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第5話 決闘の時間
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俺とマイラが決闘の場所として選んだのは、平民クラス専用の訓練場である。
専用とは言えども"いい意味"なんかではなく、どちらかと言えば"悪い意味"だ。
「うわっ、こりゃあ酷いな」
入り口の扉を開けると、まず感じたのは、何年もろくに整備がされてないからこその埃臭さ。
奥の方の床は腐り落ちており、壁のあちこちに魔法かなにかで作った痕跡が見えていた。
天井も崩れたのか、落ちた鉄材が床に突き刺さっていた。
----ボロボロな訓練場。
この訓練場だけ見ても、魔法学校が俺達平民クラスの事をどう見ているかが分かるものだ。
「あとで、この訓練場もなんとかしないとなぁ~。俺達平民クラスの魔法訓練のためには、あまりに不衛生すぎる」
先生からの業者の導入は----当てには出来ないだろうなぁ。
そもそも、それが出来るのなら、ここまで状況は悪くならなかっただろうし。
「あらぁ? もう勝った際の段取りを? いささか、わたくしを舐めすぎじゃないかしら?」
「おぅ……」
ヤバイ、今の発言は侮辱に聞こえてしまったか。
まぁ、マイラからしてみれば、早く平民クラスから追い出したくて仕方がないからな。
平民クラスの今後を考えるなんて、俺が勝った前提の話だもんな。
「まぁ、良いわ。お貴族様が平民を下に見ているのは、今に始まったことではないかしら」
「辛辣、過ぎはしないかな? 貴族に対して」
「平民なら、当たり前の感情だと思うんだけど? 貴族に対して、ちょっとばかり苦手意識を持つのは。
貴族が平民を蔑むのと、同じようなことですよ」
それにしては、かなーり悪感情が強い気がするけどね。
「それよりも、決闘を始めましょう。やらなければならない事は、すぐにやるのが、わたくしのモットーなので」
敵意を持って、彼女は俺から距離を取って陣取った。
気合は十分、いつでも俺なんかはすぐに倒せるという意思表示かなにかだろう。
「良いぜ、そういう意思事態は嫌いじゃない」
俺もまた、彼女と距離を取った場所に位置取る。
「さて、戦いの前に条件を決めておきませんと」
今すぐ決闘を始めようかと思ったのだが、彼女はそう話を切り出した。
多分だけど、戦う前に決めといた"俺が魔法1種類しか使わない"というルールの事だろう。
「(覚えていたか……)」
まぁ、自分にとって有利に働く条件だ。
頭の片隅以前に、自分が勝つために絶対に忘れない事は予想がついていた。
「良いだろう。条件を決めたのはこちら、だからな。
だから最初に忠告してやる。俺の得意な魔法は、植物魔法だ」
"火"、"水"、"土"、"風"、"雷"。
魔法ってのは、この5つに分類されるのだが、植物魔法はこのうちの"土"と"水"を合わせたものだ。
応用が利く、素晴らしい魔法で、俺が一番得意な魔法なのだ。
「そう。なら、わたくしは、"風"属性の魔法----初級魔法の"風起こし"だけで戦ってもらうという条件にしてもらおうかしら?」
「ほぉ~」
考えてきたな、マイラ。
その魔法の選択が出来るって事は、コイツは魔法を良く知っている。
植物魔法と聞いて、"土"と"水"の魔法であると言う事を理解し。
残った3つのうち、一番攻撃力が低い"風"の魔法属性を。
その上で、数ある"風"属性の初級魔法のうち、"風を起こして喚起する"という用途につかわれる"風起こし"の魔法を指定するとは----
「(コイツ、魔法をかなーり知っているな。普通だったら、一番弱い魔法を、とか言いそうなのに)」
「どうしたのかしら? まさか、使えないなんて言い訳をするつもりじゃ、ないわよね?」
彼女が笑いながらそう言うので、俺は手の上で、小さく風を吹かせて見せる。
分かりやすいように、彼女と同じ赤い髪を数本、巻き上がらせて。
「~~~っ! あなた、いつの間にわたくしの髪を!?」
「良いから、始めるぞ」
「~~~っ! 後悔させて差し上げますわ!」
と、マイラは杖を出す。
杖の先には、ビリビリと、雷が溜まっていた。
「(なるほど、"雷"属性か)」
"雷"属性が相手、か。
だとしたら、気は抜けない。
"雷"は5つの魔法属性のうち、最も射程距離が長い魔法の属性だ。
距離を取られると、風を起こして巻き上がらせる程度の魔法しか使ってはならぬ俺だと、負けてしまうかもしれない。
「(だが、そのくらいしてもらわないとな)」
そうでないと、楽しめないじゃないか。
久しぶりの魔法での対決、せいぜい盛り上げてもらおうじゃないか。
「さぁ、ラスカ級長。合図を」
「えぇ、お願いしますわ。ラスカさん」
俺とマイラが決闘の合図を催促すると、催促された級長は涙を流しながら俺達を見ていた。
「うぅ……いきなりクラスメイト同士の対決だなんて、ここは協力しないと----」
「「良いから! 速く!」」
いつまで泣かれていても話は進まないので、俺がそう言おうとした時、ちょうど、同じように考えただろうマイラとタイミングが合ってしまった。
「……////// 合わせないで欲しいですわ//////」
「偶然だ」
それよりも、なんか顔が赤い気がするな。
恥ずかしかったの、だろうか?
「と、とにかく! じゃあ、始めて!」
キョトンとしてる間に、なんだか間の抜けた感じで決闘の合図が鳴ったのであった。
==== ==== ====
【Tips】魔法属性
魔法とは神々から力を借り受ける者と考えられており、魔法を司る神は5柱。破壊力のある"火"、持続力の高い"水"、精密動作性を要求する"土"、素早い"風"、射程距離が長い"雷"の5柱の神であり、そのため、魔法属性は5つと考えられている
なお、回復魔法を得意とする"光"属性は"土"の亜種、相手の力を吸い取る"闇"属性は"火"の亜種なんじゃないかとされている
==== ==== ====
専用とは言えども"いい意味"なんかではなく、どちらかと言えば"悪い意味"だ。
「うわっ、こりゃあ酷いな」
入り口の扉を開けると、まず感じたのは、何年もろくに整備がされてないからこその埃臭さ。
奥の方の床は腐り落ちており、壁のあちこちに魔法かなにかで作った痕跡が見えていた。
天井も崩れたのか、落ちた鉄材が床に突き刺さっていた。
----ボロボロな訓練場。
この訓練場だけ見ても、魔法学校が俺達平民クラスの事をどう見ているかが分かるものだ。
「あとで、この訓練場もなんとかしないとなぁ~。俺達平民クラスの魔法訓練のためには、あまりに不衛生すぎる」
先生からの業者の導入は----当てには出来ないだろうなぁ。
そもそも、それが出来るのなら、ここまで状況は悪くならなかっただろうし。
「あらぁ? もう勝った際の段取りを? いささか、わたくしを舐めすぎじゃないかしら?」
「おぅ……」
ヤバイ、今の発言は侮辱に聞こえてしまったか。
まぁ、マイラからしてみれば、早く平民クラスから追い出したくて仕方がないからな。
平民クラスの今後を考えるなんて、俺が勝った前提の話だもんな。
「まぁ、良いわ。お貴族様が平民を下に見ているのは、今に始まったことではないかしら」
「辛辣、過ぎはしないかな? 貴族に対して」
「平民なら、当たり前の感情だと思うんだけど? 貴族に対して、ちょっとばかり苦手意識を持つのは。
貴族が平民を蔑むのと、同じようなことですよ」
それにしては、かなーり悪感情が強い気がするけどね。
「それよりも、決闘を始めましょう。やらなければならない事は、すぐにやるのが、わたくしのモットーなので」
敵意を持って、彼女は俺から距離を取って陣取った。
気合は十分、いつでも俺なんかはすぐに倒せるという意思表示かなにかだろう。
「良いぜ、そういう意思事態は嫌いじゃない」
俺もまた、彼女と距離を取った場所に位置取る。
「さて、戦いの前に条件を決めておきませんと」
今すぐ決闘を始めようかと思ったのだが、彼女はそう話を切り出した。
多分だけど、戦う前に決めといた"俺が魔法1種類しか使わない"というルールの事だろう。
「(覚えていたか……)」
まぁ、自分にとって有利に働く条件だ。
頭の片隅以前に、自分が勝つために絶対に忘れない事は予想がついていた。
「良いだろう。条件を決めたのはこちら、だからな。
だから最初に忠告してやる。俺の得意な魔法は、植物魔法だ」
"火"、"水"、"土"、"風"、"雷"。
魔法ってのは、この5つに分類されるのだが、植物魔法はこのうちの"土"と"水"を合わせたものだ。
応用が利く、素晴らしい魔法で、俺が一番得意な魔法なのだ。
「そう。なら、わたくしは、"風"属性の魔法----初級魔法の"風起こし"だけで戦ってもらうという条件にしてもらおうかしら?」
「ほぉ~」
考えてきたな、マイラ。
その魔法の選択が出来るって事は、コイツは魔法を良く知っている。
植物魔法と聞いて、"土"と"水"の魔法であると言う事を理解し。
残った3つのうち、一番攻撃力が低い"風"の魔法属性を。
その上で、数ある"風"属性の初級魔法のうち、"風を起こして喚起する"という用途につかわれる"風起こし"の魔法を指定するとは----
「(コイツ、魔法をかなーり知っているな。普通だったら、一番弱い魔法を、とか言いそうなのに)」
「どうしたのかしら? まさか、使えないなんて言い訳をするつもりじゃ、ないわよね?」
彼女が笑いながらそう言うので、俺は手の上で、小さく風を吹かせて見せる。
分かりやすいように、彼女と同じ赤い髪を数本、巻き上がらせて。
「~~~っ! あなた、いつの間にわたくしの髪を!?」
「良いから、始めるぞ」
「~~~っ! 後悔させて差し上げますわ!」
と、マイラは杖を出す。
杖の先には、ビリビリと、雷が溜まっていた。
「(なるほど、"雷"属性か)」
"雷"属性が相手、か。
だとしたら、気は抜けない。
"雷"は5つの魔法属性のうち、最も射程距離が長い魔法の属性だ。
距離を取られると、風を起こして巻き上がらせる程度の魔法しか使ってはならぬ俺だと、負けてしまうかもしれない。
「(だが、そのくらいしてもらわないとな)」
そうでないと、楽しめないじゃないか。
久しぶりの魔法での対決、せいぜい盛り上げてもらおうじゃないか。
「さぁ、ラスカ級長。合図を」
「えぇ、お願いしますわ。ラスカさん」
俺とマイラが決闘の合図を催促すると、催促された級長は涙を流しながら俺達を見ていた。
「うぅ……いきなりクラスメイト同士の対決だなんて、ここは協力しないと----」
「「良いから! 速く!」」
いつまで泣かれていても話は進まないので、俺がそう言おうとした時、ちょうど、同じように考えただろうマイラとタイミングが合ってしまった。
「……////// 合わせないで欲しいですわ//////」
「偶然だ」
それよりも、なんか顔が赤い気がするな。
恥ずかしかったの、だろうか?
「と、とにかく! じゃあ、始めて!」
キョトンとしてる間に、なんだか間の抜けた感じで決闘の合図が鳴ったのであった。
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【Tips】魔法属性
魔法とは神々から力を借り受ける者と考えられており、魔法を司る神は5柱。破壊力のある"火"、持続力の高い"水"、精密動作性を要求する"土"、素早い"風"、射程距離が長い"雷"の5柱の神であり、そのため、魔法属性は5つと考えられている
なお、回復魔法を得意とする"光"属性は"土"の亜種、相手の力を吸い取る"闇"属性は"火"の亜種なんじゃないかとされている
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