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エピソード・3 injury
3-20 溝
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「とても心穏やかではいられなくなるけれど、素直に言えば、あなたのこと心配しているのよ。友だちとして」
最後に友だちとして。と言う言葉を強調して言わないでも良いのではないだろうか。
しかし、心配、か。
「悪いな、心配させて」
「謝られても困るのだけれど」
珍しく本当に困ったように眉を顰めた蕪木は、座ったまま体をこちらへ向けた。
蕪木の顔が自分の正面に向けられている。
魅力的な顔だ。
これまでも何度も見てきていたはずだし、お互いの顔が触れ合う間近まで迫ったばかりだ。それでも、何度見ても惹きつけられるその顔に、自分は上手く目線が合わせられない。
それが友だちである、蕪木に対して失礼なことにあたると分かっていても、だ。
「何を話していたのか、何をしたのか、それをあなたの口から吐かせることをわたしは強要することができない」
「…………」
一昔前はカッター(刃無し)で強要していただろ。とは言わない。
「だけど、悔しいじゃない。あなたの友だちとして他の二人よりも繋がりは浅いとしても、同じくらい。いえ、それ以上に」
「……蕪木」
「話してくれないかしら、あなたの中にあるもの。全てを」
ちゃんと受け止めるから。と蕪木は示してくれているのだろう、顔だけじゃなく体も含め全身をこちらへ向けた。
「…………」
お前は、そうなんだよな。
いつも、誰よりも友だち思いで不器用で直情的で繊細な蕪木は、友だちである自分の後悔を敏感に察したのだろう。
助けに成りたい。力に成りたい。
お前ならそう言ってくれるって、すぐに分かったさ。
それでも、
「悪い、断るわ」
絶対にお前だけには言えない。
「……理由を、聞いても?」
「……へそがひん曲がっているから。ということにしてくれ」
酷い言い訳だった。自分で自分をぶん殴ってやりたいって思うほど。
きっと蕪木も同じことを思っただろう。それでも優しすぎる蕪木は唇を奥歯で噛み、アイロンをしてもとれないほどの皴ができる力でスカートを握る。
「本多、わたしたちは友だちになれたものだと思っていたのだけれど」
「ああ、そうだな」
自分たちは互いに友だちだって認め合っていて、友だちでありたいと思っている。その想いは例え神様が否定したって覆せないことだ。
だけどな、蕪木。
「友だちになったばかりだぜ、おれたち」
「っ! 時間なんて」
「関係、あるよ」
「っ……」
非情なまでにどこまでも、自分は蕪木を突き放す。友だちとして最低なことをしていると分かっていても。分かっていても、突き放した。
だからだろう、ここまで耐えてきた蕪木だったが遂に、スカートを握る手を放した。
そして、
「そうね……配慮が足りなかったわ」
諦めてしまったかのように、自分へ謝った。
「あ。いや……すまん」
「あなたが謝ることではないわ」
「だけど」
「謝らないで!」
「っ」
自業自得だというのに蕪木に突き放された自分は、痛む胸を抑える。
そんな自分を映す蕪木の瞳は酷く揺れていた。
「ごめんなさい、少し感情的になりすぎたわ。頭を冷やすために今日は帰るから」
「……蕪木」
力なく自分は蕪木の名前を呼ぶのだけれど、立ち上がった蕪木の耳には届かず、自分に背を向け蕪木は図書室を去っていく。
自分は椅子に座ったまま視界から消えていくその背中を見送ることしか出来なかった。
最後に友だちとして。と言う言葉を強調して言わないでも良いのではないだろうか。
しかし、心配、か。
「悪いな、心配させて」
「謝られても困るのだけれど」
珍しく本当に困ったように眉を顰めた蕪木は、座ったまま体をこちらへ向けた。
蕪木の顔が自分の正面に向けられている。
魅力的な顔だ。
これまでも何度も見てきていたはずだし、お互いの顔が触れ合う間近まで迫ったばかりだ。それでも、何度見ても惹きつけられるその顔に、自分は上手く目線が合わせられない。
それが友だちである、蕪木に対して失礼なことにあたると分かっていても、だ。
「何を話していたのか、何をしたのか、それをあなたの口から吐かせることをわたしは強要することができない」
「…………」
一昔前はカッター(刃無し)で強要していただろ。とは言わない。
「だけど、悔しいじゃない。あなたの友だちとして他の二人よりも繋がりは浅いとしても、同じくらい。いえ、それ以上に」
「……蕪木」
「話してくれないかしら、あなたの中にあるもの。全てを」
ちゃんと受け止めるから。と蕪木は示してくれているのだろう、顔だけじゃなく体も含め全身をこちらへ向けた。
「…………」
お前は、そうなんだよな。
いつも、誰よりも友だち思いで不器用で直情的で繊細な蕪木は、友だちである自分の後悔を敏感に察したのだろう。
助けに成りたい。力に成りたい。
お前ならそう言ってくれるって、すぐに分かったさ。
それでも、
「悪い、断るわ」
絶対にお前だけには言えない。
「……理由を、聞いても?」
「……へそがひん曲がっているから。ということにしてくれ」
酷い言い訳だった。自分で自分をぶん殴ってやりたいって思うほど。
きっと蕪木も同じことを思っただろう。それでも優しすぎる蕪木は唇を奥歯で噛み、アイロンをしてもとれないほどの皴ができる力でスカートを握る。
「本多、わたしたちは友だちになれたものだと思っていたのだけれど」
「ああ、そうだな」
自分たちは互いに友だちだって認め合っていて、友だちでありたいと思っている。その想いは例え神様が否定したって覆せないことだ。
だけどな、蕪木。
「友だちになったばかりだぜ、おれたち」
「っ! 時間なんて」
「関係、あるよ」
「っ……」
非情なまでにどこまでも、自分は蕪木を突き放す。友だちとして最低なことをしていると分かっていても。分かっていても、突き放した。
だからだろう、ここまで耐えてきた蕪木だったが遂に、スカートを握る手を放した。
そして、
「そうね……配慮が足りなかったわ」
諦めてしまったかのように、自分へ謝った。
「あ。いや……すまん」
「あなたが謝ることではないわ」
「だけど」
「謝らないで!」
「っ」
自業自得だというのに蕪木に突き放された自分は、痛む胸を抑える。
そんな自分を映す蕪木の瞳は酷く揺れていた。
「ごめんなさい、少し感情的になりすぎたわ。頭を冷やすために今日は帰るから」
「……蕪木」
力なく自分は蕪木の名前を呼ぶのだけれど、立ち上がった蕪木の耳には届かず、自分に背を向け蕪木は図書室を去っていく。
自分は椅子に座ったまま視界から消えていくその背中を見送ることしか出来なかった。
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