処女壊体-the making of a saint-

柘榴

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第7章 耽溺の刑

第42話 快楽による支配

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「は……は……っ」

 部屋には葵の乾いた笑い声が響く。特段、面白い事があった訳でもないのだが葵は虚空を見つめながら一人、へらへらと笑っている。
 薬を注入してしばらくすると、葵に異変が起こり始めた。人格が変わったかの様に笑い始めたり、独り言を呟いて、それを聞いてまた笑い始めたり……明らかに普通の様子ではなかった。

「随分と陽気だね。どうだい気分は?」
「すごく……気持ち良い、です……痒みも和らいで……凄い……ふふ」
 部屋の簡易ベッドに寝転びながら葵は笑う。注入した薬は痒みを和らげる効果も炎症を抑える効果も無い。ただ、葵の身体の感覚に偽りの『快楽』を上書きしたに過ぎない。アンフェタミン類の精神刺激薬……つまり覚醒剤と呼ばれる代物だ。
 だが、葵はその現実にも気付かず呑気に笑い転げている。自身が薬物中毒に陥っている事にすら気付かずに。
「それは良かった。効果が薄れたと思ったら言ってくれ、まだ予備はある」
「これってぇ……もっと、いっぱい使ったら……もっと気持ち良くなれる?」
 葵は空になった注射器を手に持ち、それをぼーっと虚ろな目で見つめる。
 最初という事で少量の摂取に抑えておいたが、葵は既に更なる快楽を求め始めていた。
「……ああ、とても気持ちが良いだろうね。けれど量は少しずつ増やしていこう。何事もやり過ぎは禁物だ」
 だが、葵の経過も観察しながら量は調整しなければならない。物量的な理由もあるが、何より好き勝手に摂取されて勝手に死なれては僕が困る。
 葵には最後まで働いてもらう、実験動物のモルモットとして。それまでは僕の実験に、そして茜の進化の為に付き合ってもらおう。
「えぇ~……高城さんも……どうです? あ、お姉ちゃんも……」
 葵は酔っ払いの様な絡んでくるが、その手を僕は振り払う。
 薬物中毒の戯言に付き合っている暇など無い。
「遠慮しておくよ。必要な人が必要な分だけ使う、薬とはそういうものだからね」
 ……元はと言えば茜の調整と進化に役立つ事を考慮して仕入れておいた薬だが、茜に使う前に実験しておいて良かったと改めては思う。
 だらしなく口角を吊り上げ、その端からは涎を垂れ流し、醜く笑い転げる葵の姿を見る。薬に狂わされ、快楽に溺れる人間がここまで醜いとは思わなかった。
 僕はゆっくりと簡易ベッドから立ち上がる。
「……哀れだね」
 葵に対し、捨て台詞の様に呟くが葵は聞いてすらいない。今も虚空を見つめながら何かぶつぶつと言葉を放ち、そして笑っているだけ。
「さて……僕は茜の所に一旦向かうよ。しばらくしてから戻るから、それまではゆっくりしているといい」
「はぁ~ぃ……」
 葵は気の抜けた返事で僕を見送った。
 
 最近は葵に構ってばかりだったから、そろそろ茜にも構ってあげないと。僕は厳重な施錠を施してから葵の監禁部屋を後にする。

 僕が監禁部屋に戻る頃には、葵の薬の効果が切れる頃。
 その時の葵の姿を想像すると、少し楽しみだ。
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