高レベルパーティの奴隷にされた僕

かわうそ

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第三話 闇の中でなにも見えず

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 山賊のアジトに連れて来られたマリスは、納屋に設けられた牢の中に押し込められていた。
 剥き出しの地面の上に、膝を抱いて座っている。杖も、帽子も、ローブまでも取り上げられてしまった。ここは少し寒い。
(ごめんなさい…お師匠様……)
 食事どころか、水さえも与えられていなかったが、それは別にいい。食欲などあろうはずもなかった。
(僕、奴隷にされちゃうのかな……?)
 ゆらゆらと揺れる蝋燭の火を虚ろな瞳で見つめながら、そう胸中で独りごちる。
 と、納屋の入り口で椅子に座っていた、見張りの男が立ち上がった。
「おっ、交代か?」
「あぁ、あとは任せな」
 今までいた男が立ち去り、交代の男がこちらに近づいて来る。確か、女が抱きたかったと言っていた男だ。
 食事を持っているわけでもなく訝しんでいると、男は牢の鍵を開けた。
 マリスは反射的に距離を取ろうと後ずさったが、狭い牢の中、当然すぐ背中をぶつけてしまう。
「な、なんなんですか?」
「へへっ、確かによく見りゃべっぴんだぜ。これなら、俺の息子もおっ勃ちそうだ」
 ぎらぎらとした男の目が、彼がなにをしようとしているのかを物語っていた。
「こ、来ないで!」
 両手を前に突き出して精一杯の拒絶を示すが、まったく無意味だった。
「そう怖がんなよ、可愛がってやろうってんだからよ~」
 男に手首を掴まれた瞬間、全身が総毛立った。腕から脳天まで突き抜ける耐え難い嫌悪感に、マリスは悲鳴を上げてしまう。
「いやぁぁぁぁぁっ!」
 同時、マリスの掌に光が生まれた。我知らず、魔力が発動しかかっている。
「えっ、なんで?」
 慌ててなんとか制御しようとするが、間に合わない。
「あぁ、ダメっ」
 暴走する魔力は火球となって、男に直撃した。
「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!」
 男の全身が、一瞬で炎に包まれた。パクパクと口を動かし、マリスの方に倒れ掛かって来る。
「ひぃっ」
 マリスは横に飛び退いて、それをかわした。
(なんてこと、しちゃったんだろう……)
 倒れ伏しなお燃え続ける男を幾ばくか見下ろすが、意識はすぐに開きっぱなしの牢の入り口に向いた。騒ぎを聞いて、間もなく山賊たちが駆けつけてくるだろう。
(逃げるなら、今しかない!)
 納屋の外へと、勢い良く飛び出す。辺りは真っ暗で、来た方向すら判然としない。
(とにかく、遠くに)
 マリスは適当に方向を決め、駆け出した。
「うぅっ」
 手に痛みを感じて見ると、どうやら火傷をしているらしかった。手順を踏まずに魔術を発動させてしまったせいだろう。
(魔力の暴走は魔術師にとって一番恥ずかしいって……感情を抑えろって散々、お師匠様に言われたのに……やっぱり僕は未熟だ……)
 故郷の師を思い出して泣きそうになるのを、唇を噛んでぐっと堪えた。とにかく今は逃げなければ。
 森の中に入ると闇は一層濃さを増して、マリスの未来を暗示するように、一寸先も見えなくなっていた。
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