どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい

海亜

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2章:1歳になったらしい

11話:上見館陽夏凛の怒りとそれぞれの気持ち

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「な、何を言っているの?陽夏凛さん。演技なんてしてないわよ。それに、何に対して演技しているというの?」

陽夏凛の急な言葉に双美は戸惑った声で聞く。

「簡単ですよ。璃杏様に対してです。あなた方は璃杏様に対して恐怖心を抱いています。」

いつもの笑顔から一変陽夏凛の顔は表情のない人形のようになっていた。

「何を言っているの陽夏凛さん!!私達は璃杏を大切にしているわ!!」

必死に陽夏凛に言う白百合。

「それは分かっています。ただ、許せないんですよ。偽りのない愛もあなた方は璃杏様に対して向けていることも分かります!!でも、なんで怖いと思った時に無理に可愛がろうとするんですか?」

白百合を見つめる陽夏凛。

その目は嘘は絶対に許さない威圧も満ちた目をしている。

「そ、れは・・・・傷つけたくないから、よ。璃杏はまだ幼いし周囲からの視線なんてまだ気づかなくていいと思うの。悲しんでいるところなんて見たくないもの。」

白百合は視線を落して言う。

白百合の身体は少し震えているようにも見える。

そんな白百合に気づいた羽琉は白百合に肩を抱き寄せる。

「それに、璃杏はまだ幼くて知りたくないこともまだ知らなくていいと思うんだ。魔力だってまだどれくらいあるのか分からないから3歳になったら調べるんだ。璃杏だってその方が安心だしその魔力にそって対策を練れば安全に璃杏も過ごせる。」

微笑んで陽夏凛を見る羽琉。

でも、その視線は何処か刺がある。

「傷つけたくない?悲しませたくない?まだ気づかなくていい?知らなくていい?・・・・・ふざけないでくださいよ!璃杏様のためを思ってなのでしょうが自分のためにやってるようにしか聞こえないんですけど!!!傷つきたくないのはあなた達でしょう?周囲の視線に気づかなくてもいいって幼いからわからないと思ってるんですか?幼くても分かりますよ。周囲がどんな視線を自分に浴びせているか。悲しんでるところを見たくないってそれをあなた達がするのでしょう?今は銀色の髪で恐れているようですが魔力が強ければあなた達が璃杏様をもっと恐れることは分かっています。1番嫌なのは愛して大切に育ててくれていると思った人達の愛はただの演技にすぎず除け者になった時ですよ!そうなった時とても悔しくて苦しくて悲しくて辛いことしかないんです!!そんな経験したことないから言えるんです!私の人生はせん・・・・いえ、なんでもありません。でも、少しは璃杏様の気持ちも考えたらどうですか?私たちにないからと言って除け者や忌み子なんて言われるなんて心外です!!では、失礼します。」

陽夏凛はそのまま白百合の部屋から出ていった。

バタンッ

陽夏凛は数歩歩いたところで立ち止まり溜息を吐く。

「はああ。流石に言い過ぎたかもしれないけど私の本心であり璃杏を守るためにはこうしないといけない。たとえ憎まれようと何だろうと璃杏ちゃんにはあんな思いさせたくない。でも、セーフ!自分の正体言うところだったよー!今日はゆっくり休むとしますか。」

また陽夏凛は歩き出した。

夜の月光が陽夏凛を照らす。

陽夏凛の姿はいつもと全く違う。

まるで・・・・・・淡い光の女神のようだった。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

陽夏凛が部屋を出ていったあとの部屋の中はとても静まり返っていた。

「・・・・・・陽夏凛さんの言う通りだわ。」

沈黙が続く中白百合が口を開いた。

「白百合?何を言って。」

肩を抱き寄せている手を離し白百合と目を合わせる羽琉。

「確かに私は璃杏が怖かった。私たち両親には銀の髪はいないましてやこの国には銀の髪の人なんて存在しない・・・・・そんなのただの・・」

『化け物』白百合はそう言いそうになった。

でも、言ってしまったなら璃杏という存在を否定し後々残るのは後悔しかない。

「僕も璃杏と久しぶりに会った時はびっくりしたよ。同時に不気味にも思った。結恵さんに会った時も僕は結恵さんを見た時の第一印象だった。最低だとつくづく思うよ。」

悔しそうな表情で言う羽琉。

「だが、あいつの言っていることは今後におけるような事だろう?別にあんなに怒らなくても。」

不思議そうに言う楓斗。

「違うわ!!陽夏凛さんは璃杏様に同じ目にあって欲しくなくて私達に怒ったの璃杏様のために。それに、今後におけるとかじゃない今まさに起こっていることよ。私も正直璃杏様が怖いわ。でも、月鍵家の一人娘だから大切にしなくてはと思っても恐怖心が勝ってしまう。本当にどうしたらいいのか。」

双美さんは楓斗の言葉を否定し心の内を明かした。

「でも、璃杏様はとても不思議な方ですよね。僕も初めは先輩達に押し付けられた、みたいな感じでした。僕も先輩達も璃杏様を恐怖視してました。でも、璃杏様はこの頃僕を見かける度に手を振ってくださいます。小さな手で頑張って。その度に思うのですああ、この小さな命を守りたいと。璃杏様は確かに人とは違うものをたくさん持っているんだと思います。でも、それで嫌ってしまうのは何か違うと思います。そして、璃杏様が4歳になられた時僕は立派な守護騎士になりたいと思います。すみません。偉そうなことを言ってしまって。僕もそろそろ戻らせて頂きます。」

優しく微笑み璃杏について語る空桜。

その表情は愛おしくそれでいてとても大切そうな表情をしている。

空桜はそのまま部屋を出ていった。

バタンッ

「・・・・・・・私、璃杏のことしっかり見てなかった。」

ぽつり白百合は呟いた。

「そうね。私も見ていなったわ・・・・・あんな風に思えるなんて素晴らしいことだものね。」

白百合に微笑んで双美は答えた。

「そうだね。璃杏は璃杏であって忌み子でも何でもない。・・・・ねえ、3人ともひとつ聞きたいことがあるんだけど。陽夏凛さんが怒ってる途中に陽夏凛さんの瞳が深緑色に変わったんだ。見てない?」

真剣な顔で確かめる羽琉。

「俺は見てないぞ?」

首を振る楓斗。

「瞳の色が変わった?・・・・私も見てないですよ。」

少し考えたが当てはまらなかったのか首を振る双美。

「私も見ていませんわ。」

白百合も首を振り否定する。

「そう、か。どうやら璃杏の事だけじゃなくて陽夏凛さんについても少し調べないといけないね。」

戸惑った表情をした後真剣な顔をして言う羽琉。

「陽夏凛さんも不思議な方ね。分かりました。無理はしないでくださいね。では、解散しましょう。」

白百合の合図でそれぞれ部屋を出ていく。

バタンッ

扉が閉まるのを見届け白百合はひとつ溜息を吐く。

「はあ、何故かとても嫌な予感がするわ。今日とか明日起こるわけではなくいつか何か悪いものが来る嫌な予感がする。」

そう言って白百合は目を瞑った。
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