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第353話 ホテル前の決戦配信【赤髪妖精ヴァーミリオンVS.悪魔ハルファス】(1)
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ベータちゃんと、彼女の狂信者たちによる、記者会見的配信。
その配信は、大好評で幕を閉じた。
ベータちゃんの「彼女です! そこに居る彼女こそが、私が気にかけている配信者です!」という言葉のせいで、ちょっとばかりベータちゃんのファンによるイプシロンちゃんへの印象がだいぶ悪くなってしまった。しかし当の本にであるイプシロンちゃんはというと----
『ふっ! 世間に消えぬ汚名を、誇りにして活動する! それこそ、海賊っていうモノでしょう!』
----と、なんか誇らしげな顔をしていたので、そんなに心配するほどではないだろうというのが、ベータちゃん達ゴーレムの評価である。
こうして、ベータちゃんの記者会見的配信は幕を閉じ、その他のお客様も、治癒神カンロ神様によるクラフトビールのお酒の飲み比べだったり、あるいは兎獣人達が見つけ出したレインボーエレメンタル満載の【カンロの洞窟】を見学したりと各々楽しんで過ごして行った。
こうして、選ばれし50人のお客様による2泊3日の旅行、その2日目という一日は穏やかに過ぎて行くのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その日の夜、ホテル・イスウッドの玄関前に、悪魔ハルファスは居た。
『ピューマくんってば、まだこのホテルの中に居るなんて、今回はずいぶんと手間取っているみたいだねぇ~』
悪魔ハルファスにとって、ピューマの獣人族であるラジンは、絶好の標的である。
悪魔ハルファスは、自分の取引を3回叶えてもらう代わりに、相手のお願いを1つ叶えなければならないという、【願望の力(劣化)】の能力がある。
ラジンはこの【願望の力(劣化)】を使って、逆らえないように仕込んで来た絶好の駒である。
ラジンには、錬金術師マコモという枷がある。
錬金術師マコモは、古代魚ダンクルオステウスの魚人族。"水中呼吸しか出来ない"、"陸では歩けない"など、ラジンと一緒に居るには、色々な障害がある。
そんなマコモを、ラジンは見捨てられない。そして、彼女と一緒に生活するには、この悪魔ハルファスの助けが絶対に必要となる。
だからこそ、ラジンに対しては、どんな仕事を振っても絶対にやり遂げて貰える。
マコモという彼女の幸せを夢見るからこそ、ラジンは絶対にやり遂げると、悪魔ハルファスはそう信じていた。
この取引、『ホテル・イスウッドのエントランスに、【黒キ翼】を置いて来る』というのが完了すれば、悪魔ハルファスの目的である、魔王ユギー様が復活する。
あと1つ。そう、このホテル・イスウッドのエントランスに、【黒キ翼】をセットすれば、魔王ユギー様が復活する。そう、世界を崩壊へと陥らせた最凶の魔王様が。
『ピューマくんならば、すぐに取引を叶えてくれて、世界は魔王ユギー様によって支配されると思っていたのに、いつもと違って遅い、遅い、遅いですねぇ!』
もう少し待った方が良いのかという考えも、悪魔ハルファスの心の内にはあった。しかしながら、待てなかった。あと一歩、もう少しで願いが叶うという状況だからこそ、悪魔ハルファスにはそれが待てなかったのである。
『仕方ないですね。後方で腕組して状況を待ち構えている、"あの人"のようなクール系なキャラを目指していたのですが、ここは奥の手、奥の手、奥の手を使いましょうか』
悪魔ハルファスはそう言って、懐から1つの道具を取り出そうとして----
「ちょっと待ちなさいっ!」
いきなり赤髪妖精ヴァーミリオンが、悪魔ハルファスの前に現れるのであった。
「(邪悪な気配……! 商人ラジンを捕まえようという計画は、彼が一番怪しいからという事! なら、そんな彼よりも怪しい人物を見つけたら、その邪悪な気配を捕まえれば、私の評価は上がるに違いない!)」
妖精である彼女に、人間達の事は分からない。ただ、商人ラジンが怪しいから捕まえようとしているのは彼女にも分かっており、そんな商人ラジンよりも怪しい人物が、いまにも何か恐ろしい事をしでかそうとしている者を見つけたので、躊躇なく彼女は攻撃を開始する。
赤髪妖精ヴァーミリオンは悪魔ハルファスに、躊躇なく【重力】の魔法をぶつける。
『あいたっ!』
ぶつけられた【重力】の力により、右腕を地面へと押し付けるように落とされる悪魔ハルファス。そんなハルファスの動きに、ヴァーミリオンはおかしいと、違和感を感じる。
「(おかしい……。全身を一気に重力で押し潰して制圧しようと攻撃したのに、なんで右腕だけしか効果が効いていないの?)」
『いきなり攻撃とは……礼儀、礼儀、礼儀を知らない人ですね。あなたは』
すっと、ハルファスは重力で押し潰され続けているはずの右腕を、ひょいっと持ち上げ、ヴァーミリオンを睨みつける。
重力の能力は解除していない、それどころか現在進行形で作動し続けているのに、ハルファスは右腕を持ちあげていた。
『良いでしょう。いきなり攻撃されるような人は、攻撃し返されるという危険性がある事を、その身体に教えて差し上げましょう。
-----我が名は悪魔ハルファス。魔王ユギー様の五本槍が1人、【激突のカナエマス】さんの筆頭舎弟です』
その配信は、大好評で幕を閉じた。
ベータちゃんの「彼女です! そこに居る彼女こそが、私が気にかけている配信者です!」という言葉のせいで、ちょっとばかりベータちゃんのファンによるイプシロンちゃんへの印象がだいぶ悪くなってしまった。しかし当の本にであるイプシロンちゃんはというと----
『ふっ! 世間に消えぬ汚名を、誇りにして活動する! それこそ、海賊っていうモノでしょう!』
----と、なんか誇らしげな顔をしていたので、そんなに心配するほどではないだろうというのが、ベータちゃん達ゴーレムの評価である。
こうして、ベータちゃんの記者会見的配信は幕を閉じ、その他のお客様も、治癒神カンロ神様によるクラフトビールのお酒の飲み比べだったり、あるいは兎獣人達が見つけ出したレインボーエレメンタル満載の【カンロの洞窟】を見学したりと各々楽しんで過ごして行った。
こうして、選ばれし50人のお客様による2泊3日の旅行、その2日目という一日は穏やかに過ぎて行くのであった。
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その日の夜、ホテル・イスウッドの玄関前に、悪魔ハルファスは居た。
『ピューマくんってば、まだこのホテルの中に居るなんて、今回はずいぶんと手間取っているみたいだねぇ~』
悪魔ハルファスにとって、ピューマの獣人族であるラジンは、絶好の標的である。
悪魔ハルファスは、自分の取引を3回叶えてもらう代わりに、相手のお願いを1つ叶えなければならないという、【願望の力(劣化)】の能力がある。
ラジンはこの【願望の力(劣化)】を使って、逆らえないように仕込んで来た絶好の駒である。
ラジンには、錬金術師マコモという枷がある。
錬金術師マコモは、古代魚ダンクルオステウスの魚人族。"水中呼吸しか出来ない"、"陸では歩けない"など、ラジンと一緒に居るには、色々な障害がある。
そんなマコモを、ラジンは見捨てられない。そして、彼女と一緒に生活するには、この悪魔ハルファスの助けが絶対に必要となる。
だからこそ、ラジンに対しては、どんな仕事を振っても絶対にやり遂げて貰える。
マコモという彼女の幸せを夢見るからこそ、ラジンは絶対にやり遂げると、悪魔ハルファスはそう信じていた。
この取引、『ホテル・イスウッドのエントランスに、【黒キ翼】を置いて来る』というのが完了すれば、悪魔ハルファスの目的である、魔王ユギー様が復活する。
あと1つ。そう、このホテル・イスウッドのエントランスに、【黒キ翼】をセットすれば、魔王ユギー様が復活する。そう、世界を崩壊へと陥らせた最凶の魔王様が。
『ピューマくんならば、すぐに取引を叶えてくれて、世界は魔王ユギー様によって支配されると思っていたのに、いつもと違って遅い、遅い、遅いですねぇ!』
もう少し待った方が良いのかという考えも、悪魔ハルファスの心の内にはあった。しかしながら、待てなかった。あと一歩、もう少しで願いが叶うという状況だからこそ、悪魔ハルファスにはそれが待てなかったのである。
『仕方ないですね。後方で腕組して状況を待ち構えている、"あの人"のようなクール系なキャラを目指していたのですが、ここは奥の手、奥の手、奥の手を使いましょうか』
悪魔ハルファスはそう言って、懐から1つの道具を取り出そうとして----
「ちょっと待ちなさいっ!」
いきなり赤髪妖精ヴァーミリオンが、悪魔ハルファスの前に現れるのであった。
「(邪悪な気配……! 商人ラジンを捕まえようという計画は、彼が一番怪しいからという事! なら、そんな彼よりも怪しい人物を見つけたら、その邪悪な気配を捕まえれば、私の評価は上がるに違いない!)」
妖精である彼女に、人間達の事は分からない。ただ、商人ラジンが怪しいから捕まえようとしているのは彼女にも分かっており、そんな商人ラジンよりも怪しい人物が、いまにも何か恐ろしい事をしでかそうとしている者を見つけたので、躊躇なく彼女は攻撃を開始する。
赤髪妖精ヴァーミリオンは悪魔ハルファスに、躊躇なく【重力】の魔法をぶつける。
『あいたっ!』
ぶつけられた【重力】の力により、右腕を地面へと押し付けるように落とされる悪魔ハルファス。そんなハルファスの動きに、ヴァーミリオンはおかしいと、違和感を感じる。
「(おかしい……。全身を一気に重力で押し潰して制圧しようと攻撃したのに、なんで右腕だけしか効果が効いていないの?)」
『いきなり攻撃とは……礼儀、礼儀、礼儀を知らない人ですね。あなたは』
すっと、ハルファスは重力で押し潰され続けているはずの右腕を、ひょいっと持ち上げ、ヴァーミリオンを睨みつける。
重力の能力は解除していない、それどころか現在進行形で作動し続けているのに、ハルファスは右腕を持ちあげていた。
『良いでしょう。いきなり攻撃されるような人は、攻撃し返されるという危険性がある事を、その身体に教えて差し上げましょう。
-----我が名は悪魔ハルファス。魔王ユギー様の五本槍が1人、【激突のカナエマス】さんの筆頭舎弟です』
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