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第11章 逃避の刑
第92話 現実への帰還
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「さぁ、これでさようならだ」
玄関先まで葵を連れ、繋いでいた首輪を外してやる。もう、これで葵を縛るものは何もない。
葵はきょとんとしたまま動かなかった。
「ぇ……どこ? どこいくの? ねぇ、ねぇ……」
「君の、元いた世界さ」
葵は僕の言葉を理解出来ていないだろう。身も心も、全てを壊した彼女に相応しい世界など、既に存在などしていないのかもしれないかもしれない。
それでも、僕は葵を新たな世界へと導く。
「茜、葵へ最後に何か……伝えたい事はあるかい?」
ティエラに車椅子を押され、葵の前に茜が現れる。姉妹の視線が交差する。
「あお、い……」
元いた世界に帰す、ただそれだけの事なのに茜は随分と複雑な表情を浮かべていた。
安堵している様な、それと同時に懺悔する様な複雑な表情。
「……いきて、いきて……いれば、きっと……」
生きていれば、きっと救われる。茜はそう言いたかったのだろう。
いつか、誰かが手を差し伸べ救われる時が来ると、そう信じているのだ。
「おね、ぇ……ちゃ……」
葵は僅かに残った理性で姉を見つめる。焦点も定まらず、姉の表情すら認識できているかも怪しい。
けれど、葵は確かに茜を見つめていた。
姉妹の別れを見届け、僕も大いに満足した。
僕は茜の面倒をティエラに頼み、葵をとうとう世に放つ為の準備を始める。
葵は人気の無い山の麓にでも解放するつもりだ。
「じゃあ、僕は葵を車で離れた場所まで連れて行く。戻って来るまで、茜を頼むぞ」
「……話は帰って来てから聞くわ。それまでに、私を納得させられるだけの言い訳を考えておくのね」
死こそが最大の絶望であると主張するティエラは、やはり葵を逃がす事には反対の様だった。
「そうだね、道中で考えておくさ」
ティエラにそれだけを言い残し、僕は葵を乗せた車を山中へと走らせ始めた。
玄関先まで葵を連れ、繋いでいた首輪を外してやる。もう、これで葵を縛るものは何もない。
葵はきょとんとしたまま動かなかった。
「ぇ……どこ? どこいくの? ねぇ、ねぇ……」
「君の、元いた世界さ」
葵は僕の言葉を理解出来ていないだろう。身も心も、全てを壊した彼女に相応しい世界など、既に存在などしていないのかもしれないかもしれない。
それでも、僕は葵を新たな世界へと導く。
「茜、葵へ最後に何か……伝えたい事はあるかい?」
ティエラに車椅子を押され、葵の前に茜が現れる。姉妹の視線が交差する。
「あお、い……」
元いた世界に帰す、ただそれだけの事なのに茜は随分と複雑な表情を浮かべていた。
安堵している様な、それと同時に懺悔する様な複雑な表情。
「……いきて、いきて……いれば、きっと……」
生きていれば、きっと救われる。茜はそう言いたかったのだろう。
いつか、誰かが手を差し伸べ救われる時が来ると、そう信じているのだ。
「おね、ぇ……ちゃ……」
葵は僅かに残った理性で姉を見つめる。焦点も定まらず、姉の表情すら認識できているかも怪しい。
けれど、葵は確かに茜を見つめていた。
姉妹の別れを見届け、僕も大いに満足した。
僕は茜の面倒をティエラに頼み、葵をとうとう世に放つ為の準備を始める。
葵は人気の無い山の麓にでも解放するつもりだ。
「じゃあ、僕は葵を車で離れた場所まで連れて行く。戻って来るまで、茜を頼むぞ」
「……話は帰って来てから聞くわ。それまでに、私を納得させられるだけの言い訳を考えておくのね」
死こそが最大の絶望であると主張するティエラは、やはり葵を逃がす事には反対の様だった。
「そうだね、道中で考えておくさ」
ティエラにそれだけを言い残し、僕は葵を乗せた車を山中へと走らせ始めた。
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