
そう言って謎の瓶を取り出し、男に向かって投げる。

 パリンッ、と小気味いい音が響く。

「自己紹介がまだでしたね。ぼくはライ、こっちはトイン。ぼくは、調合術師なんだけど……細かいことはおいといて、よろしくね。」
背中から離れると、ライという人が名乗り始めた。

「よろしく頼もう。」
トインと呼ばれた人も頭を下げ、女性の方も「アタシも名乗っとこうか」と言って、立ち上がる。

「ワタシはレイティー。魔道具に周囲の魔力を入れてレーザーを放つ、それがアタシのスタイル。」
既視感を抱く、八卦路はっけろのような魔道具を見せてくる。

 一気に自己紹介してきたね……戦い方とかも喋ってるし。
 私もしたほうがいいのかな?

「じゃあ私も。私は空、これでも一応魔法使いだから。」

「終わりの雰囲気出すな!まだ終わってないぞ!」
男が叫び、適当に自己紹介を終わらせた。

 えっと、ライ、トイン、レイティー、ウェント。この4人と奴隷商の国に行くのね。

 1番右の人は要らないけど、必要なんだもんね。

「あ、そういえばこの人達って魔物襲来の時居なかったよね。どこに行ってたの?」
「遠征だ。」
ギルマスが答える。

「高ランク冒険者は大抵、遠出して帰ってこないのが普通だ。」
お前が異常なんだぞ、と余計な一言を付け足された。

 何が異常なのさ。私は健全な魔法少女じゃん。

「そんなことはどうだっていい。もう1度依頼の確認するぞ。」
私の問いはもうどこかに捨て、本題に入っていく。

 どうでもよくないよ。私の中では重要だよ。

 頭で文句を吐きながら、仕方ないと聞くことにする。

「エンヴェルへ行き、魔物襲来に関わっている可能性のある人物、またはチームを探せ。そして捕らえろ。やり方は各自に任せるが、手荒すぎる真似はやめてくれ。」
いつもより数段声のトーンを下げ、明らかに真面目に話を続ける。

「そして、死ぬな。自分の命を優先して考えてくれていい。無事に戻ってこい。」
そう言われ、解散となった。

 移動までは少し時間があり、家族や恋人に別れの挨拶をしたり、暇をここで持て余したりしていいそうだ。

 もちろん私は後者だ。

「馬車、ねぇ。」
何何頭かの馬がいて、それをじっと見つめていた。

 正直バイクの方がいいのに。魔力効率もいいし、速いし。
 現地集合がいいんだけど。

 叶うはずもない願望を思い浮かべてると、レイティーと名乗った女性が近づいてくる。

「さっきは災難だったわね。ま、よくあることよ。気にしないで。」
「あ、はい。」

 うん、よく分かる。これ3回目だもん。流石にもう慣れた。

「アイツはほっといて、ワタシたちは仲良くしましょう。」
「はぁ。」
適当に相槌を打っていると、鎧を着た男がやってくる。

「先の戦い、見事だった。賞賛に値する。」
淡々と告げる。上から目線だけど、妙に板についている。

 やっぱり高ランク冒険者ほど、個性は強いものなんだね。
 トップレベルの人は、王国とかの専属騎士になるイメージで、残るのは癖の強い人だっていうね。

 とりあえず話そうと思い、話題を振る。

「さっき、ライって人と仲良さそうだったけど。知り合い?」
「そのようなものだ。」

「調合術師って珍しいの?」
「そうだな。咄嗟に状況にあった薬品をチョイスし、完璧に調合し、それを戦闘中に行う。常人の技ではない。」

「補助系?」
「場合による。転換系と呼んでいる。」

「転換系?」
「状況によって役割が様々ということだ。」
こんな感じで、問答を繰り返していた。

 分かったのは、調合術師って凄いってことだった。

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 この世界、特殊系は大抵強いです。
 理由は単純明快。他の冒険者は、剣とかしか使えないからです。

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