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第455話 バンブリアの怪奇ファイル配信(3)
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「なにやら、とんでもない事態に巻き込まれてるみたいですね」
どうも、バンブリアに着て見たら同行していた人達と、ほぼ離ればなれになって困惑している、錬金術師のススリアです。
シュンカトウ騎士団四天王第五の槍であり、なおかつバンブーエルフでもあるピエームちゃんは記憶がない。そんな彼女の記憶、あるいは由来を探るため、私達はこのバンブリアに来た。しかしながら誰も居なかったから、チームごとに分かれて探っていたのだが――
「ご主人様。やはり私達以外、誰も居ません」
「そうですか……」
バンブリアに居るはずのバンブーエルフ達を探るはずが、同行していたメンバーのうち、ゼータちゃん以外全員が消えてしまっていた。行方不明者を探っていたはずのメンバーが行方不明になる、まさに"ミイラ取りがミイラになる"という状況である。
「なにか変化とかはなかったの? 魔力の揺らぎだとかは」
「そう言うのがあれば、真っ先に、ご主人様が持つ魔道具が教えてくれるはずでは?」
ゼータちゃんはそう言って、『猛獣アッチイケ』を指差していた。確かに、この『猛獣アッチイケ』は周囲の敵対攻撃を検知する事が出来る。魔法だとか、それ以外だとしても、この検知器は何かしらの反応を見せるはずだ。私以外に攻撃したとしても、この『猛獣アッチイケ』は私以外にも、なんなら登録されている味方全員に、なにかしらの攻撃反応があれば、アラームなどで教えてくれる手筈になっている。
つまり、"人間を行方不明にする"というこの現象は、攻撃ではないって事?
「うーむ。そもそも『猛獣アッチイケ』の基となっている古代兵器アルティメットBTも、ちゃんと調べた訳ではないからなぁ」
一応、どういう原理でこのような状態になるかというのは、古代兵器アルティメットBTの残骸から把握している。だからこそ、この『猛獣アッチイケ』が完成しているのだから。
だからと言って、古代兵器アルティメットBTの全てを、私が掴んでいる訳ではない。機能として必要な所はあっても、大部分が残骸になってしまっているから、分からない事だらけなのだ。
「まぁ、この『猛獣アッチイケ』はあくまで試作品。絶対の信頼を置くのは、止めておいた方が良いね」
「そういうモノですか?」
「まぁ、ゼータちゃんが良く言う『ガンマンですから』くらいの信用は、しない方が良い。あれに比べたら、この『猛獣アッチイケ』は未完成品だから」
私がそう言うと、ゼータちゃんは「じゃあ、全然信用できませんね」と、『猛獣アッチイケ』を不良品のような目で見ていた。いや、そこまで信頼できないという目を向ける必要もないと思う。
というか、ゼータちゃんは『ガンマンですから』に、どれだけ信頼を置いているんだか。私が指摘しなかったら、この『猛獣アッチイケ』を「ガンマンですから」というキメ台詞と同じくらい、信用して居たってことなのかな? 今の態度としては?
「ともかく、一旦この村から離れよう。今度は私達が、行方不明になっちゃうかもだし」
「確かに、順番で言えばそうなるかもしれませんね」
「決まりだな。それじゃあ、この村から少し離れた場所まで戻ろう」
私とゼータちゃんはそう言って、バンブリアを出た。出ようとしたら、脱出できないようになにかしらのトラップが仕掛けられているかと思ったが、そんな事もなく、普通に出られた。それから、ゼータちゃんに搭載している【アルファ・ゴーレムサポートシステム】を使って、ベータちゃん達にも連絡がついているため、気付かないうちに別世界に迷い込んだという可能性もない。
とりあえず、3日ほど様子見をする事にした。
もしかすると、行方不明になっていた人達が、あっちで勝手に問題を解決して戻ってくる可能性もある。私達も巻き込まれて、こちらの世界から行方不明になるよりも、その方がずっと良いと、私はそう考えたのだ。
しばらく待ったら変わるかもとは思ったけれども、そんな事も全然なく。
3日経っても、バンブリアは無人のままであった。
「流石に、調査をしに戻るか」
私がそう言って、バンブリアに向かおうとすると――
『グォォォォォォ!!』
「「「「たっ、助けてぇぇぇぇ!!」」」」
目の前になんと、氷のバケモノと、それに追われて逃げている10人ばかりのバンブーエルフ達の姿が、急に出現した。
「おいおい、これって……」
ふと、私は横を見るが、そこには私の隣にいたはずのゼータちゃんの姿がない。
ゼータちゃんが消えた? いいや、違う。逆だ。
目の前のバンブーエルフ達の姿を見て、私は違うと判断した。そう、これはすなわち――
「私が行方不明者になったという所ですかね」
ふと空を見上げると、現実世界ではあり得ない、太陽と月が2つ揃って仲良く手を繋いでいた。あの2つの天体を見て絶対にここは違うと思ったが、それ以外は隠れていた木々や、足元の地面なんかも、違和感がない。いつ、転移させられたのかも分からない。
「ともかく、まずは話を聞かないと」
私はそう言って、バンブーエルフ達を救うために、駆け出すのであった。
どうも、バンブリアに着て見たら同行していた人達と、ほぼ離ればなれになって困惑している、錬金術師のススリアです。
シュンカトウ騎士団四天王第五の槍であり、なおかつバンブーエルフでもあるピエームちゃんは記憶がない。そんな彼女の記憶、あるいは由来を探るため、私達はこのバンブリアに来た。しかしながら誰も居なかったから、チームごとに分かれて探っていたのだが――
「ご主人様。やはり私達以外、誰も居ません」
「そうですか……」
バンブリアに居るはずのバンブーエルフ達を探るはずが、同行していたメンバーのうち、ゼータちゃん以外全員が消えてしまっていた。行方不明者を探っていたはずのメンバーが行方不明になる、まさに"ミイラ取りがミイラになる"という状況である。
「なにか変化とかはなかったの? 魔力の揺らぎだとかは」
「そう言うのがあれば、真っ先に、ご主人様が持つ魔道具が教えてくれるはずでは?」
ゼータちゃんはそう言って、『猛獣アッチイケ』を指差していた。確かに、この『猛獣アッチイケ』は周囲の敵対攻撃を検知する事が出来る。魔法だとか、それ以外だとしても、この検知器は何かしらの反応を見せるはずだ。私以外に攻撃したとしても、この『猛獣アッチイケ』は私以外にも、なんなら登録されている味方全員に、なにかしらの攻撃反応があれば、アラームなどで教えてくれる手筈になっている。
つまり、"人間を行方不明にする"というこの現象は、攻撃ではないって事?
「うーむ。そもそも『猛獣アッチイケ』の基となっている古代兵器アルティメットBTも、ちゃんと調べた訳ではないからなぁ」
一応、どういう原理でこのような状態になるかというのは、古代兵器アルティメットBTの残骸から把握している。だからこそ、この『猛獣アッチイケ』が完成しているのだから。
だからと言って、古代兵器アルティメットBTの全てを、私が掴んでいる訳ではない。機能として必要な所はあっても、大部分が残骸になってしまっているから、分からない事だらけなのだ。
「まぁ、この『猛獣アッチイケ』はあくまで試作品。絶対の信頼を置くのは、止めておいた方が良いね」
「そういうモノですか?」
「まぁ、ゼータちゃんが良く言う『ガンマンですから』くらいの信用は、しない方が良い。あれに比べたら、この『猛獣アッチイケ』は未完成品だから」
私がそう言うと、ゼータちゃんは「じゃあ、全然信用できませんね」と、『猛獣アッチイケ』を不良品のような目で見ていた。いや、そこまで信頼できないという目を向ける必要もないと思う。
というか、ゼータちゃんは『ガンマンですから』に、どれだけ信頼を置いているんだか。私が指摘しなかったら、この『猛獣アッチイケ』を「ガンマンですから」というキメ台詞と同じくらい、信用して居たってことなのかな? 今の態度としては?
「ともかく、一旦この村から離れよう。今度は私達が、行方不明になっちゃうかもだし」
「確かに、順番で言えばそうなるかもしれませんね」
「決まりだな。それじゃあ、この村から少し離れた場所まで戻ろう」
私とゼータちゃんはそう言って、バンブリアを出た。出ようとしたら、脱出できないようになにかしらのトラップが仕掛けられているかと思ったが、そんな事もなく、普通に出られた。それから、ゼータちゃんに搭載している【アルファ・ゴーレムサポートシステム】を使って、ベータちゃん達にも連絡がついているため、気付かないうちに別世界に迷い込んだという可能性もない。
とりあえず、3日ほど様子見をする事にした。
もしかすると、行方不明になっていた人達が、あっちで勝手に問題を解決して戻ってくる可能性もある。私達も巻き込まれて、こちらの世界から行方不明になるよりも、その方がずっと良いと、私はそう考えたのだ。
しばらく待ったら変わるかもとは思ったけれども、そんな事も全然なく。
3日経っても、バンブリアは無人のままであった。
「流石に、調査をしに戻るか」
私がそう言って、バンブリアに向かおうとすると――
『グォォォォォォ!!』
「「「「たっ、助けてぇぇぇぇ!!」」」」
目の前になんと、氷のバケモノと、それに追われて逃げている10人ばかりのバンブーエルフ達の姿が、急に出現した。
「おいおい、これって……」
ふと、私は横を見るが、そこには私の隣にいたはずのゼータちゃんの姿がない。
ゼータちゃんが消えた? いいや、違う。逆だ。
目の前のバンブーエルフ達の姿を見て、私は違うと判断した。そう、これはすなわち――
「私が行方不明者になったという所ですかね」
ふと空を見上げると、現実世界ではあり得ない、太陽と月が2つ揃って仲良く手を繋いでいた。あの2つの天体を見て絶対にここは違うと思ったが、それ以外は隠れていた木々や、足元の地面なんかも、違和感がない。いつ、転移させられたのかも分からない。
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