処女壊体-the making of a saint-

柘榴

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第6章 陵辱の刑

第40話 悲劇の前兆

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「そんな……やくそく、ちがう……」
 最愛の妹だけは助けて欲しいという願いすら、無残に打ち砕かれたのだ。
 僕の言葉に、茜は悲痛に表情を歪ませる。

「葵には今後、手を出さないと確かに約束したね。だから僕は何もしない。葵が死にかけようが、何もしない。それのどこに落ち度がある?」
 僕と茜の約束……それは葵には今後一切、手を出さないというもの。それはつまり、僕が葵に害を加える事ができないのと同時に、僕が葵を助けるという事もできないと捉えられる。少なくとも僕はそう捉えた。
「何だ、自分が奴隷にさえなれば僕が葵にまで世話を焼くとでも? それは都合が良すぎるな、茜。僕は君の進化の為に全力を注がなければならない。葵になど構っている暇は無いんだ」
 僕の非情な言葉の羅列に、茜の表情は徐々に曇り、崩れていった。
 自分さえ犠牲になれば、僕が妹だけには情けを掛け、見逃し、助けてくれると思っていたのだろう。

 だが、僕は情に流されるような人間では無い。常に茜を中心に全てを考え、その妨げとなる事象は容赦無く排除する。ただ、それだけの事を徹底しているだけなのだ。
「本来ならば葵など殺している。それを君の為に生かしてあげているだけだ。これ以上、僕の手を煩わせないでくれないか?」
「すこしで、いいから……あおい……を」
 それでも、茜は僕に訴えかける。目の前で苦しむ妹を何とか助けて欲しいと、諦めずに僕の情に訴える。
「くどいぞ、何度も同じことを言わせないでくれ」
 だが、僕は同じ答えを茜に返す。僕が情に流される様な人間ならば、茜を誘拐する事も、その四肢を切り落とす事もできなかったのだろう。それは茜自身が身を持って体験し、思い知っているはずだろう。

 だが、それでも無力な茜は葵を助けるために僕を頼り、助けを求めるしかない。

「……っく……ぐ」
 だが、そこまでしても、妹を助けられない。
 全ての元凶である僕に媚び、奴隷にまでなっても妹を助けられない。
 その現実に茜は悔しさを堪えきれずに涙を流し始めた。僕を睨み付け、静かに悔し涙を流していた。
 だが、それに対して僕は思わず吹き出してしまう。
 それは茜を馬鹿にした訳では無く、茜が葵を想う気持ちの強さに感服した証だった。

「……そんな顔で睨まないでくれ、冗談だ」
 僕は茜の頭にそっと手を置いて、優しく髪を撫でてやる。
 先ほどまでの言葉は虚言。茜をからかう為の冗談のつもりだった。
 茜の想いの強さを確かめる為。そして、単に茜を虐めてやりたいという小さな悪戯心だった。

「……え?」
「君が葵を守りたい気持ちはよく分かった。それに、葵には血を提供してもらった恩もあるからね。僕も医療を齧った人間として、最低限の処置くらいはさせてもらう」
 僕がまさか冗談を言うとは思っていなかったのか、茜は口を開いたまま固まっていた。
 それはそうだ。今まで自分を嬲り、拷問をしてきた人間が悪戯心で冗談を口走るとは考えすらしないだろう。 
「信用できないかい? 別にこのまま放っておくならそれでも良いが……」
「いや……っ、ううん……あおいを、おねがい……」
 茜は今までにないくらい驚き、僕に感謝した事だろう。
 僕にも人間の心が僅かに残っていて、妹だけは助けてくれる。その事実に安堵した事だろう。
「……ありがと、う」
 そして、茜は涙ながらに僕にそう言う。茜が初めて、僕に言い放った心の籠った感謝の言葉だった。
 全ての元凶である僕に対して感謝するというのは妙な話だが、葵は助かるという事実に安堵したのか、茜は久し振りに表情を緩めた様に見えた。

「ああ、葵は僕に任せると良い。葵の苦しみは……僕が取り除いてあげるさ」

 僕はそう言い残し、別室で治療を施すという名目で首輪に繋がれた葵を連れ、上の自宅へと向かった。

 ……きっと茜は今頃、僕にも人間の心が僅かに残っていて、茜の必死の説得に心を動かされた結果、罪の無い妹だけは助けてくれるのだと、そう思い込んでいるのだろう。

 だが、少し違う。僕は茜の言葉に心など動かされていないし、そもそも最初から人間の心など持ち合わせていない。
 葵の治療をすると言ったが、それも単なる治療ではない。

 それは、実験も兼ねた治療。それをこの実験体としての役目を持つ葵に対し施す。
 
 全ては、茜の進化の為に。

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