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第352話 ベータ神様による記者会見的配信(2)
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「では早速、ベータちゃんに第1問に応えていただきましょう」
「マスターが了承をしているのなら、すぐさま応えましょう!」
「どんとこいっ!」という感じで、ベータちゃんは質問を待ち構えていた。質問を待ち構えているベータちゃんを見て、イプシロンちゃんはごほんっと咳払いして、質問を開始する。
「それでは、第1問。『料理配信をする上で、心がけている事はなんですか?』」
「"その料理を食べる相手の顔を考える事"ですね。動画配信とは言え、その動画を見ている人は必ず居るはずです。でしたら、その料理を食べてくれる相手の顔を考えて、その料理が一番美味しく見えるように、そして実際に美味しくなるように作る事。それを心掛けていますよ」
流れるように、すんなりとそう答えるベータちゃん。その回答に対して、コクコクっとイプシロンちゃんは頷いていた。
「なるほど。食べる相手の顔を考えて作る、ですか。その信念が、美味しい料理を作っている。動画越しでもその魅力が伝わってくるという事ですね」
「えぇ、まさしくその通りです。料理の基本は、食べる相手の事を思って作る事。それがマスターからの提案であり、私の指針となっております」
イプシロンちゃんはベータちゃんに質問しつつ、ファン達に視線を向ける。しかしながら、彼らは全員ベータちゃんの言葉を一言一句聞き逃さないように、超集中モードの構えだったので、これは質問はないなと即座に判断して進めて行く。
2問目、3問目、4問目----。
ベータちゃんが応えるのに対して、ファン全員がまるで神様からの啓示のように聞き惚れてしまっていて、なにも質問はない。
5問目、6問目、7問目----。
「(むむっ)」
この状況に対して、イプシロンちゃんはこう思った。
----つまらない。
そう、イプシロンちゃんは養殖担当のゴーレムであると同時に、性格が海を愛する海賊なのである。
イータちゃんがマニュアル命、ベータちゃんがマスター命のように、彼女には海賊命という、そういう思考回路が組み込まれている。
そう、海賊のように、荒れ狂う波を求める探求精神。平和に終わりそうな、この記者会見的配信に、司会進行役である彼女は一石を投じようとしていた。
「では、次が第10問目。ベータちゃんに対する最後の質問になります」
「えぇ、そうなりますね。何事もなく、すんなりと終わりそうで安心しております」
ファンの中には、この時間がもっと続きますようにと、そういう風に祈りを捧げる者も居るには居たが、そんな事をするよりも、ベータちゃんの言葉を聞くのを優先したようで、止まったりはしなかった。
そう、どちらにせよ自らこの良い雰囲気をぶち壊そうとする者はいなかったのである。イプシロンちゃんが望むような、『荒れ狂う海のような状況』にしようという者は、この場には居なかったのである。
だから、イプシロンちゃんが自ら、その荒れ狂う海の中へと突っ込んだ。
「では、第10問目。
----『ベータちゃんがいまこの会場の中で一人、気になっている配信者を選ぶとすれば誰ですか?』。この質問には出来れば、その選定理由についてもお聞かせ願いたく思います」
その瞬間、全員に緊張が走った。
そう、この質問はファン達の中に格差を生む、とっておきの質問だったからだ。
もし仮に、誰か1人が選ばれたとしよう。そうすれば、その選ばれた配信者は、ファン達の中から『1人だけベータちゃんに認められた配信者』という栄誉を得る事になる。そして、"ベータちゃんの事を信仰するファン達"の中から、一段上の存在へと認められることは確実だ。
確実に揉める。そう、これは、確実に揉めてしまう事であった。
だったら、誰も選ばなければ良いのでは? そう思う配信者も居た。
しかしながら、『誰も気になっていません』とベータちゃんの口から言われる事は、自分達はベータちゃんに認識すらしてもらえないという事になり、それはそれで落ち込む。
どちらにせよ、今後の配信者活動、コラボ配信などにおいて、確実に遺恨が残る事が確定の話題だったのである。
「(イプシロンちゃ~ん!)」
一方で、聞かれた側であるベータちゃんも、どう対応すれば良いか困っていた。
第1問目から第9問目、彼女はすらすらっと自分の意見を述べていた、ように対応していた。
そう、第1問目から第9問目の回答は、彼女の答えであって、彼女自身が1人で導き出した答えではない。
過去の、太古の配信動画の中から、適当にそれっぽい内容を見つけ出して、自分に当てはまるように話しただけ。いわゆる、パクリってやつだ。
第9問目までは、それで十分であった。
しかしながら、この第10問目はその回答ではいけない。何故なら、太古の配信動画を永遠と探っても、この回答だけは導き出せないからである。
「(そ・も・そ・もっ! 私はマスターに命じられたから、料理動画配信をしていただけで、他の配信者の活動なんて全てチェックしていません! むしろ、チェックしていたと言えば、それは企画立案などを担当していたガンマちゃんの担当です!)」
気になっている配信者は誰かと言われても、この場に居る配信者の誰一人として、ベータちゃんは名前を知らないのである。
誰も選ばないという選択も可能と言えば可能だが、「実は配信者の誰一人として、名前も知らないので答えようがありません」という回答は求められていないのだろうという事くらいは、ベータちゃんも分かっていた。
「(誰が良い? 誰なら----はっ!)」
そこで、ベータちゃんはビシッと、彼女が気にかけている1人を指差すのであった。
「彼女です! そこに居る彼女こそが、私が気にかけている配信者です!」
「えっ?」
その指差す先に居たのは----他ならぬ、"イプシロンちゃん"であった。
「マスターが了承をしているのなら、すぐさま応えましょう!」
「どんとこいっ!」という感じで、ベータちゃんは質問を待ち構えていた。質問を待ち構えているベータちゃんを見て、イプシロンちゃんはごほんっと咳払いして、質問を開始する。
「それでは、第1問。『料理配信をする上で、心がけている事はなんですか?』」
「"その料理を食べる相手の顔を考える事"ですね。動画配信とは言え、その動画を見ている人は必ず居るはずです。でしたら、その料理を食べてくれる相手の顔を考えて、その料理が一番美味しく見えるように、そして実際に美味しくなるように作る事。それを心掛けていますよ」
流れるように、すんなりとそう答えるベータちゃん。その回答に対して、コクコクっとイプシロンちゃんは頷いていた。
「なるほど。食べる相手の顔を考えて作る、ですか。その信念が、美味しい料理を作っている。動画越しでもその魅力が伝わってくるという事ですね」
「えぇ、まさしくその通りです。料理の基本は、食べる相手の事を思って作る事。それがマスターからの提案であり、私の指針となっております」
イプシロンちゃんはベータちゃんに質問しつつ、ファン達に視線を向ける。しかしながら、彼らは全員ベータちゃんの言葉を一言一句聞き逃さないように、超集中モードの構えだったので、これは質問はないなと即座に判断して進めて行く。
2問目、3問目、4問目----。
ベータちゃんが応えるのに対して、ファン全員がまるで神様からの啓示のように聞き惚れてしまっていて、なにも質問はない。
5問目、6問目、7問目----。
「(むむっ)」
この状況に対して、イプシロンちゃんはこう思った。
----つまらない。
そう、イプシロンちゃんは養殖担当のゴーレムであると同時に、性格が海を愛する海賊なのである。
イータちゃんがマニュアル命、ベータちゃんがマスター命のように、彼女には海賊命という、そういう思考回路が組み込まれている。
そう、海賊のように、荒れ狂う波を求める探求精神。平和に終わりそうな、この記者会見的配信に、司会進行役である彼女は一石を投じようとしていた。
「では、次が第10問目。ベータちゃんに対する最後の質問になります」
「えぇ、そうなりますね。何事もなく、すんなりと終わりそうで安心しております」
ファンの中には、この時間がもっと続きますようにと、そういう風に祈りを捧げる者も居るには居たが、そんな事をするよりも、ベータちゃんの言葉を聞くのを優先したようで、止まったりはしなかった。
そう、どちらにせよ自らこの良い雰囲気をぶち壊そうとする者はいなかったのである。イプシロンちゃんが望むような、『荒れ狂う海のような状況』にしようという者は、この場には居なかったのである。
だから、イプシロンちゃんが自ら、その荒れ狂う海の中へと突っ込んだ。
「では、第10問目。
----『ベータちゃんがいまこの会場の中で一人、気になっている配信者を選ぶとすれば誰ですか?』。この質問には出来れば、その選定理由についてもお聞かせ願いたく思います」
その瞬間、全員に緊張が走った。
そう、この質問はファン達の中に格差を生む、とっておきの質問だったからだ。
もし仮に、誰か1人が選ばれたとしよう。そうすれば、その選ばれた配信者は、ファン達の中から『1人だけベータちゃんに認められた配信者』という栄誉を得る事になる。そして、"ベータちゃんの事を信仰するファン達"の中から、一段上の存在へと認められることは確実だ。
確実に揉める。そう、これは、確実に揉めてしまう事であった。
だったら、誰も選ばなければ良いのでは? そう思う配信者も居た。
しかしながら、『誰も気になっていません』とベータちゃんの口から言われる事は、自分達はベータちゃんに認識すらしてもらえないという事になり、それはそれで落ち込む。
どちらにせよ、今後の配信者活動、コラボ配信などにおいて、確実に遺恨が残る事が確定の話題だったのである。
「(イプシロンちゃ~ん!)」
一方で、聞かれた側であるベータちゃんも、どう対応すれば良いか困っていた。
第1問目から第9問目、彼女はすらすらっと自分の意見を述べていた、ように対応していた。
そう、第1問目から第9問目の回答は、彼女の答えであって、彼女自身が1人で導き出した答えではない。
過去の、太古の配信動画の中から、適当にそれっぽい内容を見つけ出して、自分に当てはまるように話しただけ。いわゆる、パクリってやつだ。
第9問目までは、それで十分であった。
しかしながら、この第10問目はその回答ではいけない。何故なら、太古の配信動画を永遠と探っても、この回答だけは導き出せないからである。
「(そ・も・そ・もっ! 私はマスターに命じられたから、料理動画配信をしていただけで、他の配信者の活動なんて全てチェックしていません! むしろ、チェックしていたと言えば、それは企画立案などを担当していたガンマちゃんの担当です!)」
気になっている配信者は誰かと言われても、この場に居る配信者の誰一人として、ベータちゃんは名前を知らないのである。
誰も選ばないという選択も可能と言えば可能だが、「実は配信者の誰一人として、名前も知らないので答えようがありません」という回答は求められていないのだろうという事くらいは、ベータちゃんも分かっていた。
「(誰が良い? 誰なら----はっ!)」
そこで、ベータちゃんはビシッと、彼女が気にかけている1人を指差すのであった。
「彼女です! そこに居る彼女こそが、私が気にかけている配信者です!」
「えっ?」
その指差す先に居たのは----他ならぬ、"イプシロンちゃん"であった。
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