処女壊体-the making of a saint-

柘榴

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第9章 洗脳の刑

第61話 最愛の芸術大作

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「ハロー、あんたが高城 亮かしら?」

 メールでのやり取りの僅か三日後、ティエラは突如として僕の目の前に現れた。
 来日の目処が立った後に再び連絡をするという話だったのだが、ティエラからの連絡などあれから一切無かった。
 キャリーバッグを従えた一人の欧米の少女。人形の様な金髪と青い目の少女が僕の目の前に現れたのだ。
 作り物のような美貌に、一瞬目が眩む。

「随分と急だね……来日の日程はまだ調整中だった筈だが……」
 流石に僕にとってもこれは予想外だった。別段、何か準備をする事も殆ど無いのだが、まさかこんなにも短期間でティエラが行動に移るとは思っていなかった。
「調整? あんたが私に合わせて予定を調整すれば良いだけでしょ?」
 それに対し、ティエラは全く悪びれる様子は無い。双方の予定を調整するのではなく、自身の予定と気紛れを一方的に押し付ける事が当たり前だという態度。
 やはり、この少女に他人を思いやる気持ちなど微塵も無い事を改めて確認する事ができた。
「……まぁ、良い。まだおもてなしの準備は不十分だが……君を歓迎しよう。ティエラ・アンドリアーノ 」
 少々の準備不足は否めないが、僕はティエラを自らの住処に招き入れた。

 ティエラを招き入れ、早々に茜の座す聖域へと案内する。
 僕は自慢の娘を自慢したい父の様な気分で、柄にも無く昂ぶっていた。
「言っておくが……今から会わせるのは僕の『芸術大作』であり、『最愛の人』。くれぐれも手は出さないでくれ。早死にしたくなければね」
「……話が違うじゃない。実験体は二人の筈でしょ? 黙って差し出しなさい。早死にしたくなければね」
 ティエラの目は真っ直ぐと僕を捉える。
 僕がティエラに送信したのは、確かに僕の愛すべき芸術大作とその実験体……茜と葵の二人の姿を捉えた画像だ。
 だが、正直に言ってしまえばティエラに茜を任せる気は毛頭無かった。
 いくらティエラが天才だとしても、僕の最愛の人を簡単に預ける訳にはいかない。もし、壊されでもしたら……僕は生きる目的そのものを否定される事となる。
 そうなれば、ティエラを殺した程度では収まりがつかない。僕の心が潤う事は永遠に無いだろう。

「茜を任せるのは君の実力をこの目で確かめてからだ。まずは別の実験体で施術の効果を確認する。茜の実妹の葵だ、彼女なら壊してくれても構わないよ?」
「……」
 僕の言葉に、ティエラは露骨に不快感を露わにする。だが、僕は譲らない。
「僕の最愛の人の脳を弄るんだ、そう簡単に他人へ任せる訳にはいかないだろう? 失敗して壊されでもしたら元も子も無い」
 ティエラにとっては単なる実験体でも、僕にとっては唯一無二の聖処女。
 代わりなどいない、この世でただ一人の存在なのだ。それを奪う事など、誰であっても僕が絶対に許さない。
「失敗? この私が? 殺されたいの?」
 ティエラの目には怒りが宿る。どうやらティエラは自身の腕が疑われている事に不快感を露わにしている様だ。
 しかし、ここまで来て僕の申し出を蹴って手ぶらで帰る訳にもいかないだろう。
 ならば、僕を殺してでも奪う? いや、彼女はそんな短絡的な行動には出ない筈だ。何故なら、彼女は知っているからだ。僕がティエラと同じく狂気と残虐性を宿した人間である事を。
 そして、僕が常に袖口の影にメスを忍ばせている事も。僕がその気になればティエラを殺害できるだけの準備を整えている事も見抜いているだろう。
「不満なら国に帰るかい? だが、どちらにしろ君は無条件で一人の人間の脳は好き勝手に弄れるんだ、悪い話ではない筈だが……不満かい? それとも、僕を認めさせるだけの自信が無いのかな?」
 僕の絶え間無い挑発に、ティエラは口を開かずにただ僕の顔を温度の無い目で見つめてる。
 そして、目を閉じて大きく息を吐く。

「ふん……下らない挑発ね。まぁ、良いわ。ここであんたと争っても時間の無駄。さっさとそのあんたの『最愛の人』とやらに会わせなさい。そして、確かめさせて? あんたの狂気ってヤツを。それ次第ね、あんたの条件を飲むのは」
 ティエラは呆れた様に、だが期待を隠せない様子で頷く。
「流石だね、物分かりが良くて助かるよ。こっちだ」
 ティエラに興味は、人体実験より僕に宿る狂気の方へ向けられている様にも感じられた。
 
 僕は正式に、ティエラを聖域へと招き入れた。
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