やらかし夫夫(ふうふ)、番(つがい)になる

スメラギ

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やらかしたオメガのお話し…

03

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 そんな僕の思いなんて知った事か…と言わんばかりに話は進んでいく…。

 「あかし入って来て。」

 という義輝よしきという男の言葉に僕が入って来たドアの扉が静かに開いた。

 「この『おに』が君の世話係だよ。暇潰しに君の世話係をかって出てくれたんだ~。良かったねぇ。」

 聞けばあかしという『おに』は泰虎やすとらという男の『庇護鬼ひごおに』というやつらしい…。

 泰虎やすとらあかしの上司のような立場にあるという事だ…。

 「泰虎やすとらと連携して君の安全…貞操を守ってくれるから安心して良いよ。君は『オメガ』だからねぇ。万一があっては困るから。君の命運は崇陽たかあきが握ってるから。『性格の矯正』をお願いされただけ…だからねぇ。『好きにして良い』とは言われてないから…」

 そう言って妖しく笑う目の前の男に寒気がした…。

 「ま、君は僕に今のところ実害は無いから…それなりの保証はしてあげるよ」

 裏を返せば、この『おに』の機嫌を損ねる事があれば、僕は即座に切り捨てられる…。もしくは、崇陽たかあき様の返事次第という事かもしれない…。

 そういう事だろう…。

 「分かりました。」
 「ふふ、話が早くて助かるよ。駄々をこねられたらどうしようか・・・・・・と思っていたところなんだ~」

 なんて人の良さそうな笑みを浮かべているがー…こちらからすれば肝が冷える思いだ。

 「あぁ、今更だけど僕は『義輝よしき』。以後、よろしく~。な~んてね!」

 そう言ってクスクスと笑っている。こちらとしては笑い事ではない…。僕は機嫌を損ねてしまわないように引き攣る口元をムリヤリつり上げた。
 口元が引き攣っている自覚はある。手が足が…膝が震えている自覚はある。

 そんな僕を面白そうな表情を浮かべて観察するように見ている。面白そうな表情とは裏腹に目の奥は冷え冷えとしており、こちらの肝を冷やし続けている…。

 「ふふ、怖がってるのバレバレだよ。」
 「も、申し訳ございません。」
 「いや、構わないよ。寧ろ、好感の持てる反応だね。これで僕に色目でも使ってきてたらー…消してたよ。」

 なんて低い声音で言われた時にはヒュッと喉が鳴った。

 「なーんてね。冗談だよ。冗談。」

 そう言って笑っているがー…、こちらとしては全く笑えない…。

 「ふふふ…じゃあ、泰虎やすとらあかし…後は任せるよ。仕事内容はあかしに話してあるから。」

 そう言ってヒラヒラと手を振った義輝よしきという『おに』はこちらに興味が失せたかのようにパソコンを開き、カタカタとキーボードを打っている。

 泰虎やすとらという『おに』は僕を一見すると、身を翻した。どうやらついて来いという事らしい…。
 僕は逡巡した後に、軽く義輝よしきという『おに』へ一礼してから泰虎やすとらという『おに』の後を追った…。
 
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